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第5話 大事な仕事
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「いえ、お気になさらず。慣れてますから」
殿下のすまなそうな表情が一瞬にして厳しいものに変わる。
「このようなことが過去にもあった、ということかな?」
「えっと、今日みたいに呼び出しを食らったのは数回程度ですが、通りすがりに嫌味を言われたり、わざとぶつかってきたり、足を引っ掛けて転ばされそうになることは日常茶飯事でしょうか」
頭を抱える殿下。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ?!こちらでいくらでも対処したのに」
「えっと、王宮というのはこういうのが普通なんだろうな~と思っておりまして」
「そんなわけないだろう?!」
あ、そうなんだ。
学生時代に友人から借りた小説ではそんな場面がよくあったから、きっとこういうのが当たり前なんだろうと結構本気で思っていた。
「まぁいい。まずは計算室に行こう。計算室長に本を頼まれていたんだろう?」
「あ、はい」
今日はたった3冊なのに「私が持つから」と殿下に取り上げられてしまった。
「歩きながらでよいので聞いて欲しいんだが、先程の無知な彼女達は貴女のことを『計算しか出来ない』と罵っていたけれど、王宮の計算室というのは本当になくてはならない存在なんだ」
彼女達が言うように、計算ばかりしているのは事実ではあるのだが。
「昔の王宮は常に仕事が山積みで残業や泊まり込みも当たり前。業務の見直しも追いつかない。そんな時にたまたま雇い入れたのが計算の加護持ちでね。それが計算室誕生のきっかけでもあった」
どうやらわりと偶然の産物だったようだ。
「その人物が複雑な計算を一手に引き受けたことで各部署に余裕が生まれた。業務を見直し、無理なく仕事を回せる体制を整えた。泊まり込みもなくなり、残業も大幅に削減できた。働きやすい職場になったことで優秀な人材も入ってくるようになった」
現在は時期によっては残業もあるけれど、遅くまで残っている人はいない。
「貴女のように表に出ない仕事をしている人達がいるからこそ、王宮の仕事はうまく回っている。だからどうか自信を持ってほしい」
ああ、そうか。
殿下は私を気遣ってくださっているのだ。
「殿下、ありがとうございます。私は自分の仕事に誇りを持っております。ですから誰に何と言われようと決して負けたりいたしません!」
殿下の手がポンと私の頭に置かれた。
「貴女は強いな。だが、困ったことがあれば計算室長や私に相談して欲しい。我々は対処できるくらいの力を持っているのだから」
計算室に戻り、室長に本を渡してから3人分のお茶を淹れる。
最初に殿下が室長に先程の経緯を簡単に説明した。
「まず、私はこの部屋に頻繁に出入りすることで要らぬ注目を浴びてしまい、貴女に多大なる迷惑をかけてしまったことを心からお詫びしたい。本当に申し訳なかった」
頭を下げる殿下。
「どうかお気になさらないでください!たいして実害があったわけではありませんから」
なぜか殿下は苦笑いしながら頭を上げる。
「ただ、彼女達の勘はあながち外れてはいないともいえるかな。私は貴女に興味を抱いて計算室へ足を運ぶようになったのだから」
えっ、そうだったの?
殿下のすまなそうな表情が一瞬にして厳しいものに変わる。
「このようなことが過去にもあった、ということかな?」
「えっと、今日みたいに呼び出しを食らったのは数回程度ですが、通りすがりに嫌味を言われたり、わざとぶつかってきたり、足を引っ掛けて転ばされそうになることは日常茶飯事でしょうか」
頭を抱える殿下。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ?!こちらでいくらでも対処したのに」
「えっと、王宮というのはこういうのが普通なんだろうな~と思っておりまして」
「そんなわけないだろう?!」
あ、そうなんだ。
学生時代に友人から借りた小説ではそんな場面がよくあったから、きっとこういうのが当たり前なんだろうと結構本気で思っていた。
「まぁいい。まずは計算室に行こう。計算室長に本を頼まれていたんだろう?」
「あ、はい」
今日はたった3冊なのに「私が持つから」と殿下に取り上げられてしまった。
「歩きながらでよいので聞いて欲しいんだが、先程の無知な彼女達は貴女のことを『計算しか出来ない』と罵っていたけれど、王宮の計算室というのは本当になくてはならない存在なんだ」
彼女達が言うように、計算ばかりしているのは事実ではあるのだが。
「昔の王宮は常に仕事が山積みで残業や泊まり込みも当たり前。業務の見直しも追いつかない。そんな時にたまたま雇い入れたのが計算の加護持ちでね。それが計算室誕生のきっかけでもあった」
どうやらわりと偶然の産物だったようだ。
「その人物が複雑な計算を一手に引き受けたことで各部署に余裕が生まれた。業務を見直し、無理なく仕事を回せる体制を整えた。泊まり込みもなくなり、残業も大幅に削減できた。働きやすい職場になったことで優秀な人材も入ってくるようになった」
現在は時期によっては残業もあるけれど、遅くまで残っている人はいない。
「貴女のように表に出ない仕事をしている人達がいるからこそ、王宮の仕事はうまく回っている。だからどうか自信を持ってほしい」
ああ、そうか。
殿下は私を気遣ってくださっているのだ。
「殿下、ありがとうございます。私は自分の仕事に誇りを持っております。ですから誰に何と言われようと決して負けたりいたしません!」
殿下の手がポンと私の頭に置かれた。
「貴女は強いな。だが、困ったことがあれば計算室長や私に相談して欲しい。我々は対処できるくらいの力を持っているのだから」
計算室に戻り、室長に本を渡してから3人分のお茶を淹れる。
最初に殿下が室長に先程の経緯を簡単に説明した。
「まず、私はこの部屋に頻繁に出入りすることで要らぬ注目を浴びてしまい、貴女に多大なる迷惑をかけてしまったことを心からお詫びしたい。本当に申し訳なかった」
頭を下げる殿下。
「どうかお気になさらないでください!たいして実害があったわけではありませんから」
なぜか殿下は苦笑いしながら頭を上げる。
「ただ、彼女達の勘はあながち外れてはいないともいえるかな。私は貴女に興味を抱いて計算室へ足を運ぶようになったのだから」
えっ、そうだったの?
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