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第1章 「お前の望みは何だ?」
第10話「試験結果」
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発着場に着いた頃には夕焼け空は夜空に変わりつつあり日も山に隠れかけていた。発着場の施設は崖の傍にあり、円形の発着場は崖からせり出して造られている。施設の近くにはいつの間にか先回りしていたのかアルフがいた。
「ようやく着きましたか」
「あの、レトさん達は悪くないのです。途中で試験とは違う人達が襲ってきましてそのせいで」
「ライトさん。遅くなったのは事実ですから気遣いはいりません」
「襲ってきた者達については後で詳しく聞くとして荷物の方を確認しましょうか」
そう言われてゲズル達は弁当を丁寧に卸していく。アルフが弁当の1つを確認すると弁当は崩れも無く無事なようだ。
「うん。無事に運べています。どうやらこの試験の本当の意味を理解していたようですね」
アルフの満足そうな言葉にゲズルとグレイスは頷く。
「日暮れまでというのは仕事を怠らない為の目安。運送組合にとって大事な事は荷物を無事に届け先に届ける事。荷物を大事にするかを見定めていたのですね」
試験前にアルフは日暮れまでの到着を出来ればと曖昧な表現で言っていたりルトが歯切れが悪そうな態度になっていたのは運転が粗くなってしまって荷物を崩してしまう恐れがあったので無理はさせないほうがいいと判断しエイクの誘いを断ったのだ。
「もちろん物によっては時間が決まっている荷物もあるので日暮れに間に合うのも評価の1つです。ですが焦って荷物を雑に扱ったり我が身可愛さに荷物を捨てるような者は組合には来てほしくないのです」
穏やかそうだがそう言い切る姿に、長年運送員として働いていたからこその矜持を感じる。
「元々予期せぬ襲撃を受けた時点で時間による評価は重視しなかったのですが」
「それなのですが上から見てあの襲撃は何なのか分かりますか」
不意にグレイスからかけられた言葉にアルフはおやっと呟き、ゲズルも感心した。ゲズルも上から見ている者がいたからこそ賊を放置したのだ。
「気付いていましたか」
「空から俺達についてくるように移動するメイを感じたので」
「だそうですよルッツさん」
アルフがそう言うと馬車の影からゲズル程の背をしたカラスの鳥人が現れた。
「メイを隠していたがいい索敵能力を持っているな」
「彼はルッツ・イヴンさん。『轍組』速達便部の部長兼副会長です。今回の試験では空からお2人の様子を見ていたのですよ」
恐らくはエイクから隠れた場所での不正や試験官を言いくるめて合格しようとする者がいないか監視する為に存在を隠されていたのだろう。
「イヴン副会長。あの者達について何か分かりましたか」
「覆面を剥いだがどいつもうちの組には所属していない奴らだ。それとうちの組合員が森を調べて見た所、本来の山賊役が倒れていた。全員命に別状はないが腕章を取られていた」
「試験を受ける馬車を襲うなんて何が目的なのでしょうか」
「さぁな。だが爆発する矢と言いギア付きの武器といい単なる山賊とは思えんが」
ルトとルッツの会話にゲズルは『轍組』に行く前のロナンとの会話を思い出し気まずい思いをした。もし2つの事件について関わりのある者がゲズルを狙ってこのような事態を起こしたのではないかと。もしそうであったならアルフ達を巻き込まない為にも表向きの場所を替えなければならない。
「襲撃した者については軍に報告します。試験の方ですが試験官のお2人とも何か言う事はないですか」
場の雰囲気を切り替えるようにアルフがそう声を掛ける。
「2人とも試験の真意を理解して周りの注意を惹きつけて馬車を守っていて、時刻は間に合わなかったが俺からの誘いを断って荷物の安全を優先にしたのはよかったな。戦闘においてはゲズルは力押しだけでなくフェイントをかけつつの反撃をする柔軟さもあるがすぐに囮になろうとする傾向があり、グレイスは状況をよく見極めていたが捨て身な所があったな。そう言った行動は仕事を果たす上でやめておいた方がいい。他に気になる所はないな」
「上空から見ても2人は山道だけでなく街中でも警戒は怠らず、襲撃に備えての声掛けもよく出来ていて試験だからと気を抜かない集中力があったな」
試験官からの評価を頷きながら聞き、アルフは評価項目が書かれているであろう紙を書きながら考え込んだ。暫くするとアルフは顔を上げ微笑んだ。
「荷物の状態と試験官の評価からお2人の合格を認めます。ようこそ運送組合『轍組』へ。組合長としてお2人を歓迎します」
アルフからの言葉にゲズルは内心安堵し、グレイスもほっとしたように頬が緩んだような気がした。とは言え今は表向きの場所を確保した段階に進んだだけで気は抜けないと思っているとアルフが声を掛けてきた。
「レトさん。仕事について伝えたい事があるので少しこちらに来てください」
指示通り2人を歓迎するルトの声を背に馬車から離れた場所へと向かうとアルフは笑みを消す。
「今回の襲撃の件でレトさんに協力するのを辞めるつもりはないですよ」
懸念していたことを見透かされたような言葉にゲズルは目を見開いた。
「贔屓目など無しでレトさんには組合で働いて欲しいですし、こう言うことを覚悟した上で街を守る為に私もルッツさんも協力する事を受け入れたのですよ」
「しかしこのままでは組合に対して危害が繰り返されるのでは」
「私達はやわではないので対策をしますし、ホーン准将も支援をすると言っています。それに貴方という存在がいますからね。牙の英雄殿」
その言葉にゲズルは胸を痛めた。そこまで期待されるほどの価値が自分にあるかどうか分からないが、彼らの覚悟に答える為にもこの任務をやり遂げなければと心に決めた。
「ようやく着きましたか」
「あの、レトさん達は悪くないのです。途中で試験とは違う人達が襲ってきましてそのせいで」
「ライトさん。遅くなったのは事実ですから気遣いはいりません」
「襲ってきた者達については後で詳しく聞くとして荷物の方を確認しましょうか」
そう言われてゲズル達は弁当を丁寧に卸していく。アルフが弁当の1つを確認すると弁当は崩れも無く無事なようだ。
「うん。無事に運べています。どうやらこの試験の本当の意味を理解していたようですね」
アルフの満足そうな言葉にゲズルとグレイスは頷く。
「日暮れまでというのは仕事を怠らない為の目安。運送組合にとって大事な事は荷物を無事に届け先に届ける事。荷物を大事にするかを見定めていたのですね」
試験前にアルフは日暮れまでの到着を出来ればと曖昧な表現で言っていたりルトが歯切れが悪そうな態度になっていたのは運転が粗くなってしまって荷物を崩してしまう恐れがあったので無理はさせないほうがいいと判断しエイクの誘いを断ったのだ。
「もちろん物によっては時間が決まっている荷物もあるので日暮れに間に合うのも評価の1つです。ですが焦って荷物を雑に扱ったり我が身可愛さに荷物を捨てるような者は組合には来てほしくないのです」
穏やかそうだがそう言い切る姿に、長年運送員として働いていたからこその矜持を感じる。
「元々予期せぬ襲撃を受けた時点で時間による評価は重視しなかったのですが」
「それなのですが上から見てあの襲撃は何なのか分かりますか」
不意にグレイスからかけられた言葉にアルフはおやっと呟き、ゲズルも感心した。ゲズルも上から見ている者がいたからこそ賊を放置したのだ。
「気付いていましたか」
「空から俺達についてくるように移動するメイを感じたので」
「だそうですよルッツさん」
アルフがそう言うと馬車の影からゲズル程の背をしたカラスの鳥人が現れた。
「メイを隠していたがいい索敵能力を持っているな」
「彼はルッツ・イヴンさん。『轍組』速達便部の部長兼副会長です。今回の試験では空からお2人の様子を見ていたのですよ」
恐らくはエイクから隠れた場所での不正や試験官を言いくるめて合格しようとする者がいないか監視する為に存在を隠されていたのだろう。
「イヴン副会長。あの者達について何か分かりましたか」
「覆面を剥いだがどいつもうちの組には所属していない奴らだ。それとうちの組合員が森を調べて見た所、本来の山賊役が倒れていた。全員命に別状はないが腕章を取られていた」
「試験を受ける馬車を襲うなんて何が目的なのでしょうか」
「さぁな。だが爆発する矢と言いギア付きの武器といい単なる山賊とは思えんが」
ルトとルッツの会話にゲズルは『轍組』に行く前のロナンとの会話を思い出し気まずい思いをした。もし2つの事件について関わりのある者がゲズルを狙ってこのような事態を起こしたのではないかと。もしそうであったならアルフ達を巻き込まない為にも表向きの場所を替えなければならない。
「襲撃した者については軍に報告します。試験の方ですが試験官のお2人とも何か言う事はないですか」
場の雰囲気を切り替えるようにアルフがそう声を掛ける。
「2人とも試験の真意を理解して周りの注意を惹きつけて馬車を守っていて、時刻は間に合わなかったが俺からの誘いを断って荷物の安全を優先にしたのはよかったな。戦闘においてはゲズルは力押しだけでなくフェイントをかけつつの反撃をする柔軟さもあるがすぐに囮になろうとする傾向があり、グレイスは状況をよく見極めていたが捨て身な所があったな。そう言った行動は仕事を果たす上でやめておいた方がいい。他に気になる所はないな」
「上空から見ても2人は山道だけでなく街中でも警戒は怠らず、襲撃に備えての声掛けもよく出来ていて試験だからと気を抜かない集中力があったな」
試験官からの評価を頷きながら聞き、アルフは評価項目が書かれているであろう紙を書きながら考え込んだ。暫くするとアルフは顔を上げ微笑んだ。
「荷物の状態と試験官の評価からお2人の合格を認めます。ようこそ運送組合『轍組』へ。組合長としてお2人を歓迎します」
アルフからの言葉にゲズルは内心安堵し、グレイスもほっとしたように頬が緩んだような気がした。とは言え今は表向きの場所を確保した段階に進んだだけで気は抜けないと思っているとアルフが声を掛けてきた。
「レトさん。仕事について伝えたい事があるので少しこちらに来てください」
指示通り2人を歓迎するルトの声を背に馬車から離れた場所へと向かうとアルフは笑みを消す。
「今回の襲撃の件でレトさんに協力するのを辞めるつもりはないですよ」
懸念していたことを見透かされたような言葉にゲズルは目を見開いた。
「贔屓目など無しでレトさんには組合で働いて欲しいですし、こう言うことを覚悟した上で街を守る為に私もルッツさんも協力する事を受け入れたのですよ」
「しかしこのままでは組合に対して危害が繰り返されるのでは」
「私達はやわではないので対策をしますし、ホーン准将も支援をすると言っています。それに貴方という存在がいますからね。牙の英雄殿」
その言葉にゲズルは胸を痛めた。そこまで期待されるほどの価値が自分にあるかどうか分からないが、彼らの覚悟に答える為にもこの任務をやり遂げなければと心に決めた。
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