結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第七章 天穹守護編

第126話 地獄の授業参観(後編)

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 メリナ・ティッカードは恐ろしい女だ。
 膨大な知識量も然ることながら、空気が読めない。
 まあ、街の往来でキスを迫ってくるようなイカレ具合だし、初めから健常者であることを求めなかったが、今ぐらいは大人しくしてて欲しい。
 そう思った1·2時限目。
 ここはまだ良かった。
 問題は三時限目、魔術実技からだ。

 「おいライネル、なんだその構えは。ふざけてるのか?」

 いやいや、正統派魔術師の構えですが…?
 などと反論しようなら、間違いなく鉄拳が飛んでくる。

 「どうすればいいですか?」
 
 「手は開いた状態で構え、五指全てを杖に置き換えろ」

 意外にも丁寧に教えてくれた。
 一つ難点を上げるとすれば、周囲にジロジロ見られることかな。
 子の学び場にしゃしゃり出てくる親の構図だもの。

 「あのー…メリナさん?」

 「なんだ?」

 「ヒィッ…!」

 セスティーは抑止力になり得ない。
 ガンつけれて一歩引いてしまう。

 「おおー!凄いぞー!」

 と、一部界隈から歓声が聞こえた。
 保護者陣も大賑わいだ。
 ふと、視線を向けてみる。
 中心にはミラがいた。

 「何これ。よくわか…何これ?」

 術者本人が戸惑う漆黒の球体。
 球体と言うよりは、恒星。
 綺麗だけど禍々しい。

 「お、ミラはちゃんと出来ているな」

 セスティーがミラの元へ駆け寄る。
 細々としたアドバイスを混じえて、再度やらせてみる。
 すると。

 「何これ何これ」
 
 突如、球体が高速回転して眩く発光。
 光なのか影なのかよく分からない漆黒の光が、校庭校舎をあまねく照らす。
 ミラの必殺技候補(仮)は、周囲を釘付けにした。
 まさしく天体観測である。

---

 四時限目は、退屈な魔術理論。
 セスティーの授業は本当に早い。
 早すぎて、黒板の字が爆速で消える。
 その前に板書と質問を終えなければならない。

 「コルチカム殿が引き抜いた噂は本当であったか。何をしているのかさっぱりわからん…」
 
 後ろの老夫婦が、セスティーに関心を示していた。
 コルチカムが引き抜いたなんて、今初めて聞いたぞ。
 耳寄りな情報をありがとう。

 「おいライネル。貴様、何をよそ見してる」

 背筋に寒気が走る。

 「なっ…!」

 メリナが、俺の机の横でしゃがみこんでいた。
 授業態度を監視されていたようだ。
 
 「後ろに戻ってください…」

 小声で話さないと、見つかった時にやばい。
 既に、隣の席のミラちゃんは口をあんぐり開けて震えている。

 「お…おあ…おおう…」

 ミラが気持ちよさげな声を出している。
 あ、メリナがお腹を揉んでいる。

 「こいつは板書を終えている。が、お前はそうじゃない。早く書け」

 「はぁ…い」

 「あ?なんだその不貞腐れた態度は」

 「書きます。書きますから帰って」

 「……」

 メリナが後ろに…って早。
 さては時間操作しやがったな。
 やめろよ、それ。
 本当にもう。

---

 お昼の時間。
 俺はミラと二人で昼食を取った。
 ルリアも誘ったが、ルリア母に阻止された。
 殺意剥き出しの顔で睨まれた。
 よって、二人だけとなった。
 はずだった。

 「ほら、食え」

 「あーん…」

 メリナとミラのイチャつき。
 どちらも幸せそうで何より。
 ただ、メリナの目付きが不気味。
 まるで実験用のモルモットと接しているような、死んだ目をしている。

 「可愛いなぁ、お前は」

 「あら嬉……ふひゃっ」

 メリナのお膝元へと移動させられたミラ。
 さっさと弁当食えよ。

---

 ラスト五時限目。
 精神干渉系魔術の授業。
 この授業だけは、みんな真剣に聞いていた。
 悪用厳禁と知りつつ、興味津々。
 保護者陣も食い入るようにセスティーの説明を聞いていた。

 「ちょっと待て。それ、おかしくないか?」

 またしてもメリナ様の乱入。
 彼女が本格的に授業に参加すれば、質問だけで一時間が終わりそうだ。

 「何処がでしょう?」

 セスティーは平然を装っているが、少しだけ冷や汗をかいていた。

 「相手が異性でないと効果が薄い理由がわからん。そもそも精神干渉系魔術は、対象を異種動物に置き換えても通用する代物。そこに心理の壁は無く、思考は略奪される筈だが?」

 「軍用魔術ならそうかもしれません。ですが、汎用魔術はその限りではありません」

 「どうしてそう言いきれる」

 「精神干渉系魔術を使うということは、その人の気持ちを踏み躙ると同義です。敵だろうと、恋人だろうと、心を叩けば埃が出ます。嘘は数ある可能性を潰しますから、絶対に隠し通したい物。強情に塗り固められた鉄壁の守りは、愛でしか壊せない。隙は身体で作るんですよ。注ぎ込むのは言葉で、魔術はまやかし。異性ならもっと、深く踏み込めますから」

 「……まあ、普通はそうなのかもな」

 同性愛者には難しい話だったか。
 メリナの心はちっとも読めないが、何となく寂しそうな雰囲気。
 どっちでもいいじゃんと思ってそうだ。

 そして、終業の鐘が鳴る。

 「あ、鐘がなりましたね。皆さま、今日はお疲れ様でした」

 授業参観の終わり。
 意外と呆気なかったな。
 でも、少しだけムカムカする。
 テオネスはともかくとして、ハルが居ない理由はなんだ?
 あいつも今、不登校だよな。
 もしかして逃げたのか…?
 いやまさか…そんなまさか、な。
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