少し変わった武家社会から

第三話 ボーナス

　転生して、ハグネルからこの世界についてのいろいろを教えてもらっているときだった。
　俺の名前を知っている謎の男が話しかけてきて、さらにハグネルから衝撃のカミングアウトを受けた。

正直に言う。「何だこれ!?どういう状況??」

収集がついていない俺に、ハグネルが話しかけて来た。

「取りあえず、一旦時を止める。」

時を止めるって何?お前は転生神じゃないの?今までだった「うるさい!」だとか、「そんなことどうでもいいだろう!」とか言われそうだがこのときハグネルは俺に対して何も突っ込まなかった。

「実はのう。幸太郎。転生したお前を知らぬ世界に放り出すわけにはイカンと思ってな、わしが少し手を加えたんじゃ。」

「何をしたんだい？」

「お前にちょっとしたボーナスを与えたのじゃ。言うなれば転生ボーナスじゃな。」

（転生ボーナス？この男のどこがボーナスなんだ？）

「大丈夫じゃ。この男だけがボーナスではない。ボーナスは、お前に家族を与えた。」

「家族を与えた　って、どういうこと？」

「お前に、父親と母親と家臣を与えたのだ。」

事実だけを紹介されても意味がわからない。どういうことか詳しく聞こうと思ったら、止まっていた時間が再び動き出した。

「幸太郎さん。急いで下さい。急がないと今日中に上江屋敷に戻れませんよ!」

そう言って男は俺の手を引っ張って走り始めてしまった。

（上江屋敷？今日中に戻る？一体どういうことなの？）

謎の男と俺は、簡易的なバス停の様なところへ向かい、そこからは馬に乗って移動している。

　馬なんて乗ったのは初めてなのに、身体が勝手に動いている。これは本当にどうなっているのかわからない。

「ボーナスについてもう少し詳しく紹介してもいいか？」

馬に揺られ始めてからしばらくたった時にハグネルが話を切り出してきた。

「あぁ。頼む。」

「実はのう。せっかく転生したのに、武士でないのはつまらないのではないかと思ってな、そこそこな武家の嫡子として転生させたのだ。」

「えっ！？まじで!?まじで言ってるの？」

「あぁ。マジじゃ。」

　ごめんよハグネル。さっきはキツく当たってしまって。君は本当に神様だよ。こんな一人間に対してそんな配慮をしてくれるなんて…

「ところで、上江屋敷って何?」

「あぁ、お前が暮らす屋敷のことじゃな。お前と家臣が二人。それから家人,従女が三人の計6人で暮らしている。」

「あれ？両親は?」

「お前はもう16じゃろ?この世界ではもう独り立ちをする頃じゃ。」

　こっちの世界でもそう言う年齢系のしきたりとかも同じなのか。

「それで、この人は？」

ボーナスについての説明が一段落してから、僕がハグネルに聞いた。

「あぁ、この者は北村幸久じゃ。お前家の家臣団で一番の家・北村家の跡取りじゃ。今はお前の屋敷で奉公しているようだ。」

流石自分がボーナスを用意しただけあってハグネルはよく知っていた。

　馬に揺られながら、周りの景色を見回した。

　俺の左右に広がっていたのは、先程までの栄えた街ではなく、広大な田んぼや畑であった。

（あれっ?いつの間にこんなところまで来ていたんだ？）

ハグネルとの会話に集中していた俺は自分の居るところさえ認識していなかったようだ。

　そういえば、今日中に帰るだとか言ってたっけ。ってことは、遠いのかな？

「これってどこまで行くの？」

ハグネルに聞いてみた。

「もう少しじゃ。ほれ、正面に見えておるだろう。」

そう言って正面を見ると、そこそこ大きな屋敷の門がどっしりと俺を待ち受けていた。