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ネットの大海を泳ぐ1

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「ねぇねぇ、神奈起きて、起きてよー」

 隣でぐっすり眠っている神奈を揺すり起こす。昨日は、結局日を跨ぐまで神奈と一緒に投稿サイトの前で話しあっていて、その後は、恒例のパジャマパーティーをしてたんだよね。

「もぅ、なによ。ふぁーっ、今日は会社休みでしよ。休みの日くらい寝かせてよ。」

 目を擦りながら顔をこちらに向けてくれる。

「ごっごめん。神奈。でもね。これ見てこれってこれっ。」

 私は朝一で、スマホで確認していた小説家になれるのアクセス解析の画面を見せていた。

「あー凄いじゃないの、用はそれだけ?また後で喜び会おうね。おやすみー。」

 ええー、もっとちゃんと見てよ。神奈~。

 昨日の寝始めた時間から急激に跳ね上がっている解析結果を眺める。最初に見た時は、僅か一桁だったのに、今は1時間で100をゆうに超えているPV数である。

 あの時間帯だとあれ以上は神奈は増えないって言ってたのに………なんでこんなことに?神奈から教えてもらった小説の詳細情報を確認してみる。

「えっ、イイね220。ブックマーク50。評価ポイント248.えっえっえーーーっ、ちょっと神奈本当に起きてよ~~~」

「うっうーん。もうなによ。栞。眠たいんだから、お願いだから寝かせてよ。スピースピー」


 うーん、やっぱり朝に弱い神奈にはこんな手ぬるい起こし方はダメか。仕方ないわね。最後の手段を使うとしましょう。身体を起こして、両手を上に上げて、手をワキワキする。

「ふっふっふーっ、神奈~。おっきろー」

 ワキワキした手を神奈の脇腹付近に当てて思いっきりこちょがす。

「きゃっちょっと、わっはっ、くすぐったい。やめて、お願いだからやめて栞。起きた。おきたわよ。」

  私はその声を聞いて、こちょがすのをやめた。お腹以外にもこちょこちょしたのは内緒。触り心地はとってもよかったと言っておきましょう。

「それでこの私の眠りを強制的にやめさせた理由はなに?理由によっては、ベストリテのケーキセット奢ってもらうわよ。」

 私は、その言葉を聞いて冷や汗が出てくる。いやそのケーキセットって、1セット2000円もする超高級のケーキなんですけど………。私も食べてみたいとは常々思っていたけど、とてもそんな余裕はないよ。しかも、神奈に奢るってことは、私も一緒に行って食べるってことでしょ。

 2人分のケーキセットはとてもじゃないけど無理だよー。せめて割り勘にして欲しいかな。

「あのー、そのー、神奈さん?ごめんなさい。ちょっと悪ふざけが過ぎました。謝るからその罰だけは勘弁して~。」

 私は一転して、ベットの上で神奈の前で土下座をする。日本人の最終奥義である土下座だ。
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