結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第六章 王立学院サフラン・ブレイバード編

第104話 顔合わせ

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 --ライネル視点--

 準備完了。
 これより風紀部に潜入する。
 ルピナスが用意してくれた生徒手帳を忍ばせ、部室へと突き進む。
 現在、俺の姿はピンク色の髪をしたロングヘアの、幼さ残る少女。
 名前はミア・トリックスで通す。
 すれ違う者は誰であろうと振り返り、爽やかな香水の匂いに胸を躍らせ、つい手を出したくなるような美少女である。
 声はハスキーで、耳にこびりつくようなあざとさが男のハートを射貫く。
 自画自賛乙。
 
 コルチカムの手によって改良され、この形になった。
 鏡を見た時、俺は鏡にキスした。
 コルチカムにドン引きされた。
 そのぐらい可愛い。
 誰も男だとは思うまい。
 
 そうこうしてるうちに、風紀部部室前まで来た。
 緊張を抑えつつ中に入る。
 
 「あのー…入部希望なんですけどー」

 前回と違い、部室は小綺麗に掃除されていた。
 消臭剤が効いているのか臭くない。
 
 「可愛い子来たァー!」

 ヤバい人がいた。
 赤色のメッシュが入った黒髪の男。
 周りに女子生徒を侍らせ、皮のソファーに偉そうに座っている。
 ナルシスト感満載だ。
 開いた口が塞がらない俺を見兼ねたのか、藍色髪のおさげ少女がひょこっと現れた。

 「驚かせちゃってごめんね。あいつは気にしなくていいから」

 「あ…はい」

 「入部希望だったよね?こっち来て」

 彼女に連れられ部室の奥へ。
 部員に囲まれる中、向かい合せで座った。
 男子3名しかいない。
 手前の部屋に男が一人いて、おさげの彼女も合わせたとして計5人。
 彼女は、さながら風紀部の紅一点という形だろう。

 「自己紹介がまだだったね。あたしはレマ。こう見えて部長なんだ」

 真面目そうな人だ。
 といっても品行方正とはかけ離れているだろうけど。

 「ほほう」
 
 「面白い返事をするんだね」

 やばい、つい素が。

 「い…いえ!お…じゃなかった!私の癖なんです!」

 「緊張してる?」

 「してます!」

 怪しまれたかな。でも大丈夫そうだ。
 レマはニコッとしている。
 その他は興味無さげに寛いでいる。

 「心配しないで、皆いい人達だから」

 そうは言っても、彼らと視線を合わせようとすると逸らされる。
 視線を戻すと視線を感じる。
 鬱陶しい。
 嫌われてるのかな。

 「そうですね。お…私も仲良くしたいです」

 「だってさ!仲良くするんだよ!」

 レマの訴えに、率先して挨拶を開始する男が一人。
 
 「はいはーい!俺はスレイズってんだ!よろしくぅ!」

 快活でスポーティーな髪型をした男だ。
 ほとんど坊主。
 巨岩のように隆起した筋肉のせいで、気さくに話しかけられても全然優しそうに見えない。

 お次は誰かな。
 
 「チッ…あーだる」

 俺を見下ろし立つ目つきの悪い男。
 葡萄色の髪と相まって、暗い印象を受ける。
 背はこの中で一番高い。

 「オルガール…そう呼べ」

 「はい!オルゴールさん!」

 「殺すぞ…」

 しくった。
 ただでさえ機嫌が悪そうな彼、オルガールに悪い印象を与えてしまった。
 笑顔で誤魔化したけどさ。
 汗ダラダラさ。

 「ぼくは後回しかな?」

 声がしたと思えば、顔ちっか。
 心臓が飛び出でるかと思った。
 「あはは…」と愛想を振りまいて、少し距離を取った。
 彼は深い赤色の髪をもっていた。
 例えるなら、そうだな…チェリーかな。
 髪は肩にかかる程長くてサラサラ。
 背の低い美男子って感じ。

 「挨拶が遅れてすみません。ミアっていいます。あなたは?」

 「ぼくはフォルカ。副部長だよ」

 「あ、これはこれは、失礼しました」

 「ほんとだよもう。スルーされる、こっちの身にもなって欲しい」
 
 「あっはは…ほんとですねー」

 「キミがスルーしたんだよ?」

 「ごめんなさい」

 視線の正体はコイツか。
 でも、考えてもみろ。
 フォルカ含め、男子3名は目をくれなかったじゃないか。
 スルーしたのはお前らの方だろ。
 と、口から内蔵と共に出そうになった。

 「さて、自己紹介も済んだところで…」

 「あの、ちょっと待って下さい。あっちの部屋に居る男の人の名前が知りたいです」

 「あー…あいつはエルナト。さっき見た通り、女遊びが激しいカス野郎だ。高貴なる、風紀部唯一の汚点かな…」

 散々な言われよう。
 でもまあ、実際そうだろ。

 「そんな人をどうして風紀部に入れたんですか?」

 「さあ…なんでだろうね…」

 レマは口を噤んだ。
 視線を落としたのに、口角がつり上がっている気がする。
 確証は無いけど、多分笑ってる。
 まじまじと見ることが出来ればハッキリするんだろうけど、あくまでそう思った。

---

 今日は顔合わせのみだったので、いつもよりちょっと遅いぐらいで帰宅。
 活動内容があったらしいが、どうせろくな物じゃないだろう。
 参加しなくて本当に良かった。
 いずれ現行犯逮捕してやる。

 でもいい人達だったな。
 悪いことしてるようには見えなかった。
 一人だけあげるならエルナト。
 女子生徒を傍に置き、楽しそうにおしゃべりして、お触りして、何食わぬ顔で部室を出て行った。
 何をしに来ていたのか。
 彼だけは風紀部に相応しくない人間に思えた。

 そんなことを椅子で寛ぎながら考えていた。

 「ひぇー!誰ですかー!」

 スレナの悲鳴が聞こえ、目が合った。
 俺のことを忘れたのだろうか。
 いや違うな。変身を解いてないせいだ。
 ただいま、絶賛美少女中だもんな。

 「ライネルだよ。ほら、おいで」

 「嘘だー!ライネルさん、そんなハスキーな声じゃないです!胸無いです!髪も茶色です!てか本当に誰です!?」

 スレナは困惑を隠せないようで、口をパクパクしながら震えている。
 なんか楽しくなってきた。
 俺は、スレナを壁際に追い詰めていく。

 「ふふっ…ほーらおいでー」

 「殴りますよー!」

 ドォンと人体から発せられる音じゃない音と共に、腹部に激痛が走った。
 臓腑がネジ切られるような痛み。
 やがてスーッと力が抜けて、俺は床に倒れ込んだ。

 「あ、ライネルさん」

 「き…気がついたんですね…?」

 「はい。おかえりなさい」

 冷たい声だった。
 ゴロンと仰向けに体勢を変えると、やはり冷ややかな目つきをしたスレナがいた。
 うん、わかるよその気持ち。
 キモイと思ってるね。
 
 「女の子の気持ちを知りたくてさ…つい」

 「え?別に何も聞いてないんですけど。怖い怖い」

---

 誤解を解くまで二時間かかった。
 その間、誰も帰って来なくて良かった。
 ちなみに俺とスレナ以外、今日飲んで帰ってくるそうです。
 楽しんできて下さい。
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