結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第七章 天穹守護編

第131話 プチ説教

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 詳細を問いただしたい気持ちは山々だが、一先ずは脱出する。
 こんなところで無駄な時間を浪費する訳にはいかないからな。
 脱出の手立ては…と。

 「どうやって出んの、ここ」

 「え…私は知らないわよ」

 「どうしたらいいと思います?」

 「足掻くだけ足掻いてみる的な?」

 「無茶言うなし」

 「は…?叩く」

 「すみません」

 ミラがハルの背を摩る。
 ハルは肩身を震わせ、彼女に支えられて歩き出す。
 彼についていけば出口がわかりそうだ。

 「テオネス…元気ですか?」

 「ああ元気だよ。お前が失踪してからずっと病んでたけどな」

 「そうでしたか…」

 謝れとは言わないが、せめて顔ぐらい合わせて欲しかった。
 
 「こっちです…」

 ハルの導きで、神秘的な湖に到達した。
 出口は近くに存在した。
 湖を渡った先に、石門がある。
 そこが地上への入口であり出口だ。

 「帰ったら全部話してもらうぞ」

 「はい…」

 俺達は湖を渡り、地上へと帰還した。

---

 入口の門から吐き出されるように戻ってきた。
 部屋が埃っぽい。
 僅か数ヶ月足らずで、ここまで汚れるのか。
 ま、それは置いといて。

 「お前の事だし、急に冷めたとかはないと思う。何かしらの衝動を未然に防ごうとしたんじゃないか?」

 そう言った途端、ハルが激しく首を振る。
 助け舟に縋り付くような感じではなく、事実を述べられて驚いているらしい。

 「僕が感情を示す度、天壊人が引き寄せられるんです。現在地を教えてしまうんです。だから…」

 もごもごでハッキリしない。
 補助してやるか。

 「テオネスとの記憶を消せば、感情がブレずに天壊人に勘づかれることも無いってか?」

 「おっしゃる通りです」

 「てめぇ、殺すぞ」

 俺はハルの腹を蹴り抜き、外壁に叩きつけた。

 「ちょ…ライネル!?」

 「黙ってろミラ」

 ハルが臆病になる理由は、まだ見ぬ天壊人への恐怖。
 残念だ。
 お前は、俺とは違うと思ってたのに。

 「テオネスはな、俺が死に、肉塊なろうと守ってくれたんだよ。全身串刺しにされても尚、血反吐を吐こうと諦めなかったんだよ。最後の最後まで必死に抵抗して、強気な姿勢を崩さなかった。でもな…それは本来、男がやるべき事なんだ。俺とお前がやるべき義務なんだ。腹が痛いか?でも、今のテオネスは毎日、その苦しみに耐えて戦っている。父親であるお前が、簡単にしっぽ巻いて逃げてんじゃねぇよ」

 感情に任せて暴言を吐いた自覚はある。
 でも、これに負けるぐらいなら、端からテオネスを渡したりしなかった。
 一から十まで、俺が愛していた。

 「天穹守護とは文字通り、光刺すこの大空を守らんが為に存在する。誰もが等しく平等に太陽を浴びれる世界を守るために、暗黒を青白に塗りつぶす。お前の心は何色だ?漆黒か、それとも、テオネスと同じ赤色か?」

 「僕は…」

 「直感で決めろ。未だテオネスを愛してるなら赤、嫌いなら黒。仏の顔も三度まで、だ」

 「赤です…!僕はテオネスが大好きです!」

 この言葉に、俺はミラを見た。
 嘘か誠か、彼女に委ねる。

 「恥ずかしいぐらいテオネスの事で、頭がいっぱいよ」

 ミラがそう言い、苦笑する。
 彼女が言うなら間違いない。
 行こうか、テオネスの待つ俺たちの家へ。

 「地面に転移魔法陣を刻む。手伝ってくれるか?」

 「はい!」

 俺は地面に転移魔法陣を彫り、事前に自室へ備え付けておいた転移魔法陣と繋げた。
 ハルが魔力を込めて、ミラが見張り役。
 これで、誰にも目撃されずに帰れる。

 「じゃあ二人共、行くぞ」

 転移魔法陣を起動。
 これより帰還する。

---

 我が家に着いた。
 ここは俺の部屋。
 掃除が行き届いていて、塵一つない。
 あとでスレナにお礼言っとこ。
 早速テオネスの自室へに向かう。

 「おーい!ただいまー!」

 三日ぶりで感極まる。
 皆からすれば三ヶ月ちょっとか。
 スレナが慌ただしく駆け出してきた。

 「ライネルさん…!会いたかったです!」

 「ぐほっ…!」

 抱きつかれた衝撃で肋骨にダメージを受けた。

 「テ…テオネスいるか?」

 「居ますよ!元気です…っておや?」

 スレナが俺の後ろで縮こまるハルを発見した。

 「今度は、ハルさんが守るんですよ?」

 「うん…ありがとうスレナさん」

 俺には一度もありがとう言ってないぞ、こいつ。
 まあいいです。
 大人なので気にしません。

 テオネスの自室へと入り、ベッドを確認。
 テオネスのお腹は、三日前よりもずっと大きくなっていた。
 三ヶ月強も経てば、そりゃあな。

 「お兄ちゃん…!と、ハル…」

 嬉しい半面、複雑な心境を表していた。
 テオネスが下唇を噛み締める。

 「ごめん…テオネス」

 「…うん」

 重苦しい空気に、喉が痛い。
 ミラだけ興味深そうな顔をしている。

 「ダメだわこの二人、思春期だわ」

 ミラが、あからさまに呆れた顔をする。
 なるほど。

 「二人とも、それは程々にな」

 俺とミラは、同時に扉に手をかけた。
 手が重なる。
 ドッキドキの心模様を悟られないよう、気丈顔を崩さずに退出。

 した途端、真正面に影が。
 俺よりも若干背の高い女性がいた。

 「お帰りライネル。私、三日も我慢しちゃった」

 暗い顔で笑うリーズが立っていた。

 「あ…あっははっ」

 「無事ハル君を連れ戻せてよかったね」

 「ああ、それに関しては本当に。一安心かな…」

 リーズが、そっと優しく抱き締めてくれた。
 良い匂いのする、フェロモン香水だ。
 
 「明日は休日だから、丸一日中付き合ってね」

 「はい…」

 渋々承諾しつつも、心躍っていた。
 舌打ちを零して浴室へと向かうミラの後ろ姿に、必死に手を伸ばしてみたものの、その手は軽く包まれた。
 お願いしますリーズ様。
 せめて、先にお風呂に入らせて下さい。
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