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第1章 「お前の望みは何だ?」
第14話「仮初の場所での初の仕事」
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店を出て階段を降りるとぺルラは表情を柔らかくする。
「朝早くから挨拶してしまいすいません」
「いえこちらこそ店の準備を手伝ってくださりありがとうございます」
『朝早くに知人の店の手伝いをしに来た男と礼をする女商人』という体を演じる為にエリザの顔になるぺルラの演技力に関心していると不意に背後から覚えのあるメイを感じ振り返る。
「何をしているんだ」
そこにはグレイスが立っていた。
「フェルンさん何故ここに?」
「朝飯を食いに来てそのまま組合に向かおうとしたんだ。お前は?」
「少し知人の店に顔見せと手伝いをしていたのです」
「知人?」
そうグレイスはペルラを見る。
「はじめまして。エリザ・ローリーと申します。こちらでハーブや香辛料の加工品の卸売りをしております。以後お見知り置きを」
穏やかな笑みを浮かべるぺルラにグレイスは小さく「よろしく」と言うとそのまま歩いて行ってしまう。
「彼が件の邪眼の少年ですか。確かに邪眼なら知覚出来ない狙撃も可能でしょうがそれだけでは内部犯の仲間だと決められませんね」
「えぇそれはそうですが彼のことで少し気になる事があります」
「気になる事とは?」
「入団試験の際、彼は一度も鞘から剣を抜かなかったのです」
試験ならともかく命がかかっているので不審に思われない為に剣を抜くはずだろうし、感電の能力で多少の手傷程度で制する事が出来るだろう。内部犯にしてもただ巻き込まれたにしてもその行動はただ怪しまれるだけだ。
「それは確かに気になりますね。内部犯は何処に潜んでいるか分からないですしあなたの眼を奪った者が完全に潰しに来るために潜入している可能性もあるので小さな違和感でも見逃さないようにしてください」
「今の私にそこまでの脅威があるとは思えませんが、油断は禁物なのは分かっています」
そう言ったゲズルを見るぺルラの眼は少し寂しそうだ。そんな目を知らずにゲズルもぺルラに礼をしてから歩き出し、そんなゲズルの背にぺルラは思わず本音を呟いてしまう。
「あなたはあなたの力を信じる事が出来なくなったのですね」
『轍組』本部は昨日と変わらず受付には人が溢れていて、ぶつからないように奥へと向かう。
「おはようございますレトさん、フェルンさん。お仕事が入っているのでどうぞ事務室に向かってください」
受付をしているリオから伝えられゲズル達は2階へと上がる。
事務室へと向かうとルトとエイクが待っていた。
「おはようございます」
「おはようございます。遅れてしまいましたか」
「いや、俺達も来たばかりだ」
「初仕事も同じメンバーなのですか」
「まぁ入団試験の時のメンバーが暫くの間同じ仕事をするのはよくある事だからな」
エイクの答えにそうですかと答えたゲズルが少し考えていると、赤毛の男性の事務員が現れる。
「皆さんおはようございます。早速ですが今回の仕事を伝えます。お2人にとっては初めての仕事ですね」
表向きとはいえ初仕事に思わず背筋が伸びてしまう。
「今回の仕事はトリトーの東のはずれにある灯台の修繕用素材の運送です」
「灯台に破損部分があったのですか」
「えぇ、屋根に雨漏りがあった上に昨日ガラスにヒビが入ってしまったそうです。5日後にサーデル国の大使が来られるのでその前に灯台の補強を終えたいとのことです」
「まだ調印式の変更は決まっていないのですか」
「支部は問題ないって言っているらしいですよ。運送組合の一事務員の僕でも調印式を延期にしてでも今のトリトーで迎えるのは止めた方がいいと思うんですよね」
ルトは困惑し事務員も支部の対応に少し呆れているようでその言葉が一軍人としてゲズルの胸に突き刺さってしまう。
「まぁ支部の動向はさておき俺達は俺達の仕事をしようぜ」
少し重い空気を仕切り直すようにエイクはやや大きな声で言う。
「そうですね。ではこちらの受注書にサインをお願いします」
ルトがサインをしてゲズル達は早速馬車の発着場へと向かった。
「朝早くから挨拶してしまいすいません」
「いえこちらこそ店の準備を手伝ってくださりありがとうございます」
『朝早くに知人の店の手伝いをしに来た男と礼をする女商人』という体を演じる為にエリザの顔になるぺルラの演技力に関心していると不意に背後から覚えのあるメイを感じ振り返る。
「何をしているんだ」
そこにはグレイスが立っていた。
「フェルンさん何故ここに?」
「朝飯を食いに来てそのまま組合に向かおうとしたんだ。お前は?」
「少し知人の店に顔見せと手伝いをしていたのです」
「知人?」
そうグレイスはペルラを見る。
「はじめまして。エリザ・ローリーと申します。こちらでハーブや香辛料の加工品の卸売りをしております。以後お見知り置きを」
穏やかな笑みを浮かべるぺルラにグレイスは小さく「よろしく」と言うとそのまま歩いて行ってしまう。
「彼が件の邪眼の少年ですか。確かに邪眼なら知覚出来ない狙撃も可能でしょうがそれだけでは内部犯の仲間だと決められませんね」
「えぇそれはそうですが彼のことで少し気になる事があります」
「気になる事とは?」
「入団試験の際、彼は一度も鞘から剣を抜かなかったのです」
試験ならともかく命がかかっているので不審に思われない為に剣を抜くはずだろうし、感電の能力で多少の手傷程度で制する事が出来るだろう。内部犯にしてもただ巻き込まれたにしてもその行動はただ怪しまれるだけだ。
「それは確かに気になりますね。内部犯は何処に潜んでいるか分からないですしあなたの眼を奪った者が完全に潰しに来るために潜入している可能性もあるので小さな違和感でも見逃さないようにしてください」
「今の私にそこまでの脅威があるとは思えませんが、油断は禁物なのは分かっています」
そう言ったゲズルを見るぺルラの眼は少し寂しそうだ。そんな目を知らずにゲズルもぺルラに礼をしてから歩き出し、そんなゲズルの背にぺルラは思わず本音を呟いてしまう。
「あなたはあなたの力を信じる事が出来なくなったのですね」
『轍組』本部は昨日と変わらず受付には人が溢れていて、ぶつからないように奥へと向かう。
「おはようございますレトさん、フェルンさん。お仕事が入っているのでどうぞ事務室に向かってください」
受付をしているリオから伝えられゲズル達は2階へと上がる。
事務室へと向かうとルトとエイクが待っていた。
「おはようございます」
「おはようございます。遅れてしまいましたか」
「いや、俺達も来たばかりだ」
「初仕事も同じメンバーなのですか」
「まぁ入団試験の時のメンバーが暫くの間同じ仕事をするのはよくある事だからな」
エイクの答えにそうですかと答えたゲズルが少し考えていると、赤毛の男性の事務員が現れる。
「皆さんおはようございます。早速ですが今回の仕事を伝えます。お2人にとっては初めての仕事ですね」
表向きとはいえ初仕事に思わず背筋が伸びてしまう。
「今回の仕事はトリトーの東のはずれにある灯台の修繕用素材の運送です」
「灯台に破損部分があったのですか」
「えぇ、屋根に雨漏りがあった上に昨日ガラスにヒビが入ってしまったそうです。5日後にサーデル国の大使が来られるのでその前に灯台の補強を終えたいとのことです」
「まだ調印式の変更は決まっていないのですか」
「支部は問題ないって言っているらしいですよ。運送組合の一事務員の僕でも調印式を延期にしてでも今のトリトーで迎えるのは止めた方がいいと思うんですよね」
ルトは困惑し事務員も支部の対応に少し呆れているようでその言葉が一軍人としてゲズルの胸に突き刺さってしまう。
「まぁ支部の動向はさておき俺達は俺達の仕事をしようぜ」
少し重い空気を仕切り直すようにエイクはやや大きな声で言う。
「そうですね。ではこちらの受注書にサインをお願いします」
ルトがサインをしてゲズル達は早速馬車の発着場へと向かった。
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