地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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6章 写鬼

携帯電話

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「私は一人なのに魔美さんを乗せて走るなんて」
「なんだ、俺を試したのか?」
「ええ、まあ」
「あはは」

「すみません、ではこのつり橋を渡ったら一気に山を登ります」
「了解、魔美大丈夫か?」
「うん、お尻がちょっと痛いだけ」
「あはは、我慢しろ」
魔美はいやな顔をした
そして、沢村はバイクのエンジンをふかし
走りだした

幅50cmほどの板がしいてあるつり橋を渡り
獣道ほどしかない急な斜面を
二台のバイクが頂上に付く頃には
日が山並みに日陰が出来ていた

「日暮れまであと少ししかありませんよ」
「ああ、分かっている」
礼司はバイクから降りて周りを見渡し
何かを見つけた
礼司は歩き出すと魔美と沢村が追いかけた
「夜野さん待ってください」

そこには小さな石舞台と社があった
「どうしたんですか?」
「見つけた」
すると、礼司が持っていた根付が光りだした

「ここから霊気が出ているぞ」
礼司がそういいながら赤い社の
小さな扉を開けると
そこから光が出て
三人の立っていたところが大きく割れ
魔美の悲鳴とともに何メートル、
何十メートルもの底に落ちていった
ドスンという軽いショックで体が止まり

「きゃー」
魔美は声を上げると
そこは護摩壇に護摩の火が燃えている
洞窟のようなところだった

「ここは?」
魔美が周りを見渡すと沢村が言った
「誰かが住んでいいますね」
「どうして?」
「護摩の火が燃えています」

「あら、夜野さんは?」
魔美と沢村が周りを見渡した
「夜野さーん」
魔美は不安になって夜野を呼んだ

「おお」
礼司は魔美たちのいる反対側の
護摩壇の後ろから歩いてきた
「よかった」
魔美がホッとして礼司を見ると
顔が泥だらけになって
笑っていた

「凄い距離を滑ったようですね」
沢村はまだ興奮を隠しきれないように言った
「ええ、長かったよ」
礼司は上を見上げた

「ここはどこなのかしら?」
「地下深くだな」
「でも火がついていますから、誰かがいるはずです」
「うん、魔美呪鬼はこの火の中に呪う人間の名前を書いて
燃やすんだろう」

「うん、そうよ」
「ここかも知れないな」
「ええ、でも祈祷師がいないわ」
「ああ」
礼司がまわりを見渡すと反対側に
小さなが穴が開いていて
そこに真っ赤な二つ折の携帯電話が開いて
置いてあった

「この電話?」
礼司が電話に手を伸ばすと
電流が走った
「痛て!」
「どうしたの?」


「だめだ触れない、結界が張ってある」
「結界?」
「そうだ」
魔美は携帯の画面を覗き込むと
真っ黒になっていた

「何も見えない」
礼司はしばらく考えると思いついた
「もし、携帯電話に殺したいやつらの
名前を書いてここに送って火に
入れたらその人は死ぬんじゃないか」

「えっ」
洞窟の中を歩いていた沢村声を出した
「そうかもしれない」
魔美がうなずいた

「魔美、ここから出る方法は無いのか?」
「ええと、ここは鬼の世界じゃないから落ちた場所
から這い上がるしかないんじゃないかしら」
「一度外に出ないと何も出来ないな」
礼司は天井を見上げながら苛立っていた

「ええ」
「浜田に連絡したいなあ」
「だめ、携帯が通じない」
魔美が携帯電話を持って言った

「夜野さん、この赤い携帯は電話が通じるんですかね」
「そうか、やはりこの結界を破らないと話にならんな、
魔美ノブを貸してくれ」
「はい」
魔美はバックからノブを取り出して礼司に渡した

「ありがとう」
礼司は右手にノブを握り左手で
携帯の入っている穴に手を突っ込んだ
すると礼司の手は緑色に光
バチバチと青白い火花を散らした

「大丈夫?夜野さん」
「ああ」
礼司は携帯をつかんで穴から取り出した
それは普通の携帯とまったく変わっていなかった

「どう?」
「ああ、なぜか電源も切れていない。
画面が黒かったのは省エネモード
だったからだ」
「電源どうしたのかしら?」
「おい、この携帯にメールが来ているぞ」
礼司はメールの履歴を見ると
唖然とした

「どうしたの?」
「この写真を見ろ」
礼司は携帯の画面を見せた
「これって花田大介じゃないですか?」
花田大介が死んだことを知らない沢村が言った
「ああ、他にも写真が写っている」

魔美が覗き込むと車の前に立っている男性が二人
写っていた
「ガードマンみたい」
「うん」
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