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2話

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私には二つ下の妹がいる。

名前はロメリア。

とても大切な妹だ。

私の意見を聞かずに、婚約を即了承した両親とは全然違って、私のことを慕ってくれている優しい子なのだ。

私が少しばかり村を離れるときも目に涙を浮かべ、寂しがるような子。

私が困っているときはいつでも力を貸してくれるような存在。

ロメリアへの日々の感謝は大きい。

ゲス王子と婚約するということは、彼女にも何かしら被害が及びかねない。

美しい女性なら誰にでもとっかえひっかえに手を出すような人間だ。

風の噂によると、妻にはかなりの数の子供を産ませ、子供の様子は一度も見たことがないという。

つまり、行為自体にしか興味はなく、むしろそのための道具のように扱っているということだ。

もし自分がそうなったらなどと考えてはゾッとして体が硬直してしまう。

何より不安なのは奴が妹に手を出さない保証がないということ。

だからこそ思い切って私は妹に相談をしたのだった。

「お姉様、私と考えが同じなようで安心しました。あのような人の元へ行ってはなりません。ロメリアと一緒にいましょう」

あまりの優しい言葉に私は泣きそうになった。

私をしっかりと理解してくれているのは彼女だけだ。

私が提案した複雑な計画にも彼女は一つも否定をせずに首を縦に振った。

「私にお任せください。お姉さまには一切の危害を加えさせません」

「いいえ、私だってもちろん戦うわよ。これは私の責任でもあるもの」


私たちには武器がある。

固い絆。それだけではない。

幼少期から培ってきたというやつだ。

平和ボケしたゲス王子ではおそらく、対応することはできない。


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