【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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88話「精製裁判と正義」

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 王都の朝。
 リオとミナは、管理庁の相談会場で市民や子どもたちの悩みを聞きながら、
 「自分たちにできること」を模索し続けていた。

 

 そんな時、村からの緊急連絡がリオのもとに届いた。

 

 「リオ先生、大変なんです! ユウトくんが“偽カード事件”の容疑で捕まったって!」

 

 村の弟子、ユウト。
 明るく真っ直ぐな少年で、リオのカード教室でも一番のムードメーカーだ。
 ――そのユウトが、王都のカード市場で“偽カード”販売の現行犯として連行されたという。

 

 ミナは驚き、リオは激しい動揺を覚えた。

 

 「そんなはずない。ユウトが人をだましたり、犯罪なんて絶対に……!」

 

 すぐに管理庁の裁判所へと駆けつける。
 そこではすでに「精製裁判」が始まろうとしていた。

 

 ◆

 

 精製裁判所。
 王都の厳粛な法廷には、管理庁の審査官、市民ヒーロー、新聞記者、
 さらには“カード犯罪撲滅”のプラカードを持った市民たちまで詰めかけている。

 

 被告席のユウトは顔面蒼白でうつむいていた。

 

 「ユウト、俺たちが絶対に真実を証明するからな!」
 リオは優しく声をかける。

 

 審理官が告げる。

 

 「被告ユウト、あなたは王都のカード市場で“偽グラン=ヴァルドカード”を販売した容疑がかけられています。証拠は没収されたカード一式と、市場での目撃証言です」

 

 ユウトは泣きそうな声で叫ぶ。

 

 「違うんだ! 僕は……僕は、村の子にあげようと持っていただけで、売ったりしてない!」

 

 裁判官は冷たく言う。

 

 「だが、証拠のカードは確かに“偽造”と判定されています。
 本物のグラン=ヴァルドカードなら、公式認可シールがあるはずだが?」

 

 ユウトはますます小さくなっていく。

 

 ミナがこっそりリオにささやく。

 

 「ユウトが自分で偽造するなんて絶対あり得ない。
 きっと誰かにすり替えられたか、だまされたんだよ!」

 

 リオは決意し、証人席に立つ。

 

 「証人リオ=バルド、証言をお願いします」

 

 リオは静かに語りはじめた。

 

 「ユウトは小さい頃から正直者です。
 自分のカードを大事にし、誰かを傷つけることは絶対にしません」

 

 「しかし、証拠は“偽造カード”であることを示しています」

 

 「……カードは“見た目”だけじゃ本物かどうかわからないんです。
 本物のグラン=ヴァルドカードには、僕とグラン=ヴァルド自身の“心の紋章”が宿っています。
 もし裁判所が許すなら、精製検証をさせてください」

 

 裁判長がうなずき、「証人リオにカード検証を許可する」

 

 リオは証拠品のカードを手に取り、
 自らのグラン=ヴァルドカードを並べる。

 

 「このカードは“想い”がこもっていません。
 精製時のエネルギーも違う。ユウトが作ったなら、必ず“光の紋章”が浮かびます」

 

 リオはカードを精製ルーペにかざす。
 自作カードには、ユウト自身の“希望”を象徴する微かな光が浮かんだ。

 

 しかし証拠品カードには、まったく反応がない。

 

 「どうだ! これが、ユウトが“本物”を作るときの証拠です」

 

 傍聴席がざわめき、記者たちもメモを取る。

 

 さらにリオは続ける。

 

 「王都のカード市場は最近“偽造団”の温床になっています。
 彼らは無実の子どもを“運び屋”に仕立て上げ、
 自分たちの犯罪を隠すためにすり替えを行っている!」

 

 ここで市民ヒーローの一人が、
 「その通りだ! 市場で“黒衣の男”が子どもにカードを持たせているのを目撃した!」
 と証言。

 

 さらにミナも“村の証言者”として立ち上がる。

 

 「ユウトくんは、村でもずっと正直者です。
 偽カードなんて使わない。
 どうか、大人たちが子どもの声を信じてください!」

 

 裁判長が判決を下す。

 

 「証拠不十分。ユウトは無罪――釈放します」

 

 ユウトは泣きながらリオとミナに抱きついた。

 

 「ありがとう、先生……もう絶対、人を疑うのはやめる」

 

 リオは頭をなでて言った。

 

 「正しいことを信じ続けるのが、精製師の誇りだよ」

 

 裁判所を出ると、市民たちが「リオ先生!」「ユウトくん、よかったね!」と拍手喝采。

 

 だがリオの心の中には、
 (正義を貫くのは難しい。けれど、子どもたちの未来のため、俺は――)
 という静かな決意が燃えていた。

 

 王都に、やさしい春風が吹き抜けていく。
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