魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

螺旋階段で塔の底へ①

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転移の魔法陣の光が収まると、真っ暗なひんやりした空間に出た。テオドール王子の部下の魔導士だろうローブを着た男性が魔法で明かりを宙に浮かべあたりが明るく照らされると複数の感嘆の声が上がった。


「確かに"塔"だな」


魔王の呟きにこくりとうなずいた。
あたりを見回すと石積みされた壁がぐるりと円形にあり、天井は固そうな岩盤で塞がれ、下を見れば床も石造りで1箇所が四角くくり抜いたように穴が空いている。それに近づき覗き込めば螺旋階段の入り口だった。螺旋階段は壁と内側の壁の間に円形に作られているようで、意外と横幅はあり複数人で一斉に降りることはできそうだ。しかし吹き抜けではない閉鎖空間のためどこまで続くのか検討もつかない。


「"ふたつ、くるくるずっとずっと塔の底まで"、この螺旋階段を下ることになる。行くぞ! シャルに追いつく!」


テオドール王子が指揮を取り螺旋階段に駆けていくと部下たちもそれに続いた。そこにガエルが静止の声を上げた。


「待て待て! 急がなければならんだろう? 足で階段を下るなど時間がかかり過ぎて追いつけんぞ!」
「しかし吹き抜けがない以上は階段を降りるしかない!」


ガエルの言葉にテオドール王子が焦りながら反論した。その言い方だと吹き抜けがあったら飛び降りていたのだろうか? それ、パラシュートなり魔法なりでどうにかできたのかな。ただ部下の人が「えっ」って顔で見てるから手段としては通常はやらないのだろう。


「ガエル、まさか魔お…城に近道を作ったように穴を開けて下る気ですか? 崩れて生き埋めになりかねませんからダメですからね?」


それにヴラドのチャチャが入りみんながギョッとした顔を浮かべた。冗談…だろうけれど魔王城の壁にショートカットのために穴を開けた前科があるためもしややる気だったのではと不安が襲う。


「流石の俺様もそれぐらいは分かるぞ! そうではなく人の足では遅いという話までのこと!」


ガエルは彼の周囲に魔法陣を3つ浮かび上がらせた。そして光り輝く魔法陣の中から三体の魔獣、巨狼フェンリル、8本脚の馬スレイプニル、鷲の翼と上半身にライオンの下半身、グリフォンが姿を現した。ガエルの従属の術で契約している魔獣たちだ。そして同行してきていた犬サイズになっていたフェンリルのロウも魔力を解放し、体を少し大きくさせるとわたしに近づきべろりと顔を舐め大きな体で犬のように伏せをした。ガエルは魔王城でも騎乗していたグリフォンに跨ると王子に向き合い提案した。


「俺様の愛獣たちの背に乗せてもらい階段を一気に駆け降りれば速かろう! すぐに追いついてみせるぞ!」
「おお、俺でも乗せてもらえるのか? ならばこの際しのごの言っている場合じゃないから頼む! 一分一秒が惜しい!」


圧倒されていた王子も使える手はなんでも使いたいようでガエルに腕を掴んで引っ張り上げてもらいグリフォンに跨りガエルと二人乗りになった。全員は乗れないけれどこれなら選抜して最速で後を追える。ならわたしは目の前のロウに乗せてもらうとして相乗り候補は…、と思っていたら魔王に背中をグイグイ押された。


「前に乗れ。後ろから俺が支えるから落ちる心配はない」
「う、うん」

有無を言わさず相手が決まり、ロウに跨ると後ろに魔王が跨り腰に手を回してきた。いやおそらくわたしが落ちないように捕まえるためなのだろうけれど体温が一気に上がった。顔が赤くなっているに違いないので気付かれたくなくて俯く。

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