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第七章 天穹守護編
第133話 新たなる一歩
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生徒会長は学校の顔であり、秩序の具現化でもある。
コルチカムが太鼓判を押す彼は、学院屈指の魔剣使いだという。
その力百戦錬磨、嘉言善行の塊と評され、王国上層部から絶大な支持を受けている彼は、リーズに一目惚れをして呆気なく振られた。
しかし、彼は諦める素振りを全く見せず、それどころか俺に対して宣戦布告。
果たし状を叩きつけて、帰っていった。
そこから一ヶ月、まるで動きがない不気味。
リーズは不安を紛らわすように、毎晩俺の寝床を襲撃した。
彼女の心身を正常に戻すためには、彼の要求を飲んで戦うしかない。
いやー、めんどくさいな。
「あら、クズ夫」
「はっきり言わないでいただけますか?」
ミラの暴言に拍車がかかる。
心を読んで突き刺してくる。
「お兄ちゃんなら大丈夫でしょ。なんたって全科目満点、実技評価は100点オーバーなんだから」
「通知表、父さんと母さんにも見せてやりたかったな」
「そうだね。私も、産まれてくる子供を見せたかったよ」
テオネスはふっと笑みを浮かべて、お腹を摩る。
「あと、どんぐらいかな」
「お医者さんが言うには、あと一月ぐらいだって。今のところ、経過は良好らしいよ」
「それは良かった。出産には絶対に立ち会うからな、ハルが」
「お兄ちゃんもね」
「ああ。当然だろ」
テオネスが寝静まったのを機に、俺は退出した。
経過観察も、あと残り僅か。
なんとしても守り抜こう。
---
翌朝。
スレナが楽しそうに、近所の人と話をしていた。
男の人だ。
「おっと!気づけばこんな時間。度重なる非礼を詫びたい。また来ます」
「はい。行ってらっしゃいませ」
スレナは終始笑顔で応対し、ぺこりと頭を下げて送り出した。
あの人、週に8回は来るな。
休みの日は、お土産を持ってくる。
話してみると気さくな人だが、薄っぺらい内容の話しかしない。
「職業が謎だな」
「大臣補佐官だそうです。以前、そこそこ偉い人なんだぞって、自慢げに話してました」
「あー、そういう奴ね」
補佐官は嘘だな。
恐らくスレナの興味を引く為に、最も近い斜め上の役職を騙ったのだろう。
そんな気がする。
「揺らぐか?」
「いえ。それは絶対に有り得ません」
「なら良かった」
スレナに軽い口付けをして、俺は自宅を出た。
果たし状に書かれていた場所へ向かう。
---
王立学院サフラン・ブレイバード校庭。
妙な人集りが目に入る。
教師陣も含め、数百名は屯している。
審判を務めそうな男コルチカムが、校舎を背にして中央に立っていた。
「思ったよりも早い到着だね」
「学年首席なんで、時間は守りますよ」
「彼は、もうお待ちかねだよ」
「でしょうね。快速も、ここまで来ると呪いです」
振り向きざまに放った一刀は、生徒会長ジュレスト・ウィルバートの剣に弾かれ、増幅され、返された。
さながら採掘を行う魔導砲だ。
削ったところから消滅している。
「術式相殺」
俺とジュレストの魔力の本質は似通っている。
故に、相殺魔術が有効と判断。
事実有効であった。
「小手調べとはいえ、顔色一つ変えんか」
ジュレストが誇らしげな笑みを浮かべ、ゆっくりと接近する。
「一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「力づくで奪うより、政略で嵌める方が余っ程賢いと思うのですが」
「確かに、早期段階で決着させるなら、それは賢策といえる。しかしそれは政治家として勝利するものであり、男として敗北する致命的な欠陥を隣に置く。リーズ嬢は好まんだろう」
ジュレストが剣を下段に構え、前傾姿勢を取る。
それに合わせ、俺も居合の型を取る。
「あんた、意外とわかってるな」
「わからんさ。女の素顔は、女にしかわからない」
燦然と煌めく閃光を纏い突貫してくる超光を、紫電で迎え撃つ。
俺とジュレストが、心ゆくまで斬結ぶ一時間が始まった。
コルチカムが太鼓判を押す彼は、学院屈指の魔剣使いだという。
その力百戦錬磨、嘉言善行の塊と評され、王国上層部から絶大な支持を受けている彼は、リーズに一目惚れをして呆気なく振られた。
しかし、彼は諦める素振りを全く見せず、それどころか俺に対して宣戦布告。
果たし状を叩きつけて、帰っていった。
そこから一ヶ月、まるで動きがない不気味。
リーズは不安を紛らわすように、毎晩俺の寝床を襲撃した。
彼女の心身を正常に戻すためには、彼の要求を飲んで戦うしかない。
いやー、めんどくさいな。
「あら、クズ夫」
「はっきり言わないでいただけますか?」
ミラの暴言に拍車がかかる。
心を読んで突き刺してくる。
「お兄ちゃんなら大丈夫でしょ。なんたって全科目満点、実技評価は100点オーバーなんだから」
「通知表、父さんと母さんにも見せてやりたかったな」
「そうだね。私も、産まれてくる子供を見せたかったよ」
テオネスはふっと笑みを浮かべて、お腹を摩る。
「あと、どんぐらいかな」
「お医者さんが言うには、あと一月ぐらいだって。今のところ、経過は良好らしいよ」
「それは良かった。出産には絶対に立ち会うからな、ハルが」
「お兄ちゃんもね」
「ああ。当然だろ」
テオネスが寝静まったのを機に、俺は退出した。
経過観察も、あと残り僅か。
なんとしても守り抜こう。
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翌朝。
スレナが楽しそうに、近所の人と話をしていた。
男の人だ。
「おっと!気づけばこんな時間。度重なる非礼を詫びたい。また来ます」
「はい。行ってらっしゃいませ」
スレナは終始笑顔で応対し、ぺこりと頭を下げて送り出した。
あの人、週に8回は来るな。
休みの日は、お土産を持ってくる。
話してみると気さくな人だが、薄っぺらい内容の話しかしない。
「職業が謎だな」
「大臣補佐官だそうです。以前、そこそこ偉い人なんだぞって、自慢げに話してました」
「あー、そういう奴ね」
補佐官は嘘だな。
恐らくスレナの興味を引く為に、最も近い斜め上の役職を騙ったのだろう。
そんな気がする。
「揺らぐか?」
「いえ。それは絶対に有り得ません」
「なら良かった」
スレナに軽い口付けをして、俺は自宅を出た。
果たし状に書かれていた場所へ向かう。
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王立学院サフラン・ブレイバード校庭。
妙な人集りが目に入る。
教師陣も含め、数百名は屯している。
審判を務めそうな男コルチカムが、校舎を背にして中央に立っていた。
「思ったよりも早い到着だね」
「学年首席なんで、時間は守りますよ」
「彼は、もうお待ちかねだよ」
「でしょうね。快速も、ここまで来ると呪いです」
振り向きざまに放った一刀は、生徒会長ジュレスト・ウィルバートの剣に弾かれ、増幅され、返された。
さながら採掘を行う魔導砲だ。
削ったところから消滅している。
「術式相殺」
俺とジュレストの魔力の本質は似通っている。
故に、相殺魔術が有効と判断。
事実有効であった。
「小手調べとはいえ、顔色一つ変えんか」
ジュレストが誇らしげな笑みを浮かべ、ゆっくりと接近する。
「一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「力づくで奪うより、政略で嵌める方が余っ程賢いと思うのですが」
「確かに、早期段階で決着させるなら、それは賢策といえる。しかしそれは政治家として勝利するものであり、男として敗北する致命的な欠陥を隣に置く。リーズ嬢は好まんだろう」
ジュレストが剣を下段に構え、前傾姿勢を取る。
それに合わせ、俺も居合の型を取る。
「あんた、意外とわかってるな」
「わからんさ。女の素顔は、女にしかわからない」
燦然と煌めく閃光を纏い突貫してくる超光を、紫電で迎え撃つ。
俺とジュレストが、心ゆくまで斬結ぶ一時間が始まった。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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