【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第38話「仲間たちの旅立ち」

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 新時代の“希望精製”が世界に根づきはじめてから、季節はまたひとつ巡ろうとしていた。

 

 王都リュミエールの広場は、相変わらず子どもたちの笑い声に満ちている。けれど、リオたち――“伝説の冒険”を駆け抜けた仲間たちの胸には、ひとつの決意が芽生えていた。

 

 それは「別れ」と「新たな始まり」――
 かつて命を懸けて共に戦った絆は、これからはそれぞれの未来へ繋がっていく。

 

 *

 

 朝の広場にリオとミナ、カイ、ユリエル、ティアナ、シュトラが集まった。

 

 春の柔らかな日差しに包まれ、みんなが少し照れたように顔を見合わせる。

 

 「なんか……こうして集まるのも、もうしばらくお預けになりそうだな」
 カイが大きな声で明るく笑う。

 

 「ギルドリーダーとしてやっていけるか、正直不安はあるけど……村で鍛えた度胸を信じるしかないか」
 シュトラは照れ隠しのように帽子を直した。

 

 「私は王都の研究機関で“精製理論”の研究に打ち込むわ。新しい時代に、もっとたくさんの“心のかたち”を解き明かしたいの」
 ユリエルが静かに決意を語る。

 

 「私は……やっぱり、世界を見てまわりたい! まだ見ぬ土地の人々と出会って、“希望精製”を広める冒険に出るよ!」
 ティアナが目を輝かせる。

 

 「俺は村の師匠になるつもりだ。子どもたちにバトルの楽しさも“希望”も伝えたい。リオ、たまには帰ってこいよ?」
 カイが笑いながら拳を差し出す。

 

 リオはしっかりと拳を合わせ、笑顔で応えた。

 

 「みんな、それぞれの道があるんだな……。でも、どこにいても、俺たちの絆は消えないよ」

 

 ミナも、仲間たち一人ひとりに花飾りを手渡していく。

 

 「この花は、私たちの“未来の約束”の印。みんなが困ったとき、きっと支えてくれるからね」

 

 *

 

 別れの時が近づき、ひとりずつ言葉を交わす仲間たち。

 

 シュトラは、最後まで強がりを見せながらも「……絶対にまた集まろうな」と言って手を差し出した。
 ユリエルは「理論で世界を変えるのも、リオたちと歩いた日々があったから」と穏やかに微笑んだ。
 ティアナは「どんな遠くにいても、心はすぐ隣にあるよ!」と明るく手を振る。
 カイはリオの肩をどん、と叩き、「世界一のカードクリエイターとして、ちゃんと見守っててくれよ」と笑った。

 

 それぞれが、しっかりと歩き出すための一歩を踏みしめていた。

 

 *

 

 やがてみんなは、広場からそれぞれの道へと歩み出す。

 

 シュトラはギルドの仲間と合流し、新しいリーダーとして凛とした背中で町を出る。
 ユリエルは分厚い本と研究ノートを抱え、研究所への道を進んでいく。
 ティアナはリュック一つで見知らぬ土地へと冒険の旅に出発した。
 カイは村の子どもたちに囲まれながら、頼れる兄貴分として新たな日々を始める。

 

 リオとミナは、その背中をしばらく見送っていた。

 

 「……みんな、立派になったね」
 ミナがしみじみと呟く。

 

 「俺たちも、ちゃんと自分たちの道を歩いていかなきゃな」
 リオが答える。

 

 ふたりは静かな丘の上まで歩き、これからのことを語り合った。

 

 「リオは、どうするの?」
 ミナが問いかける。

 

 リオは少し照れくさそうに、でも真剣な目で言う。

 

 「俺は……これからも“希望の精製”を広げたい。
  世界中の子どもたちや、大人や、誰もが自分の想いを形にできるような、そんな場所を作りたい。
  そして……ミナ、ずっとお前の隣にいたい。ふたりで新しい未来を作りたいんだ」

 

 ミナは涙をこらえきれず、リオの腕に飛びついた。

 

 「ありがとう、リオ。私も、リオと一緒に歩いていく。どんな未来でも、ふたりなら乗り越えられる気がする!」

 

 静かな風が草原を渡る。

 

 リオは小さな箱をポケットから取り出し、
 中から一枚のカードを差し出した。

 

 「これ、“約束のカード”だ。
  俺が初めて精製した、お前の笑顔のカード。これからも一緒に生きていこう――ずっと、ずっと」

 

 ミナはそのカードを大切に抱きしめ、微笑みながらリオにキスをした。

 

 「はい、“未来の約束”だね」

 

 夕日が世界を黄金色に染めていく。
 それぞれの道を歩み始めた仲間たちも、空の下のどこかで、
 きっと笑い合い、時に涙しながら、それぞれの“伝説”を作っているのだろう。

 

 リオとミナも、手を取り合い、
 新しい一歩を踏み出した。

 

 ――これは、誰もが“希望のカード”を持てる時代を切り拓いた、
 少年と少女の物語。
 そして、これからも続いていく未来のはじまりだった。
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