魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

母の子守唄①

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メトセラール公爵を閉じ込めていた客間には眠りに落ちた騎士たちが椅子や壁にもたれていた。公爵の姿はなく、代わりにテーブルの上にメモが残されていた。


【王女殿下をかどわかした者を追います】


公爵は自らの意思で姿を消したようだ。騎士たちは魔法で眠らされているとヴラドが断じた。騎士を眠らせて、1人で犯人を追ったのだろうか?


「シャルを連れ去った犯人が誰か知っているということか。なぜその情報を教えない!?」
「見当がついたのだろうな。メトセラール、自分で決着をつけようとしているのか…」
「どういう意味です、父上?」
「メトセラールは私たち夫婦とお前とシャルロッテ、全員を守る誓いを立てている。シャルロッテを助けに行ったのは間違いない。しかし、それだけではなく邪神信仰者たちを根絶やしにしたがっている。此度の件、"神子"なるものを滅する千載一遇の機会、命を賭して完遂しようとするやもしれん」
「…ではこの件の犯人は邪神信仰者と"神子"なる者ということですか? まさかシャルを連れ去ったのは女神のいる地下神殿に行くための案内役として?」


はっとした顔をしたテオドール王子は駆け出した。


「ならば母上の部屋に向かったはずだ!」


わたしたちも王子を追い亡き王妃の部屋に向かった。しかしそこに王女もメトセラール公爵も誰の姿もなかった。けれど変化はあった。魔法陣は絨毯から剥き出しにされていた。


「魔法陣を最近使った形跡がある」
「魔法陣を使い、もう地下に行ってしまったのか!?」
「落ち着くのだテオドール。この魔法陣で転移しても、直接地下神殿には辿り着けん。順路を守り、正しい道順を選ばねば永久に神殿には辿り着けぬ。まだ猶予があるはずだ」
「順路ですか。父上はご存じなのですか?」
「いや、私は知らぬ。妻の直系の血族以外には教えられぬと頑として首を縦に振らなんだ。だから、お前とシャルロッテは知っている」
「え? そんなものは…」
「よく、歌って聴かせていると言っていたよ、ステファナは。子守唄として」
「あっ…」


幼い頃、時々寝つきが悪い時に母が寝室に様子を見に来て子守唄を歌ってくれた。よく赤ん坊のシャルロッテを見に行くと、母上は子守唄を歌い寝かしつけていた。巷で知られたものとは違うそれを母のオリジナルの歌なのだろうと思っていた。


「ひとつ、花畑でかくれんぼ」


この部屋の絨毯の花の柄の下の魔法陣。


「ふたつ、くるくるずっとずっと塔の底まで」


そう、前に長くてうんざりするほど螺旋階段を降りて、母と生まれて数日の妹と行ったことがある。…思い出した。地下神殿への道筋を。


"ーードール、テオドール… 聞こえますか?"
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