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4話 推しが〇〇だって本人から聞かされたのだが!
しおりを挟む金曜の放課後、珍しくエルシーは図書室に立ち寄る事にした。
金と日曜日はバイトは休みだ。
しかし、来てみたものの、置いてある写真集は借りた事がある。
(仕方ない)
新しく入れて欲しい本を何かリクエストした方がいいかと迷い、候補のタイトルを見つける為、スマホを取り出したが、カメラ雑誌の新刊がないか思い立ち見に行こうとしたら、思いがけない人物に会った。
ソータだ。
まさにエルシーの目当ての新刊のカメラ雑誌をソータが先に手に取っていたのだ。
(よりによってなんでこいつに・・・ )
ため息を吐いたのがあからさまだったのか、ソータは
「エルシーもカメラ好きなの?
あ、じゃあこれどうぞ」
と手に取った雑誌を渡してきた。
「いい。先に取ったのはそっちだし」
「そう?でも以外だな。エルシーもカメラ好きなんだ」
と聞かれ
「別に」と答える。
以外なのはそっちだ。
本格的なカメラ雑誌なんて見る高校生は少ないはずだ。
書店でアルバイトをしてまだ数ヶ月だが、その手の本をレジに持ってくる客は明らかにソータよりも歳上の者達だ。
いや、もしくはそれはエルシーの偏見かもしれない。
自分はたまにしか撮らないが、カメラくらいスマホに付いているし、アルヴィンだって自撮りをしているのをたまに見ている。
アルヴィンは自分よりもスマホを先に買って使いこなしていたし、その時から食べ物や景色を写していた。
エルシーも最初は珍しいスイーツに感動し、真似をして一枚シャッターボタンを押してみたが、何回も構図を変えながら写真を撮るアルヴィンに流石に呆れていた。
「ねえアルヴィン、食べなきゃアイス溶けるよ。
そんなに取って楽しい?」
「楽しいっていうか、せっかく撮るなら上手く撮りたいんだよ。ほら、こうやって投稿もできるんだよ」
と、その時初めてエックスの存在をエルシーは知った。
(確かにそうゆう事があってみんな同じような事をしてるのは今は分かる)
でも、カメラ雑誌をアルヴィンが読んでるのは見た事はない。
エルシーは、自分が何を考えてるか段々、分からなくなった。
思いついた疑問をソータに聞いてみる事にした。
「カメラ楽しい?」
「うん。亡くなったお祖父ちゃんがカメラ好きで、その影響で好きになったんだ。まあ、撮るっていってもスマホなんだけどね」
自分に興味を持ってくれたのが嬉しかったのか、ソータは饒舌だ。
それからソータは手に持っていた新刊の雑誌を指差し
「カメラ雑誌の読者投稿ページが好きなんだ」
と、上機嫌に話していた。
(奇遇だ)
エルシーも同感だ。
写真をあまり撮らないエルシーも、雑誌の目的は彼と同じだった。
「私もそのコーナーだけ見れれば満足だったから。
あ、借りようとは思ってないから」
と言うとソータは
「なんだ。じゃあやっぱりエルシーから見なよ」
と雑誌を渡してくれた。
「ありがとう。すごいな、ソータは」
礼とは別に率直な感想が出る。
今日にエルシーが誉めたからか彼は
「何で?」
と返した。
「私の周りでそんな風なカメラすきはいないし、珍しいと思って。
バイト先の人にも、私が写真集買うと驚かれるから。
高校生でカメラ好きや写真好きなのは珍しいんだろ?」
「まあ、少ないかな」
(やっぱりそうなんだ・・・ )
とエルシーはやっと納得した。
「私、好きな写真家がいるんだ。
本は出してないけど。
だから同じ事をして楽しめるのはすごいかなって」
「そっか・・・ 、へえ・・・ 」
ソータはエルシーにまた褒められ、気恥ずかしくなったのか照れていた。
その時、ちょうどエルシーが持っていたスマホの画面が光り、ラナからのメッセージの通知が届いた。
「ちょっとごめん。友達に返信する」
エルシーがソータに断り、スマホの画面を開こうとした時、なぜかソータは驚いたような反応をした。
「え、何?どうかした?」
ソータはなにやら下を向き、恥ずかしがってる。
「何でもない・・・ 」
と、ソータは返したがそうには見えない。
(そんな訳ないだろ)
何か隠したソータの姿に、エルシーは苛立ちを覚え
「言わないなら私帰るよ」
と彼に背を向けるとしびれを切らしたのか
「分かった。話すよ!」
と観念されると、ソータの声が大きかったのか、カウンターにいる図書委員から睨まれた。
気まずい空気が流れた。
「笑わないでよ」
ソータは小さな声で念押しする。
「何が?」
笑うも何もエルシーにはソータを笑うかもしれない理由が分からない。
「そのsouっての僕なんだ」
「え!?」
突然のカミングアウトに驚いたエルシーの声は思いのほか大きく出た。
また、図書委員にカウンターから睨まれる。
(マジで?)
目でエルシーは聞くと
(うん。マジ)
とソータも頷き返した。
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