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第6話 帰還
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いよいよ魔王城の前までやってきた。
私の目の前に来た勇者様に両肩をつかまれ、真正面から見つめられる。
「俺達は必ず魔王を討伐して無事に戻ってくる。だから、お前は笑顔で俺達を出迎えて欲しい」
涙をこらえて笑顔で答える。
「わかりました!美味しい食事を用意して待っていますから、必ず無事に戻ってきてくださいね」
他の面々も私を気遣って声をかけてくれた。
私なんかより皆さんの方がずっと大変なはずなのに。
聖女様から護符をたくさん渡され、魔術師様はいつも以上に強固な結界を張ってくれた。
そして魔王城へ向かう魔王討伐パーティの面々の背中を見送る。
結界の中に1人残された私は黙々と料理を作り、空間収納に熱いままのスープとパンを保管した。
コーヒーと紅茶のための熱湯も用意する。
後片付けまですべて終えると、魔王城に向かって両膝をついて無事を祈った。
魔王城の内部では何が起きているのか、ここからでは何もわからないけれど時々轟音が響いてくる。
怖いけれど皆さんの方が大変なはずだ。
ただひたすら祈る。それしか出来ない。
やがて何も音がしなくなった。
魔王城の上空を覆っていた黒い雲の隙間から日差しが差し込み始める。
そしてみんなボロボロではあるけれど、こちらに向かって歩いてくる4人の姿が見えてきた。
賢者様と魔術師様が黒い大きな角を持っているのがわかる。
私は結界から出られないので、こちらから駆け寄っていけないのが歯がゆい。
魔術師様が何か唱えると結界は一瞬で消えた。
「おかえりなさい!皆さん、魔王討伐おめでとうございます!」
泣きそうになりながらも笑顔で言い終わったとたん、勇者様に抱きしめられた。
「これですべて終わった。一緒に帰ろう」
「…はい」
無意識のうちに私も勇者様を抱きしめ返していた。
上空の黒い雲は完全に消え、青空には虹がかかっていた。
帰路は順調で、予定よりも早く王都に到着した。
すでに連絡を受けていた王宮では魔王討伐パーティの面々が大歓迎されたけど、その騒ぎの中に私はいなかった。
まず魔王討伐パーティの面々が降りた馬車を返却する。
「今までありがとう。これからも元気でね」
ずっと一緒だった2頭の馬は私に顔をすり寄せてくれた。
そして文官の男性に連れられて事務室で今回の遠征の後処理を行う。
帰還騒ぎのどさくさで魔王討伐パーティの皆さんに別れの挨拶も満足に出来なかったけれど、むしろこれでよかったのかもしれない。
彼らは英雄だ。きっともう会うこともないだろう。
帰還の翌日。
遠くからファンファーレが聞こえてきた。
王宮の大広間では祝賀パーティが始まったようで、歓声や拍手が断続的に聞こえてくる。
私は同じ王宮の片隅にある経理課の事務室で、昨日に引き続き文官の男性とともに遠征の精算作業をしている。
「こういう祝い事がある日には、王宮で働く我々にもお菓子や記念品が配られたりするんですよ」
向かいの席にいる文官の男性が作業の合間に教えてくれた。
「へぇ、そうなんですか」
そんなことを話しながら作業していると扉をノックする音がした。
文官の男性が立ち上がって扉の方へ行き、なにやら箱を受け取って席に戻ってきた。
「今回はシュークリームのようですね。貴女もいかがですか?」
「え、でも、私は王宮の人じゃないですし」
「実は私は甘いものが苦手でして。貴女に食べていただけると大変助かるのですが」
そう言ってウィンクする。
たぶん私のために嘘をついてくれているのだろう。
「ありがとうございます。それではいただきますね」
外はパリッとした皮で、中はラムレーズンの入ったカスタードクリーム。
なんだかとても大人の味だった。
私の目の前に来た勇者様に両肩をつかまれ、真正面から見つめられる。
「俺達は必ず魔王を討伐して無事に戻ってくる。だから、お前は笑顔で俺達を出迎えて欲しい」
涙をこらえて笑顔で答える。
「わかりました!美味しい食事を用意して待っていますから、必ず無事に戻ってきてくださいね」
他の面々も私を気遣って声をかけてくれた。
私なんかより皆さんの方がずっと大変なはずなのに。
聖女様から護符をたくさん渡され、魔術師様はいつも以上に強固な結界を張ってくれた。
そして魔王城へ向かう魔王討伐パーティの面々の背中を見送る。
結界の中に1人残された私は黙々と料理を作り、空間収納に熱いままのスープとパンを保管した。
コーヒーと紅茶のための熱湯も用意する。
後片付けまですべて終えると、魔王城に向かって両膝をついて無事を祈った。
魔王城の内部では何が起きているのか、ここからでは何もわからないけれど時々轟音が響いてくる。
怖いけれど皆さんの方が大変なはずだ。
ただひたすら祈る。それしか出来ない。
やがて何も音がしなくなった。
魔王城の上空を覆っていた黒い雲の隙間から日差しが差し込み始める。
そしてみんなボロボロではあるけれど、こちらに向かって歩いてくる4人の姿が見えてきた。
賢者様と魔術師様が黒い大きな角を持っているのがわかる。
私は結界から出られないので、こちらから駆け寄っていけないのが歯がゆい。
魔術師様が何か唱えると結界は一瞬で消えた。
「おかえりなさい!皆さん、魔王討伐おめでとうございます!」
泣きそうになりながらも笑顔で言い終わったとたん、勇者様に抱きしめられた。
「これですべて終わった。一緒に帰ろう」
「…はい」
無意識のうちに私も勇者様を抱きしめ返していた。
上空の黒い雲は完全に消え、青空には虹がかかっていた。
帰路は順調で、予定よりも早く王都に到着した。
すでに連絡を受けていた王宮では魔王討伐パーティの面々が大歓迎されたけど、その騒ぎの中に私はいなかった。
まず魔王討伐パーティの面々が降りた馬車を返却する。
「今までありがとう。これからも元気でね」
ずっと一緒だった2頭の馬は私に顔をすり寄せてくれた。
そして文官の男性に連れられて事務室で今回の遠征の後処理を行う。
帰還騒ぎのどさくさで魔王討伐パーティの皆さんに別れの挨拶も満足に出来なかったけれど、むしろこれでよかったのかもしれない。
彼らは英雄だ。きっともう会うこともないだろう。
帰還の翌日。
遠くからファンファーレが聞こえてきた。
王宮の大広間では祝賀パーティが始まったようで、歓声や拍手が断続的に聞こえてくる。
私は同じ王宮の片隅にある経理課の事務室で、昨日に引き続き文官の男性とともに遠征の精算作業をしている。
「こういう祝い事がある日には、王宮で働く我々にもお菓子や記念品が配られたりするんですよ」
向かいの席にいる文官の男性が作業の合間に教えてくれた。
「へぇ、そうなんですか」
そんなことを話しながら作業していると扉をノックする音がした。
文官の男性が立ち上がって扉の方へ行き、なにやら箱を受け取って席に戻ってきた。
「今回はシュークリームのようですね。貴女もいかがですか?」
「え、でも、私は王宮の人じゃないですし」
「実は私は甘いものが苦手でして。貴女に食べていただけると大変助かるのですが」
そう言ってウィンクする。
たぶん私のために嘘をついてくれているのだろう。
「ありがとうございます。それではいただきますね」
外はパリッとした皮で、中はラムレーズンの入ったカスタードクリーム。
なんだかとても大人の味だった。
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