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第二部
結界と魔法陣の監視者②
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わたしたちの気配はおそらく魔王が消して見つからなかったのだろう。メトセラール公爵、女性、少年が扉に向かい、女性が腕を扉にかざす。結界を解いて部屋を出るつもりのようだ。
するとわたしの腰をまた腕が力強く抱えた。目の前の景色がブレ、ふわりと体が浮く感覚がした後、木の太い枝の上に降りた。不安定な場所にギョッとしたけれど魔王にまたも支えられた。
場所は城のすぐ近くの木の上、扉の結界が解かれるタイミングに合わせて転移の魔法を使い部屋の外に出たようだ。その場所からは部屋から出る公爵、女性、少年の姿が窓越しに見え、廊下を歩き立ち去った。
「お前は部屋に戻れ」
「どうして? なにかあるの?」
「あの掃除係に接触する」
「あの子に? わたしも行くよ」
あの部屋に出入りしているなら情報を持っていそうだからわたしも聞きたい。それにあの少年、気弱そうだったし魔王に一対一で問い詰められたら恐怖におののくかもしれない。
「…いいだろう。行くぞ」
わたしたちは公爵たちと別れた少年を廊下で後ろから近寄り声をかけた。
振り返った少年は、短い金髪の前髪から覗く金色の瞳を見開き驚いた顔をしていた。歳の頃は10代前半といったところか幼さを感じさせる顔立ちだ。
そんな少年に魔王は近づき、顔を覗きこんだ。凄んでいるようで怖いのではなかろうか。案の定少年は戸惑い魔王とわたしに視線を行ったり来たりしている。
「おい」
「えっ、あの、なんのご用でしょう?」
「お前、部屋に誰の命で、何のために出入りしている?」
「は、はい、メトセラール公爵様の命です。使われていない部屋ですが、大事な部屋だからとお掃除をしています。あっ、まさか部屋に他に入った者というのは…」
「公爵はあの部屋には頻繁に出入りしているのか?」
「え、あ、はい、そう、ですね。時々入っておられます。部屋から出てくるお姿を何度も拝見しておりますから」
「何のために?」
「…魔法陣を監視しておられるのです。亡き王妃様の守っていた魔法陣と、もうひとつの魔法陣を」
「なぜ?」
「あのっ、僕、聞いてしまったんです。公爵様が"入り口をこじ開けるにはもっと瘴気が必要だ"って言っていたのを!」
聞き捨てならない言葉が飛び出した。瘴気に、入り口。
まさか地下神殿への入り口を瘴気を使って無理矢理開けようとしているの?
「僕が証言したって秘密にしてもらえませんか!? あなたたちがどなたかはわかりませんけれど、僕、その話を聞いてから怖くて怖くて仕方なくて! 無責任なのはわかっていますけれど、誰でもいいから吐き出してしまいたかったんです!」
それはそうだろう。詳しくはわからなくても瘴気などという単語が出ては凶悪な悪事が行われようとしていることは察せられたろうから内心恐ろしかったに違いない。
「うん、大丈夫、きみに危険が向くことにはならないよ」
わたしが約束すると、少年はほっとした顔をして嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます! あ、僕はイェフといいます。お姉さんのお名前は?」
「わたしはリンカだよ」
「リンカさん、おかげで安心しました。また声をかけてください。知っていることはお話します」
そこで少年と別れるとその姿をしばらく見送り、魔王は念話を飛ばした。
"ガエル、メトセラールを獣に見張らせろ。ヴラド、奴の周辺を探れ"
"御意"
「さて、王子殿下に知らせることも、調べることも山積みだな」
するとわたしの腰をまた腕が力強く抱えた。目の前の景色がブレ、ふわりと体が浮く感覚がした後、木の太い枝の上に降りた。不安定な場所にギョッとしたけれど魔王にまたも支えられた。
場所は城のすぐ近くの木の上、扉の結界が解かれるタイミングに合わせて転移の魔法を使い部屋の外に出たようだ。その場所からは部屋から出る公爵、女性、少年の姿が窓越しに見え、廊下を歩き立ち去った。
「お前は部屋に戻れ」
「どうして? なにかあるの?」
「あの掃除係に接触する」
「あの子に? わたしも行くよ」
あの部屋に出入りしているなら情報を持っていそうだからわたしも聞きたい。それにあの少年、気弱そうだったし魔王に一対一で問い詰められたら恐怖におののくかもしれない。
「…いいだろう。行くぞ」
わたしたちは公爵たちと別れた少年を廊下で後ろから近寄り声をかけた。
振り返った少年は、短い金髪の前髪から覗く金色の瞳を見開き驚いた顔をしていた。歳の頃は10代前半といったところか幼さを感じさせる顔立ちだ。
そんな少年に魔王は近づき、顔を覗きこんだ。凄んでいるようで怖いのではなかろうか。案の定少年は戸惑い魔王とわたしに視線を行ったり来たりしている。
「おい」
「えっ、あの、なんのご用でしょう?」
「お前、部屋に誰の命で、何のために出入りしている?」
「は、はい、メトセラール公爵様の命です。使われていない部屋ですが、大事な部屋だからとお掃除をしています。あっ、まさか部屋に他に入った者というのは…」
「公爵はあの部屋には頻繁に出入りしているのか?」
「え、あ、はい、そう、ですね。時々入っておられます。部屋から出てくるお姿を何度も拝見しておりますから」
「何のために?」
「…魔法陣を監視しておられるのです。亡き王妃様の守っていた魔法陣と、もうひとつの魔法陣を」
「なぜ?」
「あのっ、僕、聞いてしまったんです。公爵様が"入り口をこじ開けるにはもっと瘴気が必要だ"って言っていたのを!」
聞き捨てならない言葉が飛び出した。瘴気に、入り口。
まさか地下神殿への入り口を瘴気を使って無理矢理開けようとしているの?
「僕が証言したって秘密にしてもらえませんか!? あなたたちがどなたかはわかりませんけれど、僕、その話を聞いてから怖くて怖くて仕方なくて! 無責任なのはわかっていますけれど、誰でもいいから吐き出してしまいたかったんです!」
それはそうだろう。詳しくはわからなくても瘴気などという単語が出ては凶悪な悪事が行われようとしていることは察せられたろうから内心恐ろしかったに違いない。
「うん、大丈夫、きみに危険が向くことにはならないよ」
わたしが約束すると、少年はほっとした顔をして嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます! あ、僕はイェフといいます。お姉さんのお名前は?」
「わたしはリンカだよ」
「リンカさん、おかげで安心しました。また声をかけてください。知っていることはお話します」
そこで少年と別れるとその姿をしばらく見送り、魔王は念話を飛ばした。
"ガエル、メトセラールを獣に見張らせろ。ヴラド、奴の周辺を探れ"
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