夫に君も愛人を作ればいいと言われましたので

麻麻(あさあさ)

文字の大きさ
12 / 16

11話 一方、夫とその愛人達

夕方、ギルバートは着替えると外出にはまだ時間が余り手持ち無沙汰になった。

こういう時はキセルで煙草を吸いたいが新しい執事はそれを許さない。

「おい」
イライラとソファ横のテーブルを指でコツコツ叩いてアロンに煙草を持ってくるよう指示するが奴は

「今お着替えをしたので控えた方がよろしいかと」
シェリー様と会うんでしょう?匂いが付きますよと可愛くない返事をする。

「うるさい!
私の一声でお前なんか即クビにできるんだぞ」

そうなじるとアロンは静かにキセルの火皿に入れマッチで皿を炙り主人に渡す。

「そんなにクビになりたくないか?」
アロンはそれには無言だった。

シェリーの屋敷は下級令嬢とはいえ立派だった。

主人に代わりアロンが屋敷のベルを鳴らしてギルバートが入り口前に立っていると今日のオペラ鑑賞に合わせて派手に髪を結い着飾ったシェリーが上機嫌でギルと抱擁を交わした。

「あなた、また煙草吸ったわね」
仕方ないんだからとシェリーは猫をあやすようにギルバートを撫でる。

「あら、そちらは新しい執事?」
見ない顔だわと若くて珍しい銀髪の執事に彼女は興味津々になった。


「こいつは人の妻を誘惑した無礼者だ」

ギルバートの発言は容赦ない。

「そう言いながらあなたに付けてるの?
もう、この人ったら大変でしょう?」

井戸端会議をするようにシェリーはアロンに話しかける。

「もしこの人のところを辞めたら家にくるといいわ」
「シェリー、やめろ。
こんな者を屋敷で働かせるなんて私は許さないよ」

いつでも辞められるとはいえ主人には歯向かえない。

アロンはお辞儀だけするとギルバートとシェリーの後ろの馬車に乗り、会場に向かった。


オペラ会場は今日は思ったより空いていた。

にも関わらず、2人は二階席からオペラグラスを使い鑑賞するのが好きみたいだ。

周りと席の間隔が空いているからか2人は親密そうに喋っている。

「ねえ、あなたワインを注文して」
シェリーがそう言うとアロンは躊躇したがギルバートに睨まれ、言われた通りにする。

しかし、それが回数を重ねるとシェリーはギルバートにも止められる。

「いいじゃない。
あなただって飲みたいでしょう?」

「私はこれ以上は遠慮するよ」
ギルバートはこれ以上飲んだら眠ってしまうからね
と彼女に言うが

「まあ、でも私も飲めないわ」
飲みかけのグラスをあなたが飲んでよと強引に隣にいるギルバートに渡す。

ここで飲まないと男が廃るのかギルバートはワインを飲み干すと、オペラ終盤には案の定眠りこけてしまった。


「旦那様、起きて下さい」
アロンは主人を起こそうとするがシェリーは
「大丈夫よ。
寝かせておきなさい」
と寄り掛かるギルバートをそのままにしておく。

「あなたもこちらに座りなさいな」

こちらとはギルバートとは反対の隣の席だ。


「遠慮いたします。
これ以上、無礼を働いてはクビにさせられてしまいます」

「だからその時は私のところに来ればいいじゃない」

「それも先程旦那様に止められました」

「釣れないわね。
私があなたを飼うって言っているのよ」

執事ではなくギルバートとは違う遊び相手が彼女は欲しいらしい。

「お辞め下さい。
淑女たる者このような事、噂になればお家の名前を汚しかねません」

「汚さないわよ。
だって少なからず私を支援してくれる方達は増えていっているのよ」

つまりギルバートの他にも愛人枠とは違うパトロンが他にもいるという事だ。

「やはりお断りします」
アロンはキッパリ拒否をする。

「なんでよ!?」

「本物の淑女はもっと気高く懸命ですよ。
少なくとも男で囲って自分を保身しようなんてしない」

「あなた私を侮辱しているの!?」

「シェリー、何を怒っているんだい?」
彼女の声に眠っていたギルバートが起きてしまった。


感想 4

あなたにおすすめの小説

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)

愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息、皇帝宮の夜会で本音を喋る魔道具を使ったらすべて暴露されました

あきくん☆ひろくん
恋愛
愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息。その本性を知ったのは、結婚した後でした。 私は子供を産むためだけの妻。生まれた子は愛人が育て、私は屋敷に閉じ込められる運命だという。 絶望する私が思い出したのは、大魔導士から渡された魔道具。「心に思ったことを言葉にしてしまう」もの。 そして皇帝宮の夜会で――伯爵子息は皇太子の前で、自分の本音をすべて喋ってしまいました。 この作品は、「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です」シリーズの外伝です。 リリアーナは、第1作目の第3部のおまけ、のお話にでてくる子爵令嬢です。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

要らないと思ったのに人に取られると欲しくなるのはわからなくもないけれど。

しゃーりん
恋愛
フェルナンドは侯爵家の三男で騎士をしている。 同僚のアルベールが親に見合いしろと強要されたと愚痴を言い、その相手が先日、婚約が破棄になった令嬢だということを知った。 その令嬢、ミュリエルは学園での成績も首席で才媛と言われ、一部では名高い令嬢であった。 アルベールはミュリエルの顔を知らないらしく、婚約破棄されるくらいだから頭の固い不細工な女だと思い込んでいたが、ミュリエルは美人である。 ならば、アルベールが見合いをする前に、自分と見合いができないかとフェルナンドは考えた。 フェルナンドは騎士を辞めて実家の領地で働くために、妻を必要としていたからである。 フェルナンドとミュリエルの結婚を知ったアルベールは、ミュリエルを見て『返せ』と言い出す、というお話です。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。