12 / 46
10 思い出は浅葱色
しおりを挟む
宗一は60歳を超えた頃から健康的に若々しくと意識を持ちて過ごしてきたが、老いとは、身体の自由を奪い、それに伴って心を弱らせるもの。実年齢を鑑みて若くとも、生命力や身体能力などの若者が持つあらゆるエネルギーには到底敵わないのである。
宗一の願いを聞き入れたギルバートとアインハルト、そして当の本人である宗一を含む三人の男たちは、床に座り込んだまま、国交正常化交渉に向けての意見交換を始めていた。
「武力に頼らず、というのは既に手遅れだな。お前の存在そのものが脅威なのだから」
腕組みをしたアインハルトは、ちらりとギルバートに視線を送って言った。
その意見にギルバートは同意したが、額を押さえながらかぶりを振る。
「そうだな。勇者と魔王はこの世界において、二大勢力だ。それを統合したオレは、今や世界最強。まさに脅威……」
そう言いつつも、その表情はどこかにやけている。嘆いているのか、誇っているのか、少々呆れる。
宗一は諫めるように咳払いをしてから発言する。
「君が脅威とされるのなら、こちらの優位性をおっぴろげないことが肝要。それでも友好を妨げるだろうなあ」
「慎重を期するに越したことはないでしょう」とアインハルト。「ですが、そう悲観することもございません。勇者としてのギルバートは国民の支持が厚かったことから、未だに好意的な者もおります」
「ワオ!」
ギルバートが浮かれた声を上げる。
それを聞いて、アインハルトはばつが悪そうに顔を顰めた。
「その発言、ヴァールグレーン王国第三騎士団団長の言葉として受け取るぞ?」と皮肉めいた笑みを浮かべるギルバート。「ついでだから、そろそろ立場をはっきりさせてはどうだ、アインハルト・リーゼンフェルト騎士団長殿。貴殿がこの会議に参加するということは、ヴァールグレーン王国への背信ではないか?」
ギルバートは口調を改めた。
仰々しく芝居がかった物言いは魔王としての発言ということなのか、と宗一は思う。
問われたアインハルトは、小さく溜息を吐いた。そして、凛とした表情をギルバートへ向けて言った。
「発言は撤回しない。他意もない。そのまま受け取るがいい。そして、私の立場については、昨夜、通達があり、我が王より外交使節の任を拝命している」今度は大きな溜息を吐いて自嘲的な笑みを零した。「当初はソーイチ様を守護し、連れ帰ることだけが主命でしたが、事情が変わりました」
食事の前にアインハルトが悩みを抱えていると明かしていたのは、この事だったのだろうか。出張の予定が出向になってしまったようなものだ。宮使えは辛いよな、と宗一は同情した。
思案していると、ふと、アインハルトの視線に気づく。赤い宝石のような瞳とかち合い、アインハルトは優美な笑みを見せて言った。
「ですが、ソーイチ様を諦めた訳ではございませんので」
宗一の肝が冷えた。
「やめろ。ソウイチの感情を乱すな」
苛立った様子のギルバートが割って入った。
宗一の感情は大して乱れていないが、ギルバートは過敏に反発した。
これは少し前にアインハルトから言われた言葉を、そっくり返したかったのだ、と宗一は推測する。
その推測は正しかったようで、ギルバートはしてやったりと口角を吊り上げている。
ギルバート青年は時折、こうして子供っぽいことを平然とする節がある。大の大人がくだらないと呆れもするが、どこか彼ならば仕方がないと許容してしまう。
だが、甘やかしているとろくなもんにならない。時には律するべきだ、と宗一は気を引き締めた。
「話を戻そうか」と宗一は仕切り直した。「王様とやらが外交と言ったのなら、国として認められているということかい?」
「仰る通りです。本来であれば認められるはずもない事ですが、陛下は未だ勇者を支持するお一人なのです」
快活に笑い、ふんぞり返るギルバートに対し、アインハルトは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「政治というのは、根回しが大事なんだよ、アインハルト君」
「何が根回しだ。この城の有様はなんだ? その根回しの効果がこれか? 陛下が国とお認めになったのは、貴様に期待されてのことだ。陛下を失望させるな。貴様の手腕で我が国の政治屋どもを黙らせてみせろ」
アインハルトは厳しい姿勢だった。
この城の有様、というのは何を指してのことかはわからないが、その口振りだと、相手国は一枚岩ではないようだ。
それに、王様に期待されているとあっては、気概に満ちるというもの。さぞや、意気込んでいるのだろうと思いギルバートの様子を伺う。
しかし、ギルバートはアインハルトの忠告など気にも留めていないのか、また何やら考え込んでいた。
「うーん。やっぱり食糧難に付け入るか……」
ギルバートは剃り残した髭を探るように自身の顎を撫でながら言った。やはり既に次にするべきことを考えていた。
宗一は独り言のような呟きに質問する。
「食糧支援か、産業を興すかい?」
「ああ。その両方を攻める。我が国は広大な土地に豊富な資源。人からすれば宝の山だけど、魔族にとっては価値を見出す者は少ない」
「魔族間の抗争も増えていると聞いたが?」
そうアインハルトはギルバートに問いかける。
魔族というのはいまいちわからない。人種のようなものだろうか? 宗一に知る魔族は名無しの執事のみだ。
「魔族というのは、彼のような子かい?」
宗一は部屋の隅に控えている名無しの執事を見ながら聞いた。緑がかった水色の髪の青年だ。宗一に穏やかな微笑みを向けている。
「そうだ。彼は姿を人に寄せてるけどね。魔族といっても、種族は様々だ。そして弱肉強食の世界。強い者が生き、弱い者は死ぬ。超が付く無法地帯だ。人間への危害を禁止してからは、弱小種が強襲されることも増えている。近隣に住む者たちにはオレが定期的に見回りをしているが、辺境地ではそうもいかない……。あっ! と、言ってもごく一部だし、対策も考えているから、心配いらないよ」
ギルバートは狼狽えつつも無理やり笑顔を取り繕う。宗一の感情の乱れを気にしてのことだろう。
確かに血生臭い話だが、魔族という者たちを想像しえない宗一にはまだ縁遠く感じていた。勿論、そんな内紛が起きているのなら、やめさせなければならないが。
宗一は「よっこらせ」の掛け声とともに立ち上がる。
「何を成すにせよ、この目で見なけりゃ始まらないな」
宗一を見上げているギルバートとアインハルトを置き去りに、部屋の外へと通じる扉に向かった。
「ソウイチ、待って! うわ!」
慌てて立ち上がったギルバートはすぐさま自身の脚を抱えてしゃがみ込んだ。どうやら脚が痺れてしまったようだ。同じくして、アインハルトは四つん這いになりながらもゆっくり宗一の元へ進まんとしていた。
宗一が扉の前まで行くと、名無しの執事に声をかけられる。
「ソウイチ様、城の外は大変危険です。どうか魔王様が参られるまで、お待ちください」
そう言って、名無しの執事は床に這い蹲っている魔王ギルバートに視線を向けた。産まれたての鹿が二頭、よたよたとしているのを見て、名無しの執事はくくっと忍び笑いを零す。
その髪色や金色の瞳の人間を見たことはないものの、この悪魔族の青年は、姿かたちは人間そのものだし、まぬけな主を小ばかにするような反応も人となんら違いはない。
「君、その髪色は生まれ持ってのものかい?」
宗一は名無しの執事に尋ねた。
砕けた表情を見せていた彼は姿勢を正し、返答した。
「左様でございます。変更することも可能ですが、本来はこの色を主としております」
「よし」と宗一は片手で拳作り、もう一方の掌にぽんと打ち付けた。「君は浅葱だな。アサギ君と呼んでもいいかい?」
そう言うと、名無しの執事はその金色の瞳を一層輝かせて法悦の笑みを浮かべた。
「ア、サ、ギ。アサギ。ああ、なんて麗しい音の響き!」
「気に入ってくれたのかい?」
「ええ! もちろんです! 有難うございます。ソウイチ様より賜りましたこの名を大切に致します」
名無しの執事改め、アサギは深々と礼をした。
宗一が不便だからと勝手に付けた名前だったが、こんなに喜んでもらえるとなると宗一自身も嬉しいものだ。
脚の痺れは治まったのか、ギルバートはいつの間にか宗一の傍に来ていた。
ギルバートは宗一の両肩をしっかりと掴むと、宗一を見下ろして問う。
「アサギ? それ、どういう意味? 日本人は名前に意味を持たせるんでしょ」
ギルバートの表情が少し曇って見えた。怒気を含んでいるのか、肩を掴む手に力が入っている。
だが、宗一はギルバートの苛立ちなど気にもならない。それよりも、よくぞ聞いてくれた、と心を躍らせていた。
「髪の色。こういう緑がかった薄青を浅葱色というんだ。浅葱色のだんだらを知っとるかい?」
「ダン、ダラ?」
「新撰組の羽織だよ」
宗一の返答にギルバートは手を広げて好奇心に瞳を輝かせる。
「オー! シンセングミ! サムライだ!」
「うん、侍。良く知っとるね。僕は時代小説が好きでね。木場京太郎の本は必ず読んだものだよ」
「誰それ、知らない。でもサムライとニンジャは知ってる!」
身振り手振りを大きく、興奮した様子で侍や忍者のアニメの内容を熱弁しているギルバート。
宗一の耳には大して入ってこない。
それよりも、愛読していた木場京太郎の著書をいくつか思い出していた。ゴルフ仲間の大隈君(81歳)とはゴルフ練習の合間にこの作家についてよく話し合ったものである。彼とは意見が食い違うこともあったが、とても充実した時間だった。今頃は時代小説を読みふけっているのだろう、と思いを馳せる。
いつかまた、同じように穏やかなひと時を楽しめるだろうか。その時、やはり青い瞳の彼は傍にいるのだろうか。
ふと、宗一はギルバートを見た。
金色の髪と青い瞳。生まれも育ちも違う。文化や思想も違う。だが、ギルバートの見据える未来にそんな瞬間があるのか、戦争を回避し平和な世を創らんと動きだした彼の行く末を見届けたい、そう願っても許されるだろうか。
淡い期待を抱いた宗一の顔は、自然と綻んでいた。
宗一の願いを聞き入れたギルバートとアインハルト、そして当の本人である宗一を含む三人の男たちは、床に座り込んだまま、国交正常化交渉に向けての意見交換を始めていた。
「武力に頼らず、というのは既に手遅れだな。お前の存在そのものが脅威なのだから」
腕組みをしたアインハルトは、ちらりとギルバートに視線を送って言った。
その意見にギルバートは同意したが、額を押さえながらかぶりを振る。
「そうだな。勇者と魔王はこの世界において、二大勢力だ。それを統合したオレは、今や世界最強。まさに脅威……」
そう言いつつも、その表情はどこかにやけている。嘆いているのか、誇っているのか、少々呆れる。
宗一は諫めるように咳払いをしてから発言する。
「君が脅威とされるのなら、こちらの優位性をおっぴろげないことが肝要。それでも友好を妨げるだろうなあ」
「慎重を期するに越したことはないでしょう」とアインハルト。「ですが、そう悲観することもございません。勇者としてのギルバートは国民の支持が厚かったことから、未だに好意的な者もおります」
「ワオ!」
ギルバートが浮かれた声を上げる。
それを聞いて、アインハルトはばつが悪そうに顔を顰めた。
「その発言、ヴァールグレーン王国第三騎士団団長の言葉として受け取るぞ?」と皮肉めいた笑みを浮かべるギルバート。「ついでだから、そろそろ立場をはっきりさせてはどうだ、アインハルト・リーゼンフェルト騎士団長殿。貴殿がこの会議に参加するということは、ヴァールグレーン王国への背信ではないか?」
ギルバートは口調を改めた。
仰々しく芝居がかった物言いは魔王としての発言ということなのか、と宗一は思う。
問われたアインハルトは、小さく溜息を吐いた。そして、凛とした表情をギルバートへ向けて言った。
「発言は撤回しない。他意もない。そのまま受け取るがいい。そして、私の立場については、昨夜、通達があり、我が王より外交使節の任を拝命している」今度は大きな溜息を吐いて自嘲的な笑みを零した。「当初はソーイチ様を守護し、連れ帰ることだけが主命でしたが、事情が変わりました」
食事の前にアインハルトが悩みを抱えていると明かしていたのは、この事だったのだろうか。出張の予定が出向になってしまったようなものだ。宮使えは辛いよな、と宗一は同情した。
思案していると、ふと、アインハルトの視線に気づく。赤い宝石のような瞳とかち合い、アインハルトは優美な笑みを見せて言った。
「ですが、ソーイチ様を諦めた訳ではございませんので」
宗一の肝が冷えた。
「やめろ。ソウイチの感情を乱すな」
苛立った様子のギルバートが割って入った。
宗一の感情は大して乱れていないが、ギルバートは過敏に反発した。
これは少し前にアインハルトから言われた言葉を、そっくり返したかったのだ、と宗一は推測する。
その推測は正しかったようで、ギルバートはしてやったりと口角を吊り上げている。
ギルバート青年は時折、こうして子供っぽいことを平然とする節がある。大の大人がくだらないと呆れもするが、どこか彼ならば仕方がないと許容してしまう。
だが、甘やかしているとろくなもんにならない。時には律するべきだ、と宗一は気を引き締めた。
「話を戻そうか」と宗一は仕切り直した。「王様とやらが外交と言ったのなら、国として認められているということかい?」
「仰る通りです。本来であれば認められるはずもない事ですが、陛下は未だ勇者を支持するお一人なのです」
快活に笑い、ふんぞり返るギルバートに対し、アインハルトは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「政治というのは、根回しが大事なんだよ、アインハルト君」
「何が根回しだ。この城の有様はなんだ? その根回しの効果がこれか? 陛下が国とお認めになったのは、貴様に期待されてのことだ。陛下を失望させるな。貴様の手腕で我が国の政治屋どもを黙らせてみせろ」
アインハルトは厳しい姿勢だった。
この城の有様、というのは何を指してのことかはわからないが、その口振りだと、相手国は一枚岩ではないようだ。
それに、王様に期待されているとあっては、気概に満ちるというもの。さぞや、意気込んでいるのだろうと思いギルバートの様子を伺う。
しかし、ギルバートはアインハルトの忠告など気にも留めていないのか、また何やら考え込んでいた。
「うーん。やっぱり食糧難に付け入るか……」
ギルバートは剃り残した髭を探るように自身の顎を撫でながら言った。やはり既に次にするべきことを考えていた。
宗一は独り言のような呟きに質問する。
「食糧支援か、産業を興すかい?」
「ああ。その両方を攻める。我が国は広大な土地に豊富な資源。人からすれば宝の山だけど、魔族にとっては価値を見出す者は少ない」
「魔族間の抗争も増えていると聞いたが?」
そうアインハルトはギルバートに問いかける。
魔族というのはいまいちわからない。人種のようなものだろうか? 宗一に知る魔族は名無しの執事のみだ。
「魔族というのは、彼のような子かい?」
宗一は部屋の隅に控えている名無しの執事を見ながら聞いた。緑がかった水色の髪の青年だ。宗一に穏やかな微笑みを向けている。
「そうだ。彼は姿を人に寄せてるけどね。魔族といっても、種族は様々だ。そして弱肉強食の世界。強い者が生き、弱い者は死ぬ。超が付く無法地帯だ。人間への危害を禁止してからは、弱小種が強襲されることも増えている。近隣に住む者たちにはオレが定期的に見回りをしているが、辺境地ではそうもいかない……。あっ! と、言ってもごく一部だし、対策も考えているから、心配いらないよ」
ギルバートは狼狽えつつも無理やり笑顔を取り繕う。宗一の感情の乱れを気にしてのことだろう。
確かに血生臭い話だが、魔族という者たちを想像しえない宗一にはまだ縁遠く感じていた。勿論、そんな内紛が起きているのなら、やめさせなければならないが。
宗一は「よっこらせ」の掛け声とともに立ち上がる。
「何を成すにせよ、この目で見なけりゃ始まらないな」
宗一を見上げているギルバートとアインハルトを置き去りに、部屋の外へと通じる扉に向かった。
「ソウイチ、待って! うわ!」
慌てて立ち上がったギルバートはすぐさま自身の脚を抱えてしゃがみ込んだ。どうやら脚が痺れてしまったようだ。同じくして、アインハルトは四つん這いになりながらもゆっくり宗一の元へ進まんとしていた。
宗一が扉の前まで行くと、名無しの執事に声をかけられる。
「ソウイチ様、城の外は大変危険です。どうか魔王様が参られるまで、お待ちください」
そう言って、名無しの執事は床に這い蹲っている魔王ギルバートに視線を向けた。産まれたての鹿が二頭、よたよたとしているのを見て、名無しの執事はくくっと忍び笑いを零す。
その髪色や金色の瞳の人間を見たことはないものの、この悪魔族の青年は、姿かたちは人間そのものだし、まぬけな主を小ばかにするような反応も人となんら違いはない。
「君、その髪色は生まれ持ってのものかい?」
宗一は名無しの執事に尋ねた。
砕けた表情を見せていた彼は姿勢を正し、返答した。
「左様でございます。変更することも可能ですが、本来はこの色を主としております」
「よし」と宗一は片手で拳作り、もう一方の掌にぽんと打ち付けた。「君は浅葱だな。アサギ君と呼んでもいいかい?」
そう言うと、名無しの執事はその金色の瞳を一層輝かせて法悦の笑みを浮かべた。
「ア、サ、ギ。アサギ。ああ、なんて麗しい音の響き!」
「気に入ってくれたのかい?」
「ええ! もちろんです! 有難うございます。ソウイチ様より賜りましたこの名を大切に致します」
名無しの執事改め、アサギは深々と礼をした。
宗一が不便だからと勝手に付けた名前だったが、こんなに喜んでもらえるとなると宗一自身も嬉しいものだ。
脚の痺れは治まったのか、ギルバートはいつの間にか宗一の傍に来ていた。
ギルバートは宗一の両肩をしっかりと掴むと、宗一を見下ろして問う。
「アサギ? それ、どういう意味? 日本人は名前に意味を持たせるんでしょ」
ギルバートの表情が少し曇って見えた。怒気を含んでいるのか、肩を掴む手に力が入っている。
だが、宗一はギルバートの苛立ちなど気にもならない。それよりも、よくぞ聞いてくれた、と心を躍らせていた。
「髪の色。こういう緑がかった薄青を浅葱色というんだ。浅葱色のだんだらを知っとるかい?」
「ダン、ダラ?」
「新撰組の羽織だよ」
宗一の返答にギルバートは手を広げて好奇心に瞳を輝かせる。
「オー! シンセングミ! サムライだ!」
「うん、侍。良く知っとるね。僕は時代小説が好きでね。木場京太郎の本は必ず読んだものだよ」
「誰それ、知らない。でもサムライとニンジャは知ってる!」
身振り手振りを大きく、興奮した様子で侍や忍者のアニメの内容を熱弁しているギルバート。
宗一の耳には大して入ってこない。
それよりも、愛読していた木場京太郎の著書をいくつか思い出していた。ゴルフ仲間の大隈君(81歳)とはゴルフ練習の合間にこの作家についてよく話し合ったものである。彼とは意見が食い違うこともあったが、とても充実した時間だった。今頃は時代小説を読みふけっているのだろう、と思いを馳せる。
いつかまた、同じように穏やかなひと時を楽しめるだろうか。その時、やはり青い瞳の彼は傍にいるのだろうか。
ふと、宗一はギルバートを見た。
金色の髪と青い瞳。生まれも育ちも違う。文化や思想も違う。だが、ギルバートの見据える未来にそんな瞬間があるのか、戦争を回避し平和な世を創らんと動きだした彼の行く末を見届けたい、そう願っても許されるだろうか。
淡い期待を抱いた宗一の顔は、自然と綻んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てていたら、いつの間にか溺愛されているみたい
カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。
ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。
それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。
……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ!
そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。
でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。
時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。
こちらは2021年に創作したものを掲載しています。
初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください
素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。
@Nd1KsPcwB6l90ko
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
目が覚めたら叔父さんの妻になっていた!?
白透
BL
交通事故で命を落とした、ごく普通の自称な医学生・早坂悠斗。
次に目が覚めたとき、鏡に映っていたのは自分ではなく、血の繋がらない叔父・鷹宮と「冷え切った政略結婚」をしていたはずの、超絶美形な「男妻」・蓮の姿だった!?
中身はガサツな医学生、見た目は儚げな美人。
「俺はバリバリのノンケだ!」と言い張る悠斗だったが、同居する鷹宮は、隙あらば鋭い眼差しと腹黒い微笑みで、最短最速の距離まで詰め寄ってくる。
女の子と手を繋ぐのにも3ヶ月かかる超・天然純情な悠斗は、叔父さんの無自覚な猛攻にいつまで耐えられるのか?
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない
水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。
終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。
自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。
半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。
「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」
孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。
湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。
読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる