転生悪役令嬢、現代に転生したら学園の女王になってました!? 〜スマホって何ですの!?まずはそこから教えてくださいまし〜

HARy

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異世界令嬢、現代に爆誕!

恋の悩み!? ギャルでも時には迷うのですわ!

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 学校帰り。星ヶ丘駅前のマクドナルド。  
 ギャル三人娘+リリアーナがいつもの席に腰を下ろし、ポテトを囲む。

「今日の英語、ガチで無理だったわ~」

「マジそれ! 謎の現在完了形!」 
 
 リリアーナはナゲットを慎重にソースへとくぐらせていた。

「ふふ、ですが皆さまの“完了”はすでにされていたようですわね?」

「え、姫、うまいこと言ったつもり?」 

 「ナチュラルにダジャレぶっこんでて笑う」

 笑いが弾ける、いつもの放課後――のはずだった。

「……」

 ふと、ほのかが窓の外をぼーっと見つめているのに気づく。 
 れいとマイが、顔を見合わせた。

「ほのかー。今日テンション低めじゃね?」

「てか、さっきからめっちゃ静か。なにかあった?」

「え、えぇ!?  そ、そんなことないよぉ~~?!」

 バレバレなごまかし方に、れいが一口ストローを吸ってから問い詰める。

「……言っちゃいなよ。絶対なにかあるでしょ」

 マイも、黙って小さく頷く。
 リリアーナもまた、優しい声でそっと聞いた。

「ほのかさん。もし、心にひっかかることがあるのなら、わたくしたちに話していただけませんこと?」

 その一言に、ほのかの表情が一瞬だけ揺れた。

「…………もしかしたら、ちょっとだけ……あるかも」

 ポテトを一本、つまむ。

「好きな人……いるかも、なんてね」

 その言葉に、場が一瞬静まり返った。

「えっ、本当ですの!?」
「マジで!?」
「だれ? どこ高? いやどこ中?」

 嵐のような反応。  
 その中心で、ほのかは小さく、でも確かに笑った。

「びっくりしすぎ~~~……でも、ありがと」

 だけどその笑顔の奥に、どこか寂しげな気配があったのを、リリアーナは見逃さなかった。

「で、で、だれ!?誰に恋しちゃったの!?ほのかが!?」

 れいがテーブルに身を乗り出し、マイも目を丸くしている。

「わたくしも……非常に、気になりますわ!」

「いやいやいや、そこまで食いつかれると逆に言いづらいんだけど……」

 ほのかはドリンクの氷をかちゃかちゃといじりながら、小さく息を吐いた。

「……陽翔、なんだよね」

「「「…………ええええええっ!?」」」

 一同がハモる。

「ほのかと陽翔!? てか、あんましゃべってなくない!?」

「いやでも……なんか、わかる気もする」

 ほのかは、ふっと目を伏せてつぶやいた。

「……遠足の時、さ。覚えてる?」

 場の空気がすっと静かになる。

「りりあちゃんと朝倉君が、ふたりでちょっと遅れてて……そのとき、あたし、何気に不安だったの」

「え……あのとき?  ほのか、めっちゃ『まーいっかー』ってノリだったじゃん」

「……そーゆーふうに見せてただけ。……でも内心はめっちゃ不安だった。どこではぐれたかも分からなかったし、無事に合流できるかとか、遭難してないかとか……」

 リリアーナが小さく目を見開く。

「それでね……そのとき、陽翔がさ。ずっと近くにいてくれて、何も言わなかったんだけど――『あのふたり、戻ってくるよ。……ほのかは、大丈夫か?』――って、ひとことだけ。それがさ、なんか……すっごい、響いちゃって」

 ほのかの声が少しだけ震える。

「ギャルやってるとさ、強いって思われがちだけど……ほんとはけっこう、脆いんだよ?」

 れいもマイも、それ以上何も言わずに、ただ頷いた。

「わたくし……なんとなく、わかりますわ」

 リリアーナの声はとても優しかった。

「その言葉が、きっと心に寄り添ってくれたのですわね」

「……うん。あのときから、ちょっとずつ気になっててさ。今さら自分でも笑えるけど」

 ポテトを一口かじりながら、ほのかは少しだけ微笑んだ。

「だから……この気持ち、どうすればいいんだろって」

 その言葉に三人は自分の納得のいく答えが出せず、黙ってしまう。

「でさ……」

 ほのかは、ストローをくるくると指でなぞりながら、ぽつりと口を開いた。

「私が告白したらさ、変に思われたりしないかなって……ギャルなのにって」

「は?」

 れいの反応は即座だった。

「なにそれ。ギャルだって恋するっしょ。関係なくね?」

「いや、わかってるんだけどさ……」

 ほのかは視線を落としながら、続ける。

「陽翔ってさ、地味っていうか……落ち着いてるじゃん。きっと、あたしみたいなのタイプじゃないっていうか……。うちら、はしゃいでるし、髪明るいし、騒がしいし」

「それがあたしらの良さじゃん」

 れいが即答する。

「ギャルがギャルらしくいるのって、悪いことじゃないし。むしろ“元気もらえる”って言ってもらえることも多いしさ」

「でも……陽翔には、うるさいって思われてたら……って思うと、怖いんだよね」

「……それは、たしかにちょっとわかる」

 マイが静かに頷く。

「でもさ、陽翔は“ほのか”を見てたんだよね?  ギャルかどうかじゃなくて。遠足の時に、ちゃんと気づいて声かけてくれた。なら、そこに答えあるんじゃない?」

「マイ……」

 ほのかが思わず顔を上げる。

「わたくしも……そう、思いますわ」

 リリアーナの言葉が、すっと響く。

「ギャルであることを恥じる必要などありませんわ。それは、あなたの誇りでもあるはずですもの」

「……そっか。ありがと」

 ほのかはふっと笑い、いつもの調子に少しだけ戻った。

「よーし、次会ったら……もうちょい、頑張って話しかけてみよっかな」

「それでこそ、うちらのほのか!」

「失恋しても泣きついてきていいからな」

「うっわプレッシャー!」

 笑い声が、またテーブルに戻ってきた。


 ***


 帰り道、夕暮れの駅前ロータリー。  ギャルたちはそれぞれ違う方向へ散っていき、リリアーナとほのかがふたり残った。
 空は淡いオレンジ色に染まり、微風が制服の裾を揺らす。

「……ねぇ、りりあちゃん」

 ほのかが足を止めて、小さくつぶやく。

「さっきはありがとね。マジで、救われたっていうか」

「お礼を言われるようなことではありませんわ」

 リリアーナはにこりと笑って、ほんの少し前を歩いた。

「……でも、ほのかさんが“自分の気持ち”をまっすぐ見つめたこと、それはとても勇気のあることですわ」

「……そっか。ありがと」

 ふたりは並んで歩き出す。

「伝えることが、怖くなる気持ち……わたくしも、少しわかりますの」

「え?りりあちゃんも……?」

「はい。ですが、心からの想いは、きっと誰かの心にも届きますわ」

 リリアーナの言葉に、ほのかの目が少し潤む。

「よし……もうちょっとだけ、がんばってみよっかな」

「応援しておりますわ」

 そう言ったリリアーナの笑顔に、ほのかも自然と笑顔を返していた。
 夏の始まりの、少し前の午後。
 ひとつの恋と、ひとつの勇気が、静かに息を吹き返す。
 そして、また明日。それぞれの、ほんの少しだけ特別な日常が続いていく。
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