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与えられたスキルは一つ

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 突然、異世界の孤島に飛ばされ、俺達は約一名を除き絶望した。なぜ異世界とわかったか、それは太陽だ、二つもある。おかげで死ぬほど暑い。

「皆の者!海だ。海水浴しようじゃないか!」

 無道……お前のプラス思考は、今とってもいらない。

「さっき、クジラサイズのサメがいたわよ」 

 勉子に言われ無道が固まった。さすがの無道もクジラサイズは勝てないようだ。

「それより竜退治、本当にするんですかぁ~。竜ってあの山の上で寝てるやつでしょ。クジラザメより勝ち目なさそうですよ~」

 きららさんが、暑苦しそうに制服の胸元をはたきながら言う。汗ばんだ白磁の肌が見え、俺は慌てて目をそらした。

「おやナナリン。なんの手紙を持ってるの?」

 おーい織田、いきなりなんだ。ナナリンと手紙ごっこするな。

 だが、織田は真面目に手紙を俺に寄越して来た。どうやら辰野からの手紙だったようだ。

『君たちに各々の個性を活かしたスキルを与えておく。スキル!●●っと唱えてごらん。辰野』

 手紙を呼んだ俺達は、辰野への殺意を払い、スキルを試してみた。各々のスキルがこれだ。

 勉子→スキル英単語。単語帳のスペルを唱えるとそれが具現化する。
 無道→スキルヤクドー。物体を伸縮させる能力。伸びたり縮んだりする。
 きらら→スキル竹刀。使い手が竹刀で無双できる。
 織田→スキルいくよナナリン→ナナリンがぎこちなく動く

 だが俺のスキルはわからなかった。だって俺には個性と言えるものがない。勉学も、運動も、執着するような物体もない。
 あぁ皆の視線が痛い。どうしようか。
 
「とにかく作戦をねるか」
 
 せめて班長らしくと俺はリーダーシップをとる事にした。
 
「作戦もなにも、竜にデスと言えばいいじゃない」

 が、勉子の一言で片付いてしまった。よく考えればその通りだ。

「じゃあ、あたしの竹刀持って行ってください。デスの効果範囲は限らてるかもだし~」
「いや、それは筋肉担当の俺の役目だ!! 竜の目を逸らすぐらいはできるはず。勉子はマッスルマックスと唱えてくれ!!」 
「死んでも言いたくない……けどしかたないわね」
「僕は~ナナリンと応援してます」

 
 ということで竜退治が始まった。
 
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