結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第六章 王立学院サフラン・ブレイバード編

第91話 入学試験当日

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 新居生活は予想以上に快適だった。
 個人の部屋が割りあてられ、鍵も付いてる。
 リーズの部屋は俺の部屋の隣で、そこだけ広い部屋となっている。
 誰も意見を挟まなかった。
 彼女は挟ませなかった。
 「だって妻だし」と、当たり前のように女性陣をねじ伏せた。
 可愛げがあって大変よろしい。

 入学試験の試験会場は学院内。
 筆記試験は楽勝過ぎて、終始あくびが止まらなかった。
 順当にいけば50位以内には入るだろう。
 受験者の数は多く見積っても300名弱。
 案外少なかった。

 そして実技試験。
 自分が持つ技を披露するだけの、いたってシンプルな内容だ。
 カカシに向かって、全力で魔術を食らわせる。
 試験は魔力出力に重点を置いている。
 監督は、技の良し悪しに関わらず、最大火力がどれぐらいかを見極めている。
 
 俺の番が来た。

 「では次。ライネル・ティッカード」

 「はい」

 魔力を剣に注ぐ。
 どの技でいこうか。
 剣は紫色に輝き出したので、黎明ノ桃金嬢をお見舞いしようと思う。

 「星極、黎明ノ桃金嬢」

 技を放った。
 カカシが消し飛び、大気に亀裂が入り、バリバリと音を立てて崩れ去った。
 結界を張っていたのか。
 手を抜いたつもりは無いが、いつもより威力が低い。
 本番に弱いな、俺。

 試験結果は夕方発表される。
 即日で合否が分かるのはありがたい。
 試験が終わって暇だし、リーズと合流するか。

---

 学校の裏庭に来た。
 入学希望者が、芝生の上にシートを広げて昼食をとっている。
 びっしり埋まっていて、スペースは残されていない。
 リーズは何処だろう。

 彼女の性格からすると、あまり目立つような所へは行かないはずだ。
 となると。
 校舎側の隅っこかな。

 「ほら、やっぱり居た」

 「ふぇ?」

 頬っぺにクリームを付けたリーズが、隅っこで何かを食べていた。
 食べていたのはシュークリームだった。
 おやつかな?
 何故お昼に…。

 「ライネルも食べる?はい」

 「今、甘いものはちょっと…」

 とりあえず、テオネスに作ってもらった弁当を開いた。
 すると、リーズが険しい顔をして弁当を見た。

 「他の女が作った弁当を…私の前で…」

 「ガッツリ妹なんだけどな。血、繋がってるんだけどな」

 変な嫉妬をされた。
 今度リーズにお願いしてみようかな。
 お弁当作ってよって。
 かわりばんこに作るのもいいな。
 俺の場合、焼き物は真っ黒焦げになるけど。

 昼食を終え、リーズと二人で校内を散歩する。
 今日は入学試験当日なので、在校生は居ない。
 人目を気にしなくていいので、軽いデートの気分。

 「かわいー!」

 「サラッサラ!この髪サラッサラ!」

 「羨ましいなぁ…引っ張ってもいい!?」
 
 ミラが女の子達に囲まれてる。
 あの子達も入学希望者かな。
 一人だけ危ない奴がいるぞ。
 ミラの髪の毛を掴んでる女の子が居る。
 助けてやるか。

 「すみません。この後、彼女と予定がありまして」

 「そうなんですか!ごめんなさい。じゃあ最後に、髪の毛、少しちぎってもいいですか?」

 「どういう思考回路してるの」

 「欲しいんですこの髪の毛!エルフのかーみー!」

 ミラの髪の毛をグイグイと引っ張る彼女。
 当のミラは無反応だが、目に涙を浮かべている。

 「サイコパスかな?」

 「知ってますか?エルフの髪を煎じて飲むと、長寿になれるんですよ。すっごい昔、本で見ましたもん」

 「その本の作者は、きっと消されただろうね」
 
 ひとまずミラを取り返した。
 不満げな彼女を、彼女の友達が引っ張って行く。
 「ごめんなさい」と、何故か、友達の方がミラに謝った。
 人気者になれて良かったな。

 「よかないわよ」

 ミラは少し苛立っているみたいだ。
 下手に触れないでおこう。

 次にテオネスを探した。
 あっさり見つかった。
 男子陣に囲まれて戸惑うテオネスの姿が見える。

 「オレの女になれ」

 おー、ド直球だな。
 一際目を引く桃色の髪をした少年。
 彼が告白…なのか?
 どう考えても主従関係を求めてるだろ。

 「無理。タイプじゃない。キモイ」

 「状況わかってんの?」
 
 「……」

 雲行きが怪しくなってきた。
 テオネスは少年の取り巻きに囲まれた。
 少年は、力ずくでテオネスを手に入れようとしている。
 まずい事になった。
 
 「あ…お兄ちゃん」

 テオネスが俺に気がついた。
 同時に、少年達が俺を睨んだ。

 「妹に何してんの?」

 俺は群青の流星を使い、目に見える形で魔力を体から発した。
 悪い虫は排除しないと。
 とはいえ、校内で揉め事を起こせば入学取り消しも十分ありえる。
 暴れたりはできないが、威嚇ぐらいはいいだろう。

 「ッ…!ずらかるぞ」

 少年は怯えた様子で、取り巻きと共に走り去った。
 口先だけの連中だ、追う必要は無い。

 「お兄ちゃんってさ、怒ると怖いよね」

 テオネスが呆れたように言った。
 俺はどんな顔を少年達に見せたのだろうか。
 妹に怖いって言われるぐらいだし、恐ろしい形相で彼らを睨みつけたと思う。

---

 夕方になった。
 試験結果はボードに貼り出される。
 学科については入学後決めることになる。
 変わってるな。

 「えーっと…俺は何処かな」

 下から順に探していくが、中々見つからない。
 結構順位良かったんじゃないか。
 
 にしても本当に見つからない。
 どこだ。

 「すっご!」

 ミラが急に驚いた声を上げた。
 びっくりした。
 ミラの前にあるボードは、上位10名の名前があった。
 まさか。
 まさか…ね。
 一応見てみるか。

 <テオネス・ティッカード9位>

 さすがテオネス。
 やっぱり頭良いな。
 本番に強いから、実技も完璧だったろう。

 <リード・フレンゲル・エルベルト3位>

 だろうな。
 フレンゲル家次期当主の名に恥じない順位だ。
 
 <ルリア・エーカイラ次席>

 女の子の名前だ。
 この子がリードよりも順位が上。
 おそらく、化け物じみた頭脳を持っているのだろう。
 あるいは実技で成績を残したか。
 どちらにせよ、只者ではない。
 
 俺は、一番上の名前を見た。
 トップは一体誰なのか気になったからだ。

 「うっそぉ…」

 この名前は想像していなかった。
 よく知る人物の名前がそこにあった。

 <ライネル・ティッカード首席>

 俺じゃん。
 意味がわからない。
 試験結果間違ってないか。

 「へー…すごいね、キミ」

 横から声がした。
 明るく優しい女の子の声だ。
 俺の横には、茶色い髪の少女が立っていた。
 肩にかからないくらいの、小麦を連想してしまうような、淡い、茶色い髪の少女が。

 「どちら様ですか?」

 「わたしは、ルリア・エーカイラ。覚えてくれると嬉しいな」
 
 優しそうで、それでいて熱い。
 そんな不思議な笑顔を浮かべる少女との出会い。
 それは、奇妙な出会いだった。
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