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第19話「牙の試練、焔の誓い」
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《焔の手工房》が王都で名を上げ、貴族からの依頼を成功させた直後。
灰狐商会による嫌がらせ、ギルド査問官による圧力、不審者による夜襲――すべてが“次なる一手”への布石だった。
火は燃え盛る。だが、吹きすさぶ風はさらに強くなる。
* * *
「依頼、断るんですか?」
グリトが不安げな目でオリンを見つめていた。
「今度の依頼、王都の西にある〈辺境砦〉からなんだろ? 正式なギルドルートだし、報酬も破格……なのに」
オリンは黙って鍛冶場の炉の火加減を調整していた。
やがて、ぼそりと答える。
「罠かもしれねぇ。――砦の隊長が、灰狐と繋がってる噂がある」
「でも……逃げたくないです、俺」
フェンが拳を握る。「あんたに教わって、火と鉄を信じて、やっとここまで来たのに……逃げるのはイヤだ!」
「逃げるんじゃねぇ」
オリンは静かに言った。
「備えるんだ。――俺たちは“鍛冶師”だ。戦士じゃねぇ。だが“武器を作る者”が臆していたら、その先で戦う奴らが死ぬ」
「……じゃあ、行くの?」
サーシャが問いかける。
オリンは炉の火を見つめながら、小さく頷いた。
「行く。だが、“受け身”じゃなく、“試す”。」
「――俺たちの“火”が、どれだけ遠くに届くかをな」
* * *
辺境砦への道は、冬の入り口を迎えた山道。
弟子たちはそれぞれ荷物を背負い、焔の手の最新作を積んで進んでいく。
フェンは軽装のまま走りながら警戒。
ライラは荷馬車の護衛に付き、グリトは補助具をチェックしながら、行程の記録を刻んでいた。
「こうやって旅に出るのも……悪くないですね」
グリトがぽつりとつぶやく。
「うん。家族で旅してるみたい」
ライラが笑う。
「……あのな、オレ、家族って言葉に弱いんだよ」
フェンが照れ隠しに帽子を深くかぶる。
その背中を見て、サーシャがオリンにこっそり囁いた。
「……変わったわね。あの子たち」
「鉄も、人も、叩けば叩くほど強くなる」
オリンの声は、どこか誇らしげだった。
* * *
砦に到着した夜。
焔の手の一行を迎えたのは、異様な静けさと、仄かに漂う“焼けた硝煙”の匂いだった。
「なにか……戦があったのか?」
「いいえ、妙ね。砦の記録じゃ、ここ数日は平穏そのもののはずよ」
そして現れたのは、黒衣に身を包んだ、筋骨隆々とした男――
「よく来たな、オリン・ハルド。そして焔の手工房の皆さん」
灰狐商会の幹部、“牙のロンド”と呼ばれる男だった。
「依頼主じゃなかったのか……!」
ライラが盾を構える。
「――違うな。依頼は“本物”だ。ただし、お前らを“ふるいにかける”のもまた本気だ」
ロンドの合図と同時に、砦の内部から数人の戦士が現れる。
だが彼らの武器は“折れ”、防具は“穴が空き”、明らかに“手抜き品”だった。
「見ての通り、俺たちは“王都認定工房”に頼んだはずの装備で、戦わされた。灰狐の“贋作”だよ」
オリンの眉がぴくりと動いた。
「……あんたらも、“騙された側”か?」
「だから俺は、お前らを見極めに来た。“本物”かどうか」
「いいぜ」
オリンは静かに歩み出る。
「ここで鍛える。見ていけ」
* * *
砦の簡易炉で、即席の鍛造が始まった。
フェンが火を起こし、ライラが防具の素材を整え、グリトが刻印を刻み――
オリンは、炉に向かい、“一撃目”を振り下ろす。
――カァン!
響き渡る音は、夜の空気を震わせるような、芯のある音だった。
その火の粉に照らされ、見守る兵士たちの目が変わる。
「……なんだ、この熱は」
「この匂い……昔の親父の鍛冶場を思い出すな」
「火の、音が違う……」
ロンドもまた、無言でその姿を見つめていた。
そして、鍛え上げられた剣が一本――
静かに、完成した。
それは“試作”の剣だった。
だが、砦の兵士の一人がそれを構え、木柱に振るった瞬間――
ズバッ!
柱が、音もなく真っ二つになった。
「……っ、すげぇ……!」
「これが、“本物”……!」
ロンドはようやく頷いた。
「お前らは、“火”の名に恥じねぇ工房だ」
「だったら、これからは協力してくれ。俺たちも、“騙された”んだろ」
「……構わねぇ」
オリンが言う。
「俺たちは“正しさ”を証明するために火を使う。剣を振るうのは、お前らだ」
ロンドは大きく頷いた。
「なら、牙と火で、“偽物”を焼き尽くそう」
* * *
夜。
炉の火が消えかけるそのとき、オリンがぽつりとつぶやいた。
「火は、真実を映す」
「だから、俺は鍛える。何度でも。誰が相手でもな」
そして、焔の手の“誓い”は、ますます強く燃え盛っていく――
灰狐商会による嫌がらせ、ギルド査問官による圧力、不審者による夜襲――すべてが“次なる一手”への布石だった。
火は燃え盛る。だが、吹きすさぶ風はさらに強くなる。
* * *
「依頼、断るんですか?」
グリトが不安げな目でオリンを見つめていた。
「今度の依頼、王都の西にある〈辺境砦〉からなんだろ? 正式なギルドルートだし、報酬も破格……なのに」
オリンは黙って鍛冶場の炉の火加減を調整していた。
やがて、ぼそりと答える。
「罠かもしれねぇ。――砦の隊長が、灰狐と繋がってる噂がある」
「でも……逃げたくないです、俺」
フェンが拳を握る。「あんたに教わって、火と鉄を信じて、やっとここまで来たのに……逃げるのはイヤだ!」
「逃げるんじゃねぇ」
オリンは静かに言った。
「備えるんだ。――俺たちは“鍛冶師”だ。戦士じゃねぇ。だが“武器を作る者”が臆していたら、その先で戦う奴らが死ぬ」
「……じゃあ、行くの?」
サーシャが問いかける。
オリンは炉の火を見つめながら、小さく頷いた。
「行く。だが、“受け身”じゃなく、“試す”。」
「――俺たちの“火”が、どれだけ遠くに届くかをな」
* * *
辺境砦への道は、冬の入り口を迎えた山道。
弟子たちはそれぞれ荷物を背負い、焔の手の最新作を積んで進んでいく。
フェンは軽装のまま走りながら警戒。
ライラは荷馬車の護衛に付き、グリトは補助具をチェックしながら、行程の記録を刻んでいた。
「こうやって旅に出るのも……悪くないですね」
グリトがぽつりとつぶやく。
「うん。家族で旅してるみたい」
ライラが笑う。
「……あのな、オレ、家族って言葉に弱いんだよ」
フェンが照れ隠しに帽子を深くかぶる。
その背中を見て、サーシャがオリンにこっそり囁いた。
「……変わったわね。あの子たち」
「鉄も、人も、叩けば叩くほど強くなる」
オリンの声は、どこか誇らしげだった。
* * *
砦に到着した夜。
焔の手の一行を迎えたのは、異様な静けさと、仄かに漂う“焼けた硝煙”の匂いだった。
「なにか……戦があったのか?」
「いいえ、妙ね。砦の記録じゃ、ここ数日は平穏そのもののはずよ」
そして現れたのは、黒衣に身を包んだ、筋骨隆々とした男――
「よく来たな、オリン・ハルド。そして焔の手工房の皆さん」
灰狐商会の幹部、“牙のロンド”と呼ばれる男だった。
「依頼主じゃなかったのか……!」
ライラが盾を構える。
「――違うな。依頼は“本物”だ。ただし、お前らを“ふるいにかける”のもまた本気だ」
ロンドの合図と同時に、砦の内部から数人の戦士が現れる。
だが彼らの武器は“折れ”、防具は“穴が空き”、明らかに“手抜き品”だった。
「見ての通り、俺たちは“王都認定工房”に頼んだはずの装備で、戦わされた。灰狐の“贋作”だよ」
オリンの眉がぴくりと動いた。
「……あんたらも、“騙された側”か?」
「だから俺は、お前らを見極めに来た。“本物”かどうか」
「いいぜ」
オリンは静かに歩み出る。
「ここで鍛える。見ていけ」
* * *
砦の簡易炉で、即席の鍛造が始まった。
フェンが火を起こし、ライラが防具の素材を整え、グリトが刻印を刻み――
オリンは、炉に向かい、“一撃目”を振り下ろす。
――カァン!
響き渡る音は、夜の空気を震わせるような、芯のある音だった。
その火の粉に照らされ、見守る兵士たちの目が変わる。
「……なんだ、この熱は」
「この匂い……昔の親父の鍛冶場を思い出すな」
「火の、音が違う……」
ロンドもまた、無言でその姿を見つめていた。
そして、鍛え上げられた剣が一本――
静かに、完成した。
それは“試作”の剣だった。
だが、砦の兵士の一人がそれを構え、木柱に振るった瞬間――
ズバッ!
柱が、音もなく真っ二つになった。
「……っ、すげぇ……!」
「これが、“本物”……!」
ロンドはようやく頷いた。
「お前らは、“火”の名に恥じねぇ工房だ」
「だったら、これからは協力してくれ。俺たちも、“騙された”んだろ」
「……構わねぇ」
オリンが言う。
「俺たちは“正しさ”を証明するために火を使う。剣を振るうのは、お前らだ」
ロンドは大きく頷いた。
「なら、牙と火で、“偽物”を焼き尽くそう」
* * *
夜。
炉の火が消えかけるそのとき、オリンがぽつりとつぶやいた。
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そして、焔の手の“誓い”は、ますます強く燃え盛っていく――
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へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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