結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第七章 天穹守護編

第132話 三ヶ月の間に変わった人

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 三日間の冒険はあっという間に終了。
 現実世界では三ヶ月が過ぎていた。
 リーズの三日我慢した宣言は一先ず置いといて、ルピナス理事長とコルチカム学院長に、此度の古代迷宮巡りに際する結果報告をした。
 どうやらコルチカムは、今回の古代迷宮巡りを、俺とハルの強化訓練と聞いていたらしく、帰還するや否や、「同じ天穹守護として誇らしく思う」と激励を述べてくれた。
 ルピナスが上手いこと言いくるめてくれたらしい。
 感謝感激雨あられ。

 「いやー、まさかあの古代迷宮を鍛練場するなんて、思ってもみなかったよ」

 コルチカムから絶え間無く与えられる賞賛の嵐。
 笑いが込み上げてくる。

 「ハル君の調子はどうだい?強くなった?」

 「ええ。気持ち程度ですが、力と感情のコントロールが可能になりました。やっぱ若さですかね」

 「うん。次、歳のこと言ったら退学させるから」

 「すみません」

 ルピナスに怒られてしまった。
 若いという単語に、やたら過敏に反応する彼女。
 コルチカムが上機嫌に退出した瞬間、腰に手を回された。

 「疲れてないか…?」

 下半身と下半身がくっ付く。
 意図して、そうされた。

 「多少は疲れてますが、若いのですぐに回復…あっ」

 「歳上は嫌?」

 「むしろ好みですよ。第一、俺、歳上と結婚してるじゃないですか」

 「そっか…そうだよね。よかった」

 何が良かったのかは不明だが、取り敢えず離してくれた。
 でも、理事長室を出る寸前に、後ろから抱きつかれた。

 「バレなきゃいいのさ…バレなきゃ」

 そう告げ口され、解放された。
 最後、お返しを期待する顔を見た。
 後日、適当に菓子折りを見繕って渡そう。


---


 ハルの顔は暫く見たくない。
 なので、Aクラスには寄らない。
 Bクラスに向かう。

 Bクラスには、リーズが居る。
 リーズは人気者で、休み時間はいつも人集りができている。
 男女問わず、放課後の呼び出しが多い。
 モテモテだ。

 「リーズ。ちょっと来て」

 「ん?あ、ライネル!」

 リーズが嬉しそうに手を振ってくれた。
 同時に、Bクラスのイケメン男子陣が、一斉に俺を睨む。
 怖いから早く来て。
 と思っていたら、肩を叩かれた。
 あれ、いつの間に。

 「凄いでしょ?この転移魔術」

 「マジで凄い。焦った」

 どうやら、アルグレットと同じ転移魔術を会得したらしい。
 思えば、これと同等の転移魔術を扱える人間、Sクラスにいたかな?
 多分いない気がする。

 「ところでライネル、用件を教えて欲しいな」

 「あー、それなんだけど…屋上行こっか」
 
 内容も内容なので、場所を移すことにした。


---


 屋上に着いた。
 話はすぐに切り出した。

 「リーズさ、昨日アレを三日も我慢したって言ってたよな?あの時は普通にスルーしたけど、考えてみると変だよな。なんで三ヶ月じゃなくて三日なんだ?教えてくんない?」

 「……」

 リーズは途端に無表情になった。

 「あ、別に怒ってないからね。俺も野蛮で節操ないから、人のこと言えないし」

 「…怒らない?」

 「絶対に怒りません。怒る資格が俺にありません」

 「じゃあ…ちょっと耳貸して。あまり大きな声で言えない」

 リーズの指示に従い、俺は耳を傾けた。
 三ヶ月も放置してたわけだし、この間に浮気されていても、全然不思議じゃない。
 でも手離したくない。
 だから聞いておく。
 
 「リードと…シちゃった」

 リーズが、申し訳なさそうに体を密着してきた。
 多分、好きにしていいから許して、的な感じだろう。

 なるほど、リードね。
 はいはい……え。
 え、リード?
 お前、それって。

 「弟とヤったの?」

 「うん…」

 「どっちから?」

 「私から…ごめん」

 「別に謝らなくていいけど…おおわっ」

 変な声が漏れてしまった。
 まさかまさかのリード。
 断れよ、リード。
 いや無理か。
 あいつは昔から、リーズを変わった目で見ていたからな。
 歳を重ねるにつれ、色眼鏡で見始めたのだろう。
 やかましいことを言えば……いや、やめておこう。
 本当にやかましいから。

 「リード。ボコボコにしていいか?」

 親友であり、義兄弟。
 義兄弟であり、俺の妻を寝取った奴。
 実の姉に何してんだ。

 「ダメ。私が後々、リードに殺されちゃう」

 「比喩表現にしろ、殺すはマズイだろ」

 「あっち…多分、本気だったから」

 「…あー、めんどくさいやつだ、それ」

 負けず劣らず、リーズも悪い女だな。
 実の弟を性欲の捌け口に使うだなんて。
 まあ、それはそれでゾクゾクする。
 我ながら気色悪い思考回路を持ったものだ。

 「夫婦揃って、こんなところで何をしてる」

 閉めたはずの扉が開いていた。
 その先から声が聞こえた。
 こちらへ真っ直ぐと突き進む男が、リーズの腕を掴んだ。

 「誰に断って俺の妻に触れてんですか?」

 男の手は、リーズを傷つけない範囲で強く握られていた。
 
 「え、あ…あのぉ」

 「突然押しかけてしまい申し訳ありません、リーズ嬢」

 「えーっと…お名前を教えてください」

 「御意。私の名は、ジュレスト・ウィルバート。当学院の生徒会長を務めております」

 生徒会長だったのか、こいつ。
 どおりで高そうな服を着ているわけだ。
 顔も良くてお金持ちとか、贅沢な人だな。

 「あー、生徒会長様でしたか。これはこれは、ご丁寧にどうも」

 リーズがヘコヘコと頭をさげると、生徒会長は優しく彼女を抱きしめた。
 視線を合わせて、超至近距離でほくそ笑む。

 「私めと結婚してくれませんか」

 「はい?」

 「ありがたいお言葉」

 「あ、違います。そっちのハイじゃないです」
 
 愛の告白を受け流される生徒会長。
 はなから俺は眼中に無いらしい。
 居ないものとして扱われている。

 ぶざけんな。
 渡すわけないだろ、お前にもあいつにも。
 文句があるなら、剣で黙らせてやる。
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