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第二十一話 謝罪
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忠興との激戦が終わって一週間が経った。
今でも阿修羅のように立ち向かう彼の表情を思い出し、トラウマとなっている兵士が多くいると言う。
しかし、様々な戦地を渡り歩いてきた平兵衛は忠興との闘えたことを心から誇りに感じている。
彼の実力さえあれば、あの距離なら忠興の頭部を撃ち抜けたが、外してしまった。
彼は戦争において、初めて敗北感を味わうこととなる。
今でも理由がわからないが、外してしまった。
まぁ勝負では俺の勝ちだから、負けではない。
彼は鷹狩りと農作業をしながら、次なる闘いの準備をゆっくりと開始していた。
そんなある日、北政所の使者が平兵衛の元にやってくる。
「忠興の父親が俺に会いたいだと?」
忠興の父、細川藤孝だ。
彼は山城に住み、わずかながら扶持をもらい、歌を詠み、茶を嗜み、全ての政務を忠興に任せ悠々自適に生活していた。
法正の奇襲作戦は完璧で北政所がいる京の近隣に住んでいた藤孝に気づかれることはなかった。
「完敗でございます」
藤孝は忠興が討たれたことを知ると、すぐに北政所に会い、自身の沙汰を問うた。
彼女は藤孝のような文化人を亡くす損失を理解している。
それ故に藤孝の願いを全て聞き入れ、興元と忠興の子息は大友家の与力となり、藤孝は何の問題もないと判断した。
そして、藤孝は一つだけ北政所に
「息子を追い詰めた死神と呼ばれるに会いたい」
と、願い出た。
数日後、平兵衛は藤孝と会談することが決まった。
忠興は狂気の塊ではあったが、武士道に反することはしなかった。
彼の父である藤孝も同じだろう。
会うことに不安は一切なかった。
共に戦った後藤又兵衛、杉江勘兵衛の二人を連れて平兵衛は藤孝の屋敷を訪れる。
北政所と共にいる藤孝に憎しみは一点もない。
「息子の死に様はどうであったか?」
平兵衛は忠興に対する尊敬を語った。
それは勘兵衛、又兵衛も同じである。
三人の目は輝いており、社交辞令でないことは一目瞭然だった。
普段、無口な平兵衛は最後にこう告げた。
「歴史に残る戦士だ。誇りに思ってほしい。そして、その父が私に対して尊敬の念を抱いてくれる。これ以上ないくらい幸せだ」
藤孝は涙を流して喜んだ。
穏やかな時間が流れていく。
一方、佐和山の地では三成、大谷吉継、島左近、十郎、正澄の五人が話し合っていた……いや、三成が諭されていた。
「三成、やはり刑部殿が言っていることが正しい。今からでも遅くない。せめて、福島正則殿には謝罪しよう」
正澄が三成に謝罪するよう促し、渋々、三成は同意した。
「ここにいる皆は私のことを思っての行動。それに応じなければなるまい」
正則は三成の謝罪に応じなければならない。
もし、突っぱねようものなら清正や忠興のようになってしまうことは明白だ。
三成も強気に"謝罪"ができる。
北政所が完全に三成側についてしまった今、正則には選択肢がなかった。
彼女は元々朝廷との話し合いや他家との外交などで活躍してきた。
その上、軍事的な存在として12万石の大名となった法正がいて、次々と東軍の切り崩しに成功している。
"謝罪"を受け入れなければ、大義名分を与えられ改易か死。
福島正則の眠れぬ日々は続く。
今でも阿修羅のように立ち向かう彼の表情を思い出し、トラウマとなっている兵士が多くいると言う。
しかし、様々な戦地を渡り歩いてきた平兵衛は忠興との闘えたことを心から誇りに感じている。
彼の実力さえあれば、あの距離なら忠興の頭部を撃ち抜けたが、外してしまった。
彼は戦争において、初めて敗北感を味わうこととなる。
今でも理由がわからないが、外してしまった。
まぁ勝負では俺の勝ちだから、負けではない。
彼は鷹狩りと農作業をしながら、次なる闘いの準備をゆっくりと開始していた。
そんなある日、北政所の使者が平兵衛の元にやってくる。
「忠興の父親が俺に会いたいだと?」
忠興の父、細川藤孝だ。
彼は山城に住み、わずかながら扶持をもらい、歌を詠み、茶を嗜み、全ての政務を忠興に任せ悠々自適に生活していた。
法正の奇襲作戦は完璧で北政所がいる京の近隣に住んでいた藤孝に気づかれることはなかった。
「完敗でございます」
藤孝は忠興が討たれたことを知ると、すぐに北政所に会い、自身の沙汰を問うた。
彼女は藤孝のような文化人を亡くす損失を理解している。
それ故に藤孝の願いを全て聞き入れ、興元と忠興の子息は大友家の与力となり、藤孝は何の問題もないと判断した。
そして、藤孝は一つだけ北政所に
「息子を追い詰めた死神と呼ばれるに会いたい」
と、願い出た。
数日後、平兵衛は藤孝と会談することが決まった。
忠興は狂気の塊ではあったが、武士道に反することはしなかった。
彼の父である藤孝も同じだろう。
会うことに不安は一切なかった。
共に戦った後藤又兵衛、杉江勘兵衛の二人を連れて平兵衛は藤孝の屋敷を訪れる。
北政所と共にいる藤孝に憎しみは一点もない。
「息子の死に様はどうであったか?」
平兵衛は忠興に対する尊敬を語った。
それは勘兵衛、又兵衛も同じである。
三人の目は輝いており、社交辞令でないことは一目瞭然だった。
普段、無口な平兵衛は最後にこう告げた。
「歴史に残る戦士だ。誇りに思ってほしい。そして、その父が私に対して尊敬の念を抱いてくれる。これ以上ないくらい幸せだ」
藤孝は涙を流して喜んだ。
穏やかな時間が流れていく。
一方、佐和山の地では三成、大谷吉継、島左近、十郎、正澄の五人が話し合っていた……いや、三成が諭されていた。
「三成、やはり刑部殿が言っていることが正しい。今からでも遅くない。せめて、福島正則殿には謝罪しよう」
正澄が三成に謝罪するよう促し、渋々、三成は同意した。
「ここにいる皆は私のことを思っての行動。それに応じなければなるまい」
正則は三成の謝罪に応じなければならない。
もし、突っぱねようものなら清正や忠興のようになってしまうことは明白だ。
三成も強気に"謝罪"ができる。
北政所が完全に三成側についてしまった今、正則には選択肢がなかった。
彼女は元々朝廷との話し合いや他家との外交などで活躍してきた。
その上、軍事的な存在として12万石の大名となった法正がいて、次々と東軍の切り崩しに成功している。
"謝罪"を受け入れなければ、大義名分を与えられ改易か死。
福島正則の眠れぬ日々は続く。
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