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1章 私の旦那様は骸骨です
私の旦那様は骸骨です あとがき
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旦那様は骸骨ですを読んでくださった方有難うございました。
ここではこのお話の出来た過程と、アーネスト目線での本作との絡みのお話です。
長いです。アーネストのイメージが変わってしまう可能性があり載せるか迷いました。
知りたくないと言う人は未読でよろしくお願いします。
以下ネタバレとなります。1話未読の方はご注意ください。
【旦那様は骸骨です ができるまでの過程】
最初は「骸骨と普通の女の子」の恋愛を書く予定でした。骸骨の男性が乙女の口づけにより元の姿に戻る。という純な恋愛をかきたいなぁと。
ですが、骸骨相手に、普通の女の子が怖がらず愛を育むというのは短編では無理があり、どこか斜め上に突っ切ってないと終わらないというか、終われない。
ということでメアリーの設定を変えることに。
ただそのネタを冒頭に持っていくとつまらないと思い、メアリー目線でのアーネストとのなれそめをかき、その後だんだんとメアリーが何者かわかってくるという話に持っていくことにしました。
結果、かなり変な女子になってしまいましたが、書いていて楽しかったです。
アーネストの設定は最初から変わっていません。骨という以外はスペックは良い男性にしたかったので。(と思ったものの、けっこうアレな性格になってしまいましたが)
【アーネスト目線からのお話(けっこう端折ってます 童話風です)】
アーネストは14歳になったある日、禁呪を使い骨になってしまいました。
骨になるまで、彼の人生は誰もが羨むエリートコース。なんせ身分は侯爵、外見も美しく、黒魔術にも優れていたからです。その魔力は高く、魔族にも劣りません。名誉王子と称えられる赤髪の王子とも仲が良く、アーネストの人生は順調そのものでした。
そのため、どこかに驕りがあったのでしょう。黒魔術の中でも最も恐ろしい禁呪に手を出してしまったのです。
自分は優れているから大丈夫──という油断を悪魔は見逃しませんでした。
結果、骨となり……。
なんとか黒魔術を応用し命は留めたものの、依然のような美しい姿はもうありません。モテモテだったアーネストは、骨になったせいで多くの女性から畏怖の目で見られ、嫌われました。結果、アーネストはすっかり女性不信になってしまいます。
二年後、なんとか元に戻る方法をアーネストは見つけ出しましたが、それは『骸骨の姿を愛してくれる女性からの口づけ』という難易度の高いものでした。
しかも口づけされるまで、その事実を相手の女性に告げてはならないという縛りまであったのです。もし縛りに反してしまえば、相手の女性まで呪いがかかるという恐ろしいものでした。
アーネストそこで絶望します。そんな女性がいるわけがないと。
いっそのことすべてを忘れて生きようとアーネストは努力します。が、歩いたり話したりする度に鳴る骨の音が、彼の心を追い詰めます。
そのうちアーネストは笑わなくなり、ひたすら魔族との闘いに身を投じる事になりました。そんなアーネストを心配したのが、赤髪の王子でした。
王子はアーネストに
「お前の外見を全く知らない、辺境の男爵令嬢と見合いをしないか?」
という提案を持ち掛けます。
王子が言うには外見からではなく中身から見てもらい、そこから愛を育めばいいとのことでした。すっかり女性不審になっていたアーネストは速攻で断ります。侯爵という身分で女性に圧力をかける事にもなりかねず、なにより自分をみて怖がる女性を、これ以上目にしたくありませんでした。
ですが王子は巧にアーネストの良心をつつき、見合いをするよう迫ります。相手の女性が行き遅れであり、誰とも結婚できる見込みがない事、下に幼い弟と妹がいるのに、父親が善良すぎて野心もないため、没落寸前である事。アーネストが見合いを断れば、来月にでも没落だという事実を何度も何度も言ってきたのです。
しかたなく一度だけ女性に会う事をアーネストは王子と約束します。さっそくその女性の父親に会い、見合いを要求しにいきました。怖がらせないよう例の黒いローブをまとって。
とはいうものの顔は隠され、魔獣の毛などで体を誤魔化しているため、誰がみても変人にしかみえません。他の方法も考えましたが、綿や布だけでは体形が不自然になってしまい上手くいきませんでした。もともと気の進まない縁談であった為、断られてもいいかという半ば投げやりな気持ちもあり、そのまま男爵に会う事にしました。どうせ人間に近い姿で会おうと、そうでなかろうと男爵にとっては、侯爵に言われたからと、断腸の思いで娘の見合いに承諾するしかないからです。よってアーネストは男爵が少しでも嫌な反応を見せたら、なかった事にしようと思いました。没落せぬよう支援もすると言えば良心も痛まないで済みます。
ところが男爵は気味悪がるどころか大喜びでした。骨である事実も告げたのですが耳に入っておらず……。どうやら彼はアーネストの恰好を魔導士特有のコスチュームだと思いこんでしまったようです。
あまりにもすんなりいき、アーネストは拍子抜けしますが、どうせ破談になるだろうと覚悟を決めてメアリーに会いました。
だがどういうわけか、父親があれだと娘も同じなのか。メアリーはアーネストを怖がるどころか、暑くないか? と気遣い、血まみれで会いに行っても、お疲れ様と言ってきただけ。彼女の顔にはアーネストに対する畏怖などありません。
予想外の反応に、アーネストは骨になった日から初めて心が軽くなりました。口元が緩くなったのはいつぶりだったろう。次第にアーネストはこの女性でなくてはいけないと思うようになりました。たとえ自分を愛してくれなくてもいいから傍にいたいと。
ですが彼女の前で話せば、骨の音がなってしまいます。アーネストの女性不信は重症で、メアリーから怖がられる事を恐れ、骨である事実をどうしても言えませんでした。結果、頑なに口を閉ざし、プロポーズまで2m以上は離れて言うことになってしまいました。ちなみにアーネストはメアリーがプロポーズを承諾してくれるとは思っていませんでした。無理ならせめて友人になってほしいと、彼女との縁を切らない方法ばかり考えていました。
ところがメアリーの返事がOKだったので、アーネストの心は舞い上がります。
しかしよく考えてみるとメアリーは一度もアーネストを見て笑ってくれたことはありません。アーネストを怖がったりすることはないものの、心配そうな顔や、どうしてだろう? といった顔しか見た事がなかったのです。なのになぜ彼女が承諾してくれたのかとアーネストは悩みます。
そうか……没落したくないから必死なのかも。
そう思ったアーネストは、奇跡的に結婚できたものの、最後まで骨である事実が言えませんでした。もちろん初夜でも彼女を抱く気はありません。そもそも骨である自分が女性を抱く事なんてできないのです。
傍にいられるだけでいい。
アーネストは決心して寝室の扉を開けました。メアリーを怖がらせないよう、本日も完全防備での初夜です。
ところがメアリはーたとえどんな姿でもいいから、姿を見せて欲しいと言ってきたのです。
彼女の顔は真剣でした。その顔は恐怖を覚悟するものではなく、真実を知りたいと言った顔でした。しかも薄手の夜着といった艶やかな姿で言われ、アーネストの理性は吹っ飛びスっ転んでしまいます。
その瞬間に鳴る骨の音。突きつけられる現実と、人間が転ぶ音とは程遠い音にアーネストは焦ります。
ですがメアリーは驚くどころか、転んだが大丈夫か? といったような顔です。音を訝しむような様子すらありません。
その瞬間、アーネストは覚悟します。メアリーならきっとわかってくれると。
少しずつ見せるか全部見せるか、アーネストは悩みましたが、すべて一度で見せることにしました。
ちょっとずつ見せて、メアリーの表情が変わっていく様を見る勇気がなかったのと、勢いでもないとできなかったからという理由からです。
ですが、彼女はアーネストの姿をみて絶叫し、気絶してしまいます。その瞬間、アーネストは思いは全て砕け散ってしまいました。
(終わった……。)
アーネストは気を失ったメアリーに布団をかぶせると、黙ったまま寝室から出ていきます。その夜、アーネストは一睡もできませんでした。
翌朝、アーネストはメアリーを朝食に誘い、離縁を申し出る決心をします。彼女の家は没落寸前です。メアリーから断りたくても断れないはず。離縁しても支援は続けるので心配もいらないとも告げるつもりでした。
そしてわざとアーネストは骸骨のままメアリーに会う事しました。もう嘘をつく必要がないのと、この姿を見た彼女を見れば、あきらめが付くと思ったからです。
(どうしよう……無神経だったかな。朝食に誘ってしまったけど。食事なんか喉をとおらないだろうし……。そもそも食事を一緒にとってくれるだろうか。また気絶されたら……いや、余計な事は考えるな。そのほうが諦めが付くと決めたじゃないか)
ところが、メアリーはアーネストの誘いをすんなり受け、食卓につきました。食事も喉を通らないと思いきやがっつりと食べています。
アーネストを見た彼女は、昨夜のように怯える事なく、むしろアーネストの骨の音や動きを不思議そうに見ると言ったものでした。
そこでアーネストの決心が揺らいでしまいます。誰だって夜に骸骨など見せられたら驚くはず。もしかして今なら大丈夫なのではないかと淡い期待を抱いてしまったのです。
勇気をだしてアーネストは冬に咲く珍しい花を見に行かないか? と誘う事にしました。この花はアーネストが魔法で作った特別な花です。少しでもこの家に長くいて欲しい、楽しんでほしいと試行錯誤の末、季節を通じて様々な花が咲くようにアーネストが暇をみては作った庭でした。
ところが外は雪が積もっています。天気がいいとはいえ、外は寒いでしょう。骨になったアーネストは寒暖の感覚がわかりません。
念のため寒くはないかと、勇気を振り絞ってメアリーに尋ねてみたものの、彼女の反応は「別に……」といったそっけないもの。アーネストの心はバリバリに砕けてしまいます。しかも自分は骨だからわからなくて、と自虐ネタまで言ってしまいました。それでもなんとか話しを続けたくて、アーネストは庭の話題をメアリーにしてみます。
彼女は明らかに適当に相槌を打っていました。ですがアーネストを恐れているという風でもありません。
そこで勇気を振り絞って、庭を散策しないか? と誘ってみました。
どことなく上の空なものの、メアリーはすんなりと承諾したため、アーネストの心は舞い上がりました。
嬉しさのあまり頭蓋骨がガタガタとなりそうで、慌てて顔を両手で抑え喜びをかみしめました。
ところが、メアリーは本当に上の空だったようで、話を聞いていなかったのです。アーネストはがっかりしました。むしろ墓場にでも連れて行く気かといった顔までされ、すっかりしょげてしまいます。
やはり自分が怖いか? と尋ねるとメアリーは俯いたまま黙ってしまいました。
(あぁ、これで本当に終わりだ)
アーネストは今すぐにでも逃げ出したくなりました。ですがメアリーは恐ろしいアーネストと朝食をとってくれたのです。それにアーネストは昨夜驚かせた事をまだ謝ってもいません。ちゃんとお詫びとお礼を言って別れようとアーネストは決めました。
ところが謝った途端、メアリーが没落したくなかったのでと本心を明かします。やっぱりなと思う気持ちがありましたが、今までのアーネストの対応を考えれば仕方がありません。まともにデートや会話すらしていなかったからです。これではメアリーに自分を好きになってほしいと思う事が無理だとアーネストは思い直しました。その上、自分も人の事が言えません。メアリーの弱い立場を利用して結婚を申し込んだのですから。だからアーネストも正直に、最初にメアリーを選んだ理由を話しました。嫌われる事を覚悟の上で。
(最低の男だと思っただろうな。実際、そのとおりなのだから仕方がない)
この後は、結婚はなかったことにして欲しいか、よくても支援はして欲しいので結婚は仕方なくする、といった話になるだろうとアーネストは思っていました。もしメアリーがその類の話をすれば、支援は続けるから離縁してくれてかまわないと言うつもりで……アーネストはメアリーからの終焉の言葉を待ちます。
ところがメアリーは、なぜ結婚を急いでいたのか? という予想外な事を聞いてきました。アーネストを見る彼女の目には畏怖はなく、だたただ理由を知りたいと言った顔です。
ですが本当の事は話せません。話せばメアリーにまで呪いがかかってしまいます。言える事はメアリーだから妻に迎えたいという気持ちだけ。
しかし当然の事ながらメアリーは、納得しません。彼女はなぜ自分が選ばれたかわからないと言った顔で、アーネストを見つめてきます。
そこでアーネストはメアリーを好きになったきっかけを話すことにしました。嫌がられないだろうか? と最初こそドキマギしてたものの、メアリーが真剣に耳を傾けてくれることに安心したアーネストは、次第にメアリーを好きになった理由を饒舌に語りだします。
けれどメアリーが出した結論は 『そこらの令嬢と違い、可笑しくて驚かないから』というもの。そうじゃないとアーネストは叫びたくなりましたが、アーネスト自身も上手く言葉にできません。好きすぎてわけがわからないなど引かれそうで言えず、結果、斜め上が素敵という、好きな女性に対して言うには失礼すぎる形になってしまいました。
でもさすがメアリーと言うべきか、アーネストの言葉は完全にスルーされ、骸骨なら骸骨だと言って欲しかったと叱られます。おまけに、鍛えていれば、気絶しなかったといい、骨格標本まで買って欲しいと言われてしまいました。
あっけにとられたアーネストは、今まで思い詰めていた事は何だったんだろうと、思いっきり笑ってしまいます。メアリーにとって、アーネストが骸骨である事は問題ではなく、骨なアーネストを見ても驚かないようにすることが大事だと言われているように思ったからです。
すっかり肩の力が抜けたアーネストは、今まで何故、近くで話せなかったのか、そっけなくなってしまったのかを語りだします。そして自分で言ってて虚しくなりしょんぼりとしてしまいました。
そんなアーネストを見て、メアリーがクスクスと笑います。ほんの一瞬でしたがアーネストは彼女の笑顔をはじめてみて感動しました。
(こんな自分でも微笑んてくれる人がいる)
アーネストはこの時、メアリーを笑わせるのは自分でありたいと思うようになりました。メアリーがアーネストに恋という希望の光を与えてくれたように、アーネスト自身も彼女の光でありたいと。
そこで二度目のプロポーズに踏み切ったものの……メアリーは考え事をして聞いておらず。笑顔の教本話になる始末。ちょっぴりがっかりしたものの、最初のように悲しくはありません。むしろメアリーらしいなぁという愛しさであふれてしまいました。
そしてもう一度、彼女を庭へと誘い手を伸ばします。言葉や傍にいる事はよくても、触れてくれるだろかとアーネストは不安になりましたが、メアリーはその骨を優しく握り返してくれました。
★★★
二年後、メアリーはアーネスト呪いを解いた聖女と称えられます。彼女はアーネストを困らせつつも、いつも笑わせてくれました。メアリーもアーネストの可愛い部分を(主に骨)みては微笑み、アーネストが人の姿に戻った後も、色々と問題はあったものの、二人は仲睦まじく過ごしたそうです。
メアリーの功績はそれだけではありません。魔族との停戦という凄い功績を残しました。
もちろんメアリーは知将でもなく強くもありません。魔王を説得し、会場を用意したのは赤髪王子で、メアリーはただ用意された椅子に座り、魔族の外交役と話しをしただけなのですが。
結果、予想斜め上いく言葉と行動が魔王軍騎士団長の心を掴んでしまったのです。
王子がどうやって魔王を説得したのか、騎士団長とは何があったのか?
それはまた機会がありましたら。
FIN
ここではこのお話の出来た過程と、アーネスト目線での本作との絡みのお話です。
長いです。アーネストのイメージが変わってしまう可能性があり載せるか迷いました。
知りたくないと言う人は未読でよろしくお願いします。
以下ネタバレとなります。1話未読の方はご注意ください。
【旦那様は骸骨です ができるまでの過程】
最初は「骸骨と普通の女の子」の恋愛を書く予定でした。骸骨の男性が乙女の口づけにより元の姿に戻る。という純な恋愛をかきたいなぁと。
ですが、骸骨相手に、普通の女の子が怖がらず愛を育むというのは短編では無理があり、どこか斜め上に突っ切ってないと終わらないというか、終われない。
ということでメアリーの設定を変えることに。
ただそのネタを冒頭に持っていくとつまらないと思い、メアリー目線でのアーネストとのなれそめをかき、その後だんだんとメアリーが何者かわかってくるという話に持っていくことにしました。
結果、かなり変な女子になってしまいましたが、書いていて楽しかったです。
アーネストの設定は最初から変わっていません。骨という以外はスペックは良い男性にしたかったので。(と思ったものの、けっこうアレな性格になってしまいましたが)
【アーネスト目線からのお話(けっこう端折ってます 童話風です)】
アーネストは14歳になったある日、禁呪を使い骨になってしまいました。
骨になるまで、彼の人生は誰もが羨むエリートコース。なんせ身分は侯爵、外見も美しく、黒魔術にも優れていたからです。その魔力は高く、魔族にも劣りません。名誉王子と称えられる赤髪の王子とも仲が良く、アーネストの人生は順調そのものでした。
そのため、どこかに驕りがあったのでしょう。黒魔術の中でも最も恐ろしい禁呪に手を出してしまったのです。
自分は優れているから大丈夫──という油断を悪魔は見逃しませんでした。
結果、骨となり……。
なんとか黒魔術を応用し命は留めたものの、依然のような美しい姿はもうありません。モテモテだったアーネストは、骨になったせいで多くの女性から畏怖の目で見られ、嫌われました。結果、アーネストはすっかり女性不信になってしまいます。
二年後、なんとか元に戻る方法をアーネストは見つけ出しましたが、それは『骸骨の姿を愛してくれる女性からの口づけ』という難易度の高いものでした。
しかも口づけされるまで、その事実を相手の女性に告げてはならないという縛りまであったのです。もし縛りに反してしまえば、相手の女性まで呪いがかかるという恐ろしいものでした。
アーネストそこで絶望します。そんな女性がいるわけがないと。
いっそのことすべてを忘れて生きようとアーネストは努力します。が、歩いたり話したりする度に鳴る骨の音が、彼の心を追い詰めます。
そのうちアーネストは笑わなくなり、ひたすら魔族との闘いに身を投じる事になりました。そんなアーネストを心配したのが、赤髪の王子でした。
王子はアーネストに
「お前の外見を全く知らない、辺境の男爵令嬢と見合いをしないか?」
という提案を持ち掛けます。
王子が言うには外見からではなく中身から見てもらい、そこから愛を育めばいいとのことでした。すっかり女性不審になっていたアーネストは速攻で断ります。侯爵という身分で女性に圧力をかける事にもなりかねず、なにより自分をみて怖がる女性を、これ以上目にしたくありませんでした。
ですが王子は巧にアーネストの良心をつつき、見合いをするよう迫ります。相手の女性が行き遅れであり、誰とも結婚できる見込みがない事、下に幼い弟と妹がいるのに、父親が善良すぎて野心もないため、没落寸前である事。アーネストが見合いを断れば、来月にでも没落だという事実を何度も何度も言ってきたのです。
しかたなく一度だけ女性に会う事をアーネストは王子と約束します。さっそくその女性の父親に会い、見合いを要求しにいきました。怖がらせないよう例の黒いローブをまとって。
とはいうものの顔は隠され、魔獣の毛などで体を誤魔化しているため、誰がみても変人にしかみえません。他の方法も考えましたが、綿や布だけでは体形が不自然になってしまい上手くいきませんでした。もともと気の進まない縁談であった為、断られてもいいかという半ば投げやりな気持ちもあり、そのまま男爵に会う事にしました。どうせ人間に近い姿で会おうと、そうでなかろうと男爵にとっては、侯爵に言われたからと、断腸の思いで娘の見合いに承諾するしかないからです。よってアーネストは男爵が少しでも嫌な反応を見せたら、なかった事にしようと思いました。没落せぬよう支援もすると言えば良心も痛まないで済みます。
ところが男爵は気味悪がるどころか大喜びでした。骨である事実も告げたのですが耳に入っておらず……。どうやら彼はアーネストの恰好を魔導士特有のコスチュームだと思いこんでしまったようです。
あまりにもすんなりいき、アーネストは拍子抜けしますが、どうせ破談になるだろうと覚悟を決めてメアリーに会いました。
だがどういうわけか、父親があれだと娘も同じなのか。メアリーはアーネストを怖がるどころか、暑くないか? と気遣い、血まみれで会いに行っても、お疲れ様と言ってきただけ。彼女の顔にはアーネストに対する畏怖などありません。
予想外の反応に、アーネストは骨になった日から初めて心が軽くなりました。口元が緩くなったのはいつぶりだったろう。次第にアーネストはこの女性でなくてはいけないと思うようになりました。たとえ自分を愛してくれなくてもいいから傍にいたいと。
ですが彼女の前で話せば、骨の音がなってしまいます。アーネストの女性不信は重症で、メアリーから怖がられる事を恐れ、骨である事実をどうしても言えませんでした。結果、頑なに口を閉ざし、プロポーズまで2m以上は離れて言うことになってしまいました。ちなみにアーネストはメアリーがプロポーズを承諾してくれるとは思っていませんでした。無理ならせめて友人になってほしいと、彼女との縁を切らない方法ばかり考えていました。
ところがメアリーの返事がOKだったので、アーネストの心は舞い上がります。
しかしよく考えてみるとメアリーは一度もアーネストを見て笑ってくれたことはありません。アーネストを怖がったりすることはないものの、心配そうな顔や、どうしてだろう? といった顔しか見た事がなかったのです。なのになぜ彼女が承諾してくれたのかとアーネストは悩みます。
そうか……没落したくないから必死なのかも。
そう思ったアーネストは、奇跡的に結婚できたものの、最後まで骨である事実が言えませんでした。もちろん初夜でも彼女を抱く気はありません。そもそも骨である自分が女性を抱く事なんてできないのです。
傍にいられるだけでいい。
アーネストは決心して寝室の扉を開けました。メアリーを怖がらせないよう、本日も完全防備での初夜です。
ところがメアリはーたとえどんな姿でもいいから、姿を見せて欲しいと言ってきたのです。
彼女の顔は真剣でした。その顔は恐怖を覚悟するものではなく、真実を知りたいと言った顔でした。しかも薄手の夜着といった艶やかな姿で言われ、アーネストの理性は吹っ飛びスっ転んでしまいます。
その瞬間に鳴る骨の音。突きつけられる現実と、人間が転ぶ音とは程遠い音にアーネストは焦ります。
ですがメアリーは驚くどころか、転んだが大丈夫か? といったような顔です。音を訝しむような様子すらありません。
その瞬間、アーネストは覚悟します。メアリーならきっとわかってくれると。
少しずつ見せるか全部見せるか、アーネストは悩みましたが、すべて一度で見せることにしました。
ちょっとずつ見せて、メアリーの表情が変わっていく様を見る勇気がなかったのと、勢いでもないとできなかったからという理由からです。
ですが、彼女はアーネストの姿をみて絶叫し、気絶してしまいます。その瞬間、アーネストは思いは全て砕け散ってしまいました。
(終わった……。)
アーネストは気を失ったメアリーに布団をかぶせると、黙ったまま寝室から出ていきます。その夜、アーネストは一睡もできませんでした。
翌朝、アーネストはメアリーを朝食に誘い、離縁を申し出る決心をします。彼女の家は没落寸前です。メアリーから断りたくても断れないはず。離縁しても支援は続けるので心配もいらないとも告げるつもりでした。
そしてわざとアーネストは骸骨のままメアリーに会う事しました。もう嘘をつく必要がないのと、この姿を見た彼女を見れば、あきらめが付くと思ったからです。
(どうしよう……無神経だったかな。朝食に誘ってしまったけど。食事なんか喉をとおらないだろうし……。そもそも食事を一緒にとってくれるだろうか。また気絶されたら……いや、余計な事は考えるな。そのほうが諦めが付くと決めたじゃないか)
ところが、メアリーはアーネストの誘いをすんなり受け、食卓につきました。食事も喉を通らないと思いきやがっつりと食べています。
アーネストを見た彼女は、昨夜のように怯える事なく、むしろアーネストの骨の音や動きを不思議そうに見ると言ったものでした。
そこでアーネストの決心が揺らいでしまいます。誰だって夜に骸骨など見せられたら驚くはず。もしかして今なら大丈夫なのではないかと淡い期待を抱いてしまったのです。
勇気をだしてアーネストは冬に咲く珍しい花を見に行かないか? と誘う事にしました。この花はアーネストが魔法で作った特別な花です。少しでもこの家に長くいて欲しい、楽しんでほしいと試行錯誤の末、季節を通じて様々な花が咲くようにアーネストが暇をみては作った庭でした。
ところが外は雪が積もっています。天気がいいとはいえ、外は寒いでしょう。骨になったアーネストは寒暖の感覚がわかりません。
念のため寒くはないかと、勇気を振り絞ってメアリーに尋ねてみたものの、彼女の反応は「別に……」といったそっけないもの。アーネストの心はバリバリに砕けてしまいます。しかも自分は骨だからわからなくて、と自虐ネタまで言ってしまいました。それでもなんとか話しを続けたくて、アーネストは庭の話題をメアリーにしてみます。
彼女は明らかに適当に相槌を打っていました。ですがアーネストを恐れているという風でもありません。
そこで勇気を振り絞って、庭を散策しないか? と誘ってみました。
どことなく上の空なものの、メアリーはすんなりと承諾したため、アーネストの心は舞い上がりました。
嬉しさのあまり頭蓋骨がガタガタとなりそうで、慌てて顔を両手で抑え喜びをかみしめました。
ところが、メアリーは本当に上の空だったようで、話を聞いていなかったのです。アーネストはがっかりしました。むしろ墓場にでも連れて行く気かといった顔までされ、すっかりしょげてしまいます。
やはり自分が怖いか? と尋ねるとメアリーは俯いたまま黙ってしまいました。
(あぁ、これで本当に終わりだ)
アーネストは今すぐにでも逃げ出したくなりました。ですがメアリーは恐ろしいアーネストと朝食をとってくれたのです。それにアーネストは昨夜驚かせた事をまだ謝ってもいません。ちゃんとお詫びとお礼を言って別れようとアーネストは決めました。
ところが謝った途端、メアリーが没落したくなかったのでと本心を明かします。やっぱりなと思う気持ちがありましたが、今までのアーネストの対応を考えれば仕方がありません。まともにデートや会話すらしていなかったからです。これではメアリーに自分を好きになってほしいと思う事が無理だとアーネストは思い直しました。その上、自分も人の事が言えません。メアリーの弱い立場を利用して結婚を申し込んだのですから。だからアーネストも正直に、最初にメアリーを選んだ理由を話しました。嫌われる事を覚悟の上で。
(最低の男だと思っただろうな。実際、そのとおりなのだから仕方がない)
この後は、結婚はなかったことにして欲しいか、よくても支援はして欲しいので結婚は仕方なくする、といった話になるだろうとアーネストは思っていました。もしメアリーがその類の話をすれば、支援は続けるから離縁してくれてかまわないと言うつもりで……アーネストはメアリーからの終焉の言葉を待ちます。
ところがメアリーは、なぜ結婚を急いでいたのか? という予想外な事を聞いてきました。アーネストを見る彼女の目には畏怖はなく、だたただ理由を知りたいと言った顔です。
ですが本当の事は話せません。話せばメアリーにまで呪いがかかってしまいます。言える事はメアリーだから妻に迎えたいという気持ちだけ。
しかし当然の事ながらメアリーは、納得しません。彼女はなぜ自分が選ばれたかわからないと言った顔で、アーネストを見つめてきます。
そこでアーネストはメアリーを好きになったきっかけを話すことにしました。嫌がられないだろうか? と最初こそドキマギしてたものの、メアリーが真剣に耳を傾けてくれることに安心したアーネストは、次第にメアリーを好きになった理由を饒舌に語りだします。
けれどメアリーが出した結論は 『そこらの令嬢と違い、可笑しくて驚かないから』というもの。そうじゃないとアーネストは叫びたくなりましたが、アーネスト自身も上手く言葉にできません。好きすぎてわけがわからないなど引かれそうで言えず、結果、斜め上が素敵という、好きな女性に対して言うには失礼すぎる形になってしまいました。
でもさすがメアリーと言うべきか、アーネストの言葉は完全にスルーされ、骸骨なら骸骨だと言って欲しかったと叱られます。おまけに、鍛えていれば、気絶しなかったといい、骨格標本まで買って欲しいと言われてしまいました。
あっけにとられたアーネストは、今まで思い詰めていた事は何だったんだろうと、思いっきり笑ってしまいます。メアリーにとって、アーネストが骸骨である事は問題ではなく、骨なアーネストを見ても驚かないようにすることが大事だと言われているように思ったからです。
すっかり肩の力が抜けたアーネストは、今まで何故、近くで話せなかったのか、そっけなくなってしまったのかを語りだします。そして自分で言ってて虚しくなりしょんぼりとしてしまいました。
そんなアーネストを見て、メアリーがクスクスと笑います。ほんの一瞬でしたがアーネストは彼女の笑顔をはじめてみて感動しました。
(こんな自分でも微笑んてくれる人がいる)
アーネストはこの時、メアリーを笑わせるのは自分でありたいと思うようになりました。メアリーがアーネストに恋という希望の光を与えてくれたように、アーネスト自身も彼女の光でありたいと。
そこで二度目のプロポーズに踏み切ったものの……メアリーは考え事をして聞いておらず。笑顔の教本話になる始末。ちょっぴりがっかりしたものの、最初のように悲しくはありません。むしろメアリーらしいなぁという愛しさであふれてしまいました。
そしてもう一度、彼女を庭へと誘い手を伸ばします。言葉や傍にいる事はよくても、触れてくれるだろかとアーネストは不安になりましたが、メアリーはその骨を優しく握り返してくれました。
★★★
二年後、メアリーはアーネスト呪いを解いた聖女と称えられます。彼女はアーネストを困らせつつも、いつも笑わせてくれました。メアリーもアーネストの可愛い部分を(主に骨)みては微笑み、アーネストが人の姿に戻った後も、色々と問題はあったものの、二人は仲睦まじく過ごしたそうです。
メアリーの功績はそれだけではありません。魔族との停戦という凄い功績を残しました。
もちろんメアリーは知将でもなく強くもありません。魔王を説得し、会場を用意したのは赤髪王子で、メアリーはただ用意された椅子に座り、魔族の外交役と話しをしただけなのですが。
結果、予想斜め上いく言葉と行動が魔王軍騎士団長の心を掴んでしまったのです。
王子がどうやって魔王を説得したのか、騎士団長とは何があったのか?
それはまた機会がありましたら。
FIN
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けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
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