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6章
外伝7「春の魔法と小さな約束」
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春祭りを間近に控えた王都は、まるで大きな花園のように彩られていた。
あちこちに花飾りや旗がはためき、通りのパン屋からは焼きたての甘い香りが漂う。
そんなある朝、エイミーは砦の旧医務室で、子どもたちと小さな作戦会議を開いていた。
「えっと、今日は“ノクティアさんをびっくりさせる日”なんです!」
エイミーの言葉に、子どもたちは大きくうなずいた。
「お花で冠を作って、広場でみんなで歌うの!」「わたし、笛も練習したんだよ!」
砦で暮らす子どもたち――リリー、マルク、トトなどは、すっかり“王都っ子”らしくなってきたが、心の奥ではいつもノクティアのやさしさを忘れずにいる。
* * *
「だけど、ノクティア様は最近ちょっと元気がなさそう。王都の人たちも“またいなくなっちゃうんじゃないか”って心配してるみたいで……」
小さなリリーがぽつりとつぶやく。
「だから、みんなで“ずっと一緒だよ”って、伝えたいんだね?」
「うん!」
エイミーはやさしくほほえむと、「じゃあ、早速お花を摘みに行きましょう」と声をかける。
* * *
午前中いっぱい、子どもたちは郊外の小さな野原へと出かけた。
春の陽射しが眩しく、足元には色とりどりの花が咲いている。
「見て見て、こんなに大きなクローバー!」「タンポポ、たくさんあるよ!」
子どもたちは夢中で花を集め、エイミーは落ちていた枝やツルを上手に編み始める。
「リリー、もうちょっと細い茎を持ってきてくれる?」「マルク、白い花は王都の象徴だから、真ん中に入れよう」
花冠づくりは想像以上に難しく、途中でちぎれてしまったり、うまく輪にならなかったり。
「わあん、ぼくの花、くしゃくしゃになっちゃった……」
「だいじょうぶ。どんな花も、一緒に集めたらきっときれいになるわ」
エイミーの優しい声に、トトは涙をぬぐってがんばる。
* * *
午後には、広場の片隅で“秘密の練習”が始まった。
エイミーはピアノの代わりに鍋とお玉でリズムを取り、子どもたちは自作の笛や鈴を鳴らす。
「ノクティア様、びっくりするかな?」「絶対びっくりして、泣いちゃうかも!」
子どもたちの元気な声に、通りがかったカイラスが思わず足を止めた。
「おい、なんだか騒がしいな?」
「団長! これは“ひみつの作戦”ですから、絶対にノクティアさんに言っちゃダメですよ!」
「……そうか。それなら俺も、ちょっと手伝うか」
カイラスは無骨な手で花冠をひょいと直し、「ここは編み方をこうしてみたらどうだ?」とアドバイス。
子どもたちとカイラス――ちょっと珍しい組み合わせに、エイミーも思わず吹き出した。
* * *
日が傾き始めたころ、広場には春の花とリボンで飾った即席の舞台ができあがっていた。
夕暮れの光のなか、エイミーと子どもたちはドキドキしながらノクティアの到着を待っていた。
そこへ、リュゼルも「何やら楽しげなことが行われているらしいな」と現れる。
「ノクティアには、みんながどれだけ想っているか、きっと伝わるさ」
* * *
そして夕食のあと、カイラスがノクティアを「ちょっと来てくれ」と広場に連れてくる。
「え……? なにかしら……?」
ノクティアが首をかしげて花壇の横に立つと、
ぱっと子どもたちが現れ、エイミーが小さな指揮棒をふる。
「ノクティアさん、いつもありがとう! これからも、ずっと一緒です!」
合図とともに、小さな歌声と鈴の音が広場に響く。
「春の風に 花が咲く
みんなの笑顔 まぶしいね
ノクティア様 ありがとう
ずっと一緒に いようね――」
子どもたちの歌に、ノクティアは思わず胸がいっぱいになる。
「みんな……ありがとう……!」
最後に、リリーとマルクが両手でそっと花冠を差し出す。
「これは、ノクティア様のための“幸せの冠”です」
ノクティアは少し涙ぐみながら、ゆっくりと花冠をかぶる。
「とっても素敵……私、こんなに嬉しいのは初めてです」
その言葉に、子どもたちはわっと喜び、エイミーも「よかったね」と微笑んだ。
* * *
その夜、ノクティアはエイミーと静かに並んで夜空を見上げた。
「……本当に、ありがとう。私は、こうしてみんなと過ごせるだけで幸せなの」
「みんなも、ノクティアさんがそばにいてくれることが一番の幸せなんですよ」
「また、明日も“春の魔法”が起きるといいな」
エイミーはそっとノクティアの手を握り、「きっと大丈夫」と優しく笑った。
春の星空の下、砦と王都に“ほっこり”としたぬくもりが静かに広がっていく。
(きっと明日も――誰かのやさしさに、私は救われるんだ)
そんな想いを胸に、ノクティアはそっと花冠を抱きしめた。
あちこちに花飾りや旗がはためき、通りのパン屋からは焼きたての甘い香りが漂う。
そんなある朝、エイミーは砦の旧医務室で、子どもたちと小さな作戦会議を開いていた。
「えっと、今日は“ノクティアさんをびっくりさせる日”なんです!」
エイミーの言葉に、子どもたちは大きくうなずいた。
「お花で冠を作って、広場でみんなで歌うの!」「わたし、笛も練習したんだよ!」
砦で暮らす子どもたち――リリー、マルク、トトなどは、すっかり“王都っ子”らしくなってきたが、心の奥ではいつもノクティアのやさしさを忘れずにいる。
* * *
「だけど、ノクティア様は最近ちょっと元気がなさそう。王都の人たちも“またいなくなっちゃうんじゃないか”って心配してるみたいで……」
小さなリリーがぽつりとつぶやく。
「だから、みんなで“ずっと一緒だよ”って、伝えたいんだね?」
「うん!」
エイミーはやさしくほほえむと、「じゃあ、早速お花を摘みに行きましょう」と声をかける。
* * *
午前中いっぱい、子どもたちは郊外の小さな野原へと出かけた。
春の陽射しが眩しく、足元には色とりどりの花が咲いている。
「見て見て、こんなに大きなクローバー!」「タンポポ、たくさんあるよ!」
子どもたちは夢中で花を集め、エイミーは落ちていた枝やツルを上手に編み始める。
「リリー、もうちょっと細い茎を持ってきてくれる?」「マルク、白い花は王都の象徴だから、真ん中に入れよう」
花冠づくりは想像以上に難しく、途中でちぎれてしまったり、うまく輪にならなかったり。
「わあん、ぼくの花、くしゃくしゃになっちゃった……」
「だいじょうぶ。どんな花も、一緒に集めたらきっときれいになるわ」
エイミーの優しい声に、トトは涙をぬぐってがんばる。
* * *
午後には、広場の片隅で“秘密の練習”が始まった。
エイミーはピアノの代わりに鍋とお玉でリズムを取り、子どもたちは自作の笛や鈴を鳴らす。
「ノクティア様、びっくりするかな?」「絶対びっくりして、泣いちゃうかも!」
子どもたちの元気な声に、通りがかったカイラスが思わず足を止めた。
「おい、なんだか騒がしいな?」
「団長! これは“ひみつの作戦”ですから、絶対にノクティアさんに言っちゃダメですよ!」
「……そうか。それなら俺も、ちょっと手伝うか」
カイラスは無骨な手で花冠をひょいと直し、「ここは編み方をこうしてみたらどうだ?」とアドバイス。
子どもたちとカイラス――ちょっと珍しい組み合わせに、エイミーも思わず吹き出した。
* * *
日が傾き始めたころ、広場には春の花とリボンで飾った即席の舞台ができあがっていた。
夕暮れの光のなか、エイミーと子どもたちはドキドキしながらノクティアの到着を待っていた。
そこへ、リュゼルも「何やら楽しげなことが行われているらしいな」と現れる。
「ノクティアには、みんながどれだけ想っているか、きっと伝わるさ」
* * *
そして夕食のあと、カイラスがノクティアを「ちょっと来てくれ」と広場に連れてくる。
「え……? なにかしら……?」
ノクティアが首をかしげて花壇の横に立つと、
ぱっと子どもたちが現れ、エイミーが小さな指揮棒をふる。
「ノクティアさん、いつもありがとう! これからも、ずっと一緒です!」
合図とともに、小さな歌声と鈴の音が広場に響く。
「春の風に 花が咲く
みんなの笑顔 まぶしいね
ノクティア様 ありがとう
ずっと一緒に いようね――」
子どもたちの歌に、ノクティアは思わず胸がいっぱいになる。
「みんな……ありがとう……!」
最後に、リリーとマルクが両手でそっと花冠を差し出す。
「これは、ノクティア様のための“幸せの冠”です」
ノクティアは少し涙ぐみながら、ゆっくりと花冠をかぶる。
「とっても素敵……私、こんなに嬉しいのは初めてです」
その言葉に、子どもたちはわっと喜び、エイミーも「よかったね」と微笑んだ。
* * *
その夜、ノクティアはエイミーと静かに並んで夜空を見上げた。
「……本当に、ありがとう。私は、こうしてみんなと過ごせるだけで幸せなの」
「みんなも、ノクティアさんがそばにいてくれることが一番の幸せなんですよ」
「また、明日も“春の魔法”が起きるといいな」
エイミーはそっとノクティアの手を握り、「きっと大丈夫」と優しく笑った。
春の星空の下、砦と王都に“ほっこり”としたぬくもりが静かに広がっていく。
(きっと明日も――誰かのやさしさに、私は救われるんだ)
そんな想いを胸に、ノクティアはそっと花冠を抱きしめた。
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