地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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5章 獣鬼

襟巻

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「それでどうなの?何か感じる?」
「それが、この毛皮に鬼はいない」
「じゃあ、死んだ現場かしら」
「う~ん。もっと近い気がする」
「じゃあ、あの死体が鬼?」

「いや、この病院に近いのは間違いない・・・と思う」
「うん、じゃあ鬼退治はこの近くでいい訳だね」
「ああ」

礼司と魔美が川島に近づいた
「先生、お話は済みました?」
「ええ」
「ちょっとお茶でもしませんか」
礼司が強張った顔で言った
「そうですね、この時間なら食事でも」

「あっ、先生が誘っている」魔美が囁いた
「そ、そうですね」
四人は病院の裏側にあるレストランに入った

「夜野さんお時間は大丈夫ですか?」
「ああ、運転手は歩合ですから。あはは」
「えっ、夜野さんは運転手さんなんですか?」
「は、はい」

「なんか、似合いませんね。
浜田さんの上司に見えましたわ」
川島は顔を赤らめて言った
「あはは」
礼司は照れて頭を掻いた

「ねえ、川島先生に本当の事言おうよ」
魔美が礼司のわき腹をひじで突いた
「そうだな、では川島先生。鬼って知っていますか?」
「鬼?」
礼司は川島を見て上がっていた
「夜野さん僕が話します」
浜田は礼司の膝を叩いた
「うん頼む」

「川島先生」
「はい」
「今回の事件の犯人は鬼の可能性があるんです」
「お。鬼ですか?節分や桃太郎に出てくるやつでしょ」
「ええ、霊と人間の思いが何らかの事でつながると
鬼が現れるんです」

「その鬼が?」
「人間を食うんです」
「ええ、本当なんですか?」
「はい、新宿中央公園の事件とか
渋谷のライブハウスの事件とか」
「ええ、憶えています、新宿の首なし
事件はここで解剖しましたから」
「そうですか。では」
「信じます。その鬼退治をするのが
夜野さんと魔美さんなんですね」


「はい、今回の事件も鬼が犯人なんです。
でも警察は動けませんから」
「わかりました。それで私はどうしたら?」
「先生、他にもこんな事件ありませんでしたか、
毛皮に関する事件」
川島はしばらく考えると思い出した

「そう言えば、先週毛皮のマフラーで
首を絞められて殺された女性がいたわ」
「ああ、大久保のマンションで
女子大生の中村洋子が殺されたやつだ」
「それって絞殺だけですか?」
礼司が身を乗り出して聞いた。

「えっ?そう1ヶ所右手を切られた
傷が有ったわ、どうして?」
「もしかして、その血が毛皮に着いた、可能性は?」
「ええ、絞殺だったら必ず手でかばおうと
するから100%毛皮に着きます」
浜田は断言した

「それが獣鬼が現れた原因だ」
「ええ、そうね」
「浜田、その女を殺した犯人は?」
「まだ捕まっていません」
「捜査状況わかるか?」

「あっ、はい調べてみます」
「そこに居る毛皮の女性の男関係も」
「はい」
浜田は電話をかけに外に飛び出した

「ところで、先生聞きたいことがあるんですが」
礼司が真剣な目で川島に聞いた
「はい」
「ひょっとしたら川島先生は
我々の仲間かも知れないんです」
「はい?」
礼司は鬼の世界と浜田と向うの
世界の川島由美の存在を話した

「はい、なんとなく解かりました」
川島は不安そうな顔をした
「もし、本当に向うの川島由美さんが
来ているならどうやって記憶を戻すの?」
魔美が礼司に聞いた

「うん、浜田の時は煙鬼を倒した時に
突然倒れた、だから先生が鬼退治を見れば」
礼司は川島の顔を見た
「はい行きます」
川島が返事をした

「先生、二つの記憶が頭の中で
交差します、苦しいですけれど」
「解かりました、覚悟します」
そこへ息を切って浜田が入って来た

「隊長、関係がわかりました」
「おお」
「そこの死体の女性、井田真知子の交際相手が
歌舞伎町『ピート』のホスト加等和則でした」
「女子大生の中村洋子は?」
「ええ、歌舞伎町でキャバ嬢をしていました」
「何かつながりが有ったかも」
魔美が興味深そうに言った

「そうかもな」
礼司は魔美の頭を撫でて言った
「浜田、ホストと女子大生の関係を調べよう」
「はい、すぐにピートへ行って
女子大生が客だったどうか調べます」
「頼む時間がない」
「はい、隊長一緒に行ってください」
「そうか、足が無いんだな」
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