地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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5章 獣鬼

戦い

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加藤が唸りながら礼司に飛び掛って来ると
礼司は右に避けながら
加藤の右手をかかえ加藤を背負い、投げ飛ばした
「ああ、武器が使えないのか」
「はあ」
礼司は加藤に向かって
フックを撃つと軽く避けて
逆に礼司の顔にジャブを撃った

「おっ、強いぞ!」
「ああ、言うのを忘れていました」
「ななんだ」
「そいつ、プロボクサーだったんですよ。フライ級の」
「それを早く言え」
「リングネームがダーティ鶴田です」

「ああ、あの反則ボクサーか」
「ええ、1年間の出場停止されていたんで
よく歌舞伎町で遊んでいたみたいです」
礼司は魔美にもらったドラーバーズグローブを
はめると右肩を前に出しかまえた、
加藤もやはり右側を前に出すように
構えた。

「浜田ゴングを鳴らせ」
「は、はい カーン」
二人はジャブの打ち合いで決定打が出なかった
終盤に礼司は加藤のストレートを受け
浜田の方へ転がってきた

「強いなあ、歯が立たん」
「はい」
「12秒後に足元に飛び掛れ」
「はい」
「10・9・8・7」
浜田が持っていたロープが光だした
「6・5・4・3」
その時加藤は力を緩めた
「2・1いけ!」

礼司が加藤に飛び掛ると同時に
浜田も加藤の足にタックルをし
加藤を倒すと、すかさず礼司は
加藤に馬乗りになり顔に何発も
パンチを放つと、加藤の力が抜けた

「浜田ロープ」
「はい、どうして加藤は力を緩めたんでしょうか」
「3分経ったからだ」
「なるほどね。プロボクサーか」
礼司は手を後ろに回し縛り
足に回し全身が動けないように
縛ると礼司は次に動いた

「浜田、俺は下へ降りる。そいつを見張っていてくれ」
「はい」



「うー」
「ふー」
ごえもんと嵐丸が体を横向きにして唸り
目を大きく見開いて暗がりを見つめていると
そこへナイルが「ワンワン」と吠えながら
が走ってきた。

そしてそのまま二匹が見ている暗がりの方向に
消えた。
「きゃーん」
ナイルは魔美達がいるところまで弾き飛ばされた
「ナイル大丈夫?」
魔美がナイルに近づくと
ごえもんと嵐丸も近づいてナイルの顔を舐めると
すぐに立ち上がり「ワンワン」と吠え出した。

「何がいるの?」
「たぶん獣鬼よ、先生気をつけて」
その時毛を逆立てているごえもんの体が金色に光り
尾が二本に分かれると魔美が微笑んだ

「魔美ちゃんごえもんの尻尾が・・・」
「うん、彼女は前世で100年も
生きて猫神になっていたの」
「猫神」

「ええ、すべての動物の言葉がわかり
ライオン並の力をもっている猫」
するとその光に照らされて奥の方にいた獣鬼が現れた
それは、2メートルほどの茶色い狐だった
「きゃあ」
川島が後ろに下がった

その瞬間ごえもんの姿が消え
獣鬼の首の右側に噛み付いていた
それを見ていた乱丸が左側の首に噛み付き
前足にはナイルが噛み付いた
獣鬼はそれを振り払おうと必死に
体をもがいた

そして獣鬼は逃げようと出口へ向かうと
ナイルがそれを塞いだ
そこへ礼司たちが降りてきて
「おお、いつが獣鬼か」
獣鬼は礼司をみて牙をむき出した

「シュー、シュー」と声をだして威嚇した
「ごえもん、嵐丸離れろ」
礼司が言うと
二匹はすぐに離れて戻ってきた
「夜野さんどうするの?」
川島が聞くと礼司は右手を上げて
獣鬼に一歩一歩近づいた


「大丈夫だ」
「シューシュー」
獣鬼は今にも礼司に飛び掛りそうだった
「きつねさん、私達はあなたを助けにきた」
するとごえもんの目がまるで信号を送っているかのように光った
「一緒に故郷に帰ろう」
「危ないわよ」
川島が言った。

「大丈夫よ、きつねさんこのままじゃ
洋子さんがうかばれないわよ」
魔美も獣鬼に近づいた
すると、獣鬼の唸り声が止まって
首をゆっくり下げ始めた

「ねっ、一緒に帰ろう」
魔美が頭をなでた
「ぐぐぐ」
魔美の頬に体を寄せた
「おお、一緒に帰ろう」
そして、獣鬼の体は小さくなり普通の狐に戻ると
ごえもんと嵐丸とナイルが近づき体を舐めつづけた

「バタン」
後ろで音がすると川島が倒れてた
「先生!」
礼司はが川島を抱き上げた
「やはり、先生は由美さんだったのね」
「ああ、二人目がこっちへ来た」
そこへ浜田が三階からシルバーの
毛の色の狐を連れて降りてきた

「隊長」
「どうした?」
「加藤があまりにも苦しがるのでロープを解くと、
毛皮が加藤の体から離れて
狐になってしまったんです」

「それで、加藤のほうは?生きているか?」
「いいえ、死んでいました」
「やはりなあ・・・・・」
その側にシルバーの狐が体を舐めながら座っていた

「さて、行いくぞ」
「はい?」
「この狐達を野に放つ」
「大丈夫ですか?」
「わからん、また人を食うかもしれん」
「ええ?」
浜田が驚いた顔をすると魔美が頭を撫でた。

「大丈夫だよ、この子達は」
「よかった」
「浜田、川島先生の介抱たのむ」
「はい、気を失っているとなると」
「ああ、川島由美がこっちへ来た」
「そうですね。良かった」
礼司は由美を抱き上げ、タクシーに乗せると
浜田が後を追ってそれに乗った、そして鬼の世界から
脱出するとタクシーは病院の前に着いた
「じゃあな、後は頼む」
「はい、隊長気をつけて」
するとタクシーは閃光ともに浜田の前から
消えた
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