マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと

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第六話 やっぱり黒幕がいたわけで

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秀吉の側近の一人である大村由己が竹中半兵衛に報告する。

「やっぱり黒幕は奴らか……」
「はい、間違いないかと」

彼が切支丹大名などから独自調査した結果、イスパニアが日明の両サイドに武器の売り込みをしていたことがわかる。

「いかがなさいますか?」

由己の言葉に竹中半兵衛は少し考えた。

ーー互いに戦わせ、武器を売っている。奴ら、本国の内政や切支丹の布教が上手くいってないのか?

彼の考えは間違っていない。
ヨーロッパではプロテスタントの勢いがあり、カトリックでの権力は衰えが見え始めていた。
宣教師やカトリックが後ろ盾になっている商人たちはアジアでの商業範囲の拡大と布教に躍起となっている。

ーー戦を消しかけている。奴らの状態、良くはないだろう。最新式の武器を買うということは我が国の軍備が筒抜けになってしまう。殿下に知らせなければ……

心配する半兵衛。

だが、秀吉は違っていた。

数台のキャノン砲を鍛冶屋に見せ、分解させて生産やアップグレードできるかを確認させた。
その担当には砲術に優れた鈴木重朝と毛利秀包、島津豊久を選び、三人に逐一報告させていた。
ここで明、イスパニア、家康に誤算が生じる。

家康は関東一円の内政に手を焼き、さらに配下は有能で大名間での揉め事などを収拾していった。
それ故に武器開発が家康に知られることなく、順調に運んでいった。
明も日本の軍事能力と秀吉は謀略を舐めていた。

秀吉はわざと裏切りに応じる返信を武将たちにさせていた。

明はすっかり騙されており、最前線で戦う準備を進めている。
しかも、今回は朝鮮と女真族中心の部隊であり、反乱分子になりそうな北の部族を潰したい明はむしろ積極的に戦いたいのである。

両者、裏の意味で利害が一致している。
秀吉はそこを大きく利用しようとしている。

半兵衛はその秀吉の抜かりなさと秀長のサポート力を見て、安心した。

決戦が前夜に迫り、全国から猛将たちが集う。

ストレスが少ない状態の秀吉はガハハと笑いながら着陣する。
「皆、持ち場には着いたか?」

本陣には秀吉の他に半兵衛、秀次、前野長康、黒田官兵衛、秀長がいる。

「いやぁ、長康、官兵衛、半兵衛、秀次て。アレやな。昔を思い出すわ。ここに小六がおってやな。毎日楽しかったな」

秀吉が声をかけていく。

「ええ、楽しかったですわ。小六のダンナがここでええ感じのオモロい話してくれて……」

長康が小六の話をすると、秀吉が涙ぐむ。

「小六……今のワシを見てなんて言うやろか?」

半兵衛が優しく微笑みながら言う。

「まぁ、調子に乗りやすくはありますし、思いつきで行動する面はありますが、よくやったと賞賛するのではないでしょうか?」

秀吉は半兵衛に笑顔で抱きつく。

「半兵衛よぉ! 言うやないか!?」

明るい雰囲気が周囲に立ち込めていく。
官兵衛はこの空気を壊さぬよう、笑顔で食事の案内を開始する。

「ささっ、今日は明日のいつ、敵軍が現れるか知れませぬから酒は控えさせていただきますが、地元の漁師が先勝祝いにと美味い魚を釣り上げてくれました。是非」

「これ食って秀頼に弟、作るがね」

秀吉のジョークに自然に笑いが立ち込める。

おそらきか、これが本当の秀吉なのかもしれない。
史実では秀長、半兵衛、小六が亡くなり、古くからの配下である長康も手にかけた。
彼は精神的に病んでいた可能性が高い。

そこに真田信繁がやって来る。

「真田信繁、着陣致しました」

「おおっ!」

秀吉は信繁に駆け寄り、話し出す。

「信繁、元気かよ?」

信繁は冷静な男ではあるが、人質時代に世話になった秀吉の言葉に嬉しくなってしまう。

しかし、礼儀を欠いてはいけないため、顔は崩してはいけない。

「秀吉様!」

と言って、喜びたい気持ちはある。

「まぁ、はい」

信繁は笑顔を隠すように俯き、答えた。

そこへ満面の笑みを浮かべた秀吉がやってきて、彼の肩をバンバン叩きながら言う。

「おみゃあがおらんから寂しいわ。秀包とおみゃあはワシにとって息子やで。せや、ワシが死ぬ前に直属の配下にならんか? おみゃあに看取られて死にてぇわ」

「信繁殿……喜んで良いのですよ」

半兵衛からの助け舟に信繁は頷くも、武士として感情を見せてはいけない。

「準備がございますので、この辺で……」

秀吉は寂しそうな表情を浮かべながら、

「ワシからしたら秀次、秀頼とおぬしにとって兄弟みたいなもんじゃ。何かあったら、守ってやってくれ」

と言う。

「もちろん。命を賭してお守り致します」

そして、信繁は去っていく。
彼はあまりの嬉しさでほろほろと涙を流して歩いていた。

半兵衛は去っていく信繁を見ながら、優しく微笑む。

ーー素晴らしい。武士の鑑のような男だ。

そして、開戦の火蓋が切られていく。



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