【R18】忘却令嬢はあなたの記憶に残りたい

麻麻(あさあさ)

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7話 他人行儀

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無事を祈っていた夫の他人行儀な発言に私は固まっていると、先に口を開いたのはナースだ。

「ブロワ伯爵、奥様のアリア様ですよ」
呼びかけに彼は
「奥様?」
と呟き困惑している。

これには同室にいた医師も困惑し、彼にいくつかテストを解かせた。

「おかしい。
どうやら旦那さんにはあなたの記憶だけがないみたいだ」

不思議な事にミメットの事や幼なじみのハワード様の覚えているらしい。

「こんな症例は初めて見た」
医師も自分じゃ手に負えないと悩んでいる。


まるで何かの意図が働くが私は自分を呪った。

「私のせいだわ」
私の言葉に医師は首を傾げる。

(どうしたら彼に思い出してもらえるの!?)

こんな事で悩んだ事は初めてだ。



しかし、悩んでいたのは私や医師だけじゃなかった。

「あの、もう俺は帰っても?」
気を失っていた令嬢ならともかく何故自分はどこも悪くないのにテストを受けなくてはいけないのか
とフェリックス様は不満そうに医師に聞く。


すると医師は言いにくそうに彼に申し出た。
「ブロワ伯爵、どうか落ち着いて。
テスト結果であなたはなんだかの理由で奥様の事を忘れていらっしゃる」

「奥様って誰の事だ?」
検討がつかないと彼は告げる。

「ハワード伯爵にハネムーンの件でどこがいいか聞きに行ったと言っていたではありませんか?
奥様とじゃなければ誰とハネムーンへ行くのです?」

「それは・・・」
医師に聞かれても彼には分からない。

「一度別の大きな病院に行った方がいい。
紹介状を書きましょう」
医師は早速、ナースにそれを伝えようとした、が。

「待ってくれ!それは必要ない。
俺はどこも悪くない!」
彼はハッキリと医師の言葉を拒絶すると
「俺は屋敷へ帰る!」
と今にもここを立ち去りそうな彼を呼び止める。
「フェリックス様、待って!」
「あなたも俺が頭がイカれていると!?」

フェリックス様は私を睨む。

「本当に私の事、覚えていないんですか?」
そう聞くが彼は迷いなく
「当たり前だ」

それだけ答えると彼は診察代の金貨をポケットから出してナースに渡すと、私を診療所に残して1人でに出て行った。

「待って・・・」
ベッドから立ちあがろうとするも、捻挫のせいで足に上手く力が入らない。

(加護の力で痛みはないのに!)
ナースや医師が私を止める。

「奥様はまだここにいなさい。
屋敷に連絡なら私達がする」

「でも、彼1人じゃまた怪我をするかも!」
「確かに。転倒には気をつけなくてはいけませんが・・・」

彼の身体に外傷は無かったからか医師には私が言わんとしている事が分からない。

(もう!)
歯痒い気持ちの中、私はフェリックス様が気掛かりだ。

(お願い。
無事に屋敷に着いたら私の事、思い出して!)

祈るような気持ちでいる私に医師は奥様の捻挫は2週間くらいここで様子を見ようと入院を言い渡された。
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