私から全てを奪った妹と貴方から全てを奪ってあげましょうか?

青杉春香

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後半

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「エルミア、迎えに来たぞ。具合はどうだ? 大丈夫か??」

「来てくれたのですね、マルゼン様!」

「当たり前ではないか。君のためならどこにだって向かうさ。たとえ、それが地獄でもね」

「マルゼン様……」

「エルミア……」

二人は見つめ合い、抱擁を交わす。

まるで世界にたった二人しか居ない。そんな雰囲気すら醸し出している。

だが、其れも束の間。

エルミアの表情が一変する。

「これでお姉様から全てを奪い切ったわ……ククク」

とても嬉しそうに、だけれどどこか恐怖を感じるようなそんな猟奇的な乾いた笑いをする。


刹那、影から、

「なんてね……!」


「お姉様……!?」「アイシア……!?」

驚愕する二人に対して、

「こうなることくらい今までの経験で予測してたわよ。だからね、終わりにしにきたの。最後の最後まで愛せて最高ねあなたたち」

「一体何を言ってるんだ……」

今更、困惑してるの? 笑わせないでよ。

「ダイト、あとはお願いね! あ、彼は私の真の婚約者ね」

アイシアの後方からもう一人の人影が姿を現した。

「騙してたんですかお姉様!」

「どういうことだ!アイシア!! 本気で愛してくれていたのではなかったのか!? 裏切ったのか……!」


はあ……。心底嫌になる。

「裏切ったですって? それは貴方達の方でしょう? 本気で愛してたかって当たり前ではありませんか。本当に愛してましたよ。二人の関係に気づくまではね。でも逆にありがとうダイトはね、私の運命の相手と思えるほど素敵な人なの」


「よくもアイシアを傷つけてくれたな。覚悟しろお前ら」

ダイトは腰から短剣を抜き、マルゼンの胸を刺す。

と、同時に、エルミアの悲鳴が部屋中に響く。

「本当はお前も始末したいところだが、アイシアの妹だから、勘弁してやる。だが、これでも歯向かうというのなら次はないと覚悟しておけ」

「私の大事な妹エルミア。これが奪われる悲しみよ? よく脳裏に刻むことね」




それ以降、妹が私に対して嫌がらせをすることはなくなった。

私から最愛の人を奪って、その最愛の人をさらに奪ってやった。

マルゼンに関しては、戒律に反するということで始末の許可は国から降りていた。

今では本当に愛してくれる人と二人で幸せに暮らしている。
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