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第2章 矢作、村を出る?!
強行突破***俺の尻終了のお知らせ***
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ショックアブソーバー
あの頃、単なる部品として低価格での交渉をした事は頭にある。
本当に申し訳なかった。
その節は、こんなに重要な部品とは思わなかったんだ。
喋れば、舌を噛みそうな揺れの馬車の中で
吐き気との戦いは続く。
ここにショックアブソーバーさえあれば。
昨日だってかなり厳しかったが、今日は訳が違う。本気の全力疾走中。
理由は簡単。
昨日、焚き火で寝ていた隣村の人達からのSOS。
盗賊が出て飢餓状態の村は、滅亡寸前。
村滅亡とか聞いて、草薙と2人で驚いていたら、この世界では良くあると言われた。
村長に、自分達の村は矢作さんと出会えて幸運だったのだと言われ絶句する。
2台目の馬車に積んだ食糧をお分けしようと言った時の涙の2人に胸が詰まる。
『これで子供達が助かります。』
えっ?大人達は?
『矢作さん、隣村の人数を賄えるだけの食糧はありません。せめて子供達だけでも助けて欲しいと。王都に救援を頼んだらしいのでそれが間に合えば何とか。』
何とかって。
間に合わなかったら、大人は?
大人が倒れたら、助かった子供達だけじゃ生き延びられない。
『すみません。力不足で。』
好青年の弱々しい笑顔の返事に、顔に言いたい事が出てしまったと気づいた。
そうだよな。
好青年だって、村長だって分かっているのだ。全員を助けられないって。
『じゃあ、俺の収納庫から出すよ。多分隣村の人達が数日くらいは食い繋げるから。』
『そ、それは。』
『俺の収納庫は大丈夫だから。とにかく急ごう。間に合わなければ意味がないから。』
そりゃそう言いました。
急ごう、と。
ガタンッ!!
一際大きく揺れた馬車の中で、草薙が手元のビニール袋に縋り付く。
そう、俺は今日貴重な日本のビニール袋を使うと決めたんだ。
【簡易エチケット袋】
止められない馬車の中の救世主様。
ビニールの素晴らしさを称えるより、今は隣村まで後どのくらいか聞きたい。
のだが、声が出ません。
出したら別のモノが出るから、無理!!
『大丈夫ですか、矢作さん。』
いや、だから声を出すのは無理だから。違うものなら簡単だけど。
『これを少し。』といきなり高尾が何かを口に突っ込んだ。
だから、今は出口専用なんだ。
うえっ。。ん?
『ミント水?』
すーっと胸に広がる爽快感に吐き気が綺麗さっぱり無くなる。
草薙にも口に突っ込もうとして悪戦苦闘している高尾にコツを教えた。
『鼻つまむと口が開くから。』
『本当だ。さすが矢作さんありがとう。』
『いや、こっちこそ助かったよ。』
草薙も救世主様を手放す事が出来たらしい。良かった。
と、言いたいけど実際は声が出ないので、全て口パクだ。
馬車の柱にしがみついていても、揺れで喋れないのだ。
マンモスの全力疾走の本気を見たよ。
『おい、あれは何だ?!』
御者台にいるルフの叫びで我々の面倒を見てくれてた村長が前方に駆け寄る。
『あれは救難信号です。』
『何のだ!!』
『再び、盗賊が出たとの知らせです。』
はっ?
食糧不足で飢える村人の所に何を奪いにきたんだ?
『矢作さん、子供たちです。我が国では禁止はされてますが未だに奴隷が存在するのですよ。』悲しそうな村長の一言に草薙と顔を見合わせる。
そんな。
餓死しそうな子供たちを更に攫うのか。
『高尾。力を貸してくれ。どうにか早く村へ着くように出来ないか?』
ちょっと長い口パクに高尾が固まる。
『高尾様、分かりました。緊急事態だから奥の手を出せと言ってます。』と村長の翻訳。
へっ?
奥の手とか言ってないけど。
まあ、趣旨は合ってはいるが高尾の目の奥の光が気になるんだが。
真顔で頷いた高尾がさけんだ。
『真なる力よ、解放せよ!!』
ドドドドド!!!!!
マンモスの本気舐めてました。
猛スピードって、命懸けだった。
もし、村長と好青年が俺たちを捕まえていてくれなかったから馬車の外に放り投げられてたのは間違いない。
まだあと1時間の距離を数分で到達したが、
身動きが取れるようになるにやっとなって見たものはちょっとトラウマモノだった。
結果、間に合った。
盗賊は倒されたのだ。
ただ、倒れた盗賊達の上で、血まみれの刀を肩に担いでにっこり笑っている好青年に
『大丈夫です。命は取ってないですから』と爽やかに微笑まれ、固まった。
平和の国 日本人。
仕方ないと思う。
それにしても、好青年。
グッジョブ!!
子供たちと抱き合う村人達を見て心からホッとした。本当に間に合って良かった。
さすがは隊長だ。
でも…。
とりあえず、ジル様と呼ぶかな。
そう言ったら凄い勢いでやめて欲しいと縋り付かれた。
『矢作様。お願いです。今まで通りにお呼びください!!』
『じゃあ、そっちも矢作様呼びは無しで。
本当にジルは凄いな。でも、ここからは俺の出番だな。
でも…
ちょっとお尻と相談したからでいいかな?』
ショックアブソーバーが欲しい!!!
俺の尻は、終了のお知らせ中です。
それから3日間、俺と草薙は椅子に座れなかったのは、別の話。
あの頃、単なる部品として低価格での交渉をした事は頭にある。
本当に申し訳なかった。
その節は、こんなに重要な部品とは思わなかったんだ。
喋れば、舌を噛みそうな揺れの馬車の中で
吐き気との戦いは続く。
ここにショックアブソーバーさえあれば。
昨日だってかなり厳しかったが、今日は訳が違う。本気の全力疾走中。
理由は簡単。
昨日、焚き火で寝ていた隣村の人達からのSOS。
盗賊が出て飢餓状態の村は、滅亡寸前。
村滅亡とか聞いて、草薙と2人で驚いていたら、この世界では良くあると言われた。
村長に、自分達の村は矢作さんと出会えて幸運だったのだと言われ絶句する。
2台目の馬車に積んだ食糧をお分けしようと言った時の涙の2人に胸が詰まる。
『これで子供達が助かります。』
えっ?大人達は?
『矢作さん、隣村の人数を賄えるだけの食糧はありません。せめて子供達だけでも助けて欲しいと。王都に救援を頼んだらしいのでそれが間に合えば何とか。』
何とかって。
間に合わなかったら、大人は?
大人が倒れたら、助かった子供達だけじゃ生き延びられない。
『すみません。力不足で。』
好青年の弱々しい笑顔の返事に、顔に言いたい事が出てしまったと気づいた。
そうだよな。
好青年だって、村長だって分かっているのだ。全員を助けられないって。
『じゃあ、俺の収納庫から出すよ。多分隣村の人達が数日くらいは食い繋げるから。』
『そ、それは。』
『俺の収納庫は大丈夫だから。とにかく急ごう。間に合わなければ意味がないから。』
そりゃそう言いました。
急ごう、と。
ガタンッ!!
一際大きく揺れた馬車の中で、草薙が手元のビニール袋に縋り付く。
そう、俺は今日貴重な日本のビニール袋を使うと決めたんだ。
【簡易エチケット袋】
止められない馬車の中の救世主様。
ビニールの素晴らしさを称えるより、今は隣村まで後どのくらいか聞きたい。
のだが、声が出ません。
出したら別のモノが出るから、無理!!
『大丈夫ですか、矢作さん。』
いや、だから声を出すのは無理だから。違うものなら簡単だけど。
『これを少し。』といきなり高尾が何かを口に突っ込んだ。
だから、今は出口専用なんだ。
うえっ。。ん?
『ミント水?』
すーっと胸に広がる爽快感に吐き気が綺麗さっぱり無くなる。
草薙にも口に突っ込もうとして悪戦苦闘している高尾にコツを教えた。
『鼻つまむと口が開くから。』
『本当だ。さすが矢作さんありがとう。』
『いや、こっちこそ助かったよ。』
草薙も救世主様を手放す事が出来たらしい。良かった。
と、言いたいけど実際は声が出ないので、全て口パクだ。
馬車の柱にしがみついていても、揺れで喋れないのだ。
マンモスの全力疾走の本気を見たよ。
『おい、あれは何だ?!』
御者台にいるルフの叫びで我々の面倒を見てくれてた村長が前方に駆け寄る。
『あれは救難信号です。』
『何のだ!!』
『再び、盗賊が出たとの知らせです。』
はっ?
食糧不足で飢える村人の所に何を奪いにきたんだ?
『矢作さん、子供たちです。我が国では禁止はされてますが未だに奴隷が存在するのですよ。』悲しそうな村長の一言に草薙と顔を見合わせる。
そんな。
餓死しそうな子供たちを更に攫うのか。
『高尾。力を貸してくれ。どうにか早く村へ着くように出来ないか?』
ちょっと長い口パクに高尾が固まる。
『高尾様、分かりました。緊急事態だから奥の手を出せと言ってます。』と村長の翻訳。
へっ?
奥の手とか言ってないけど。
まあ、趣旨は合ってはいるが高尾の目の奥の光が気になるんだが。
真顔で頷いた高尾がさけんだ。
『真なる力よ、解放せよ!!』
ドドドドド!!!!!
マンモスの本気舐めてました。
猛スピードって、命懸けだった。
もし、村長と好青年が俺たちを捕まえていてくれなかったから馬車の外に放り投げられてたのは間違いない。
まだあと1時間の距離を数分で到達したが、
身動きが取れるようになるにやっとなって見たものはちょっとトラウマモノだった。
結果、間に合った。
盗賊は倒されたのだ。
ただ、倒れた盗賊達の上で、血まみれの刀を肩に担いでにっこり笑っている好青年に
『大丈夫です。命は取ってないですから』と爽やかに微笑まれ、固まった。
平和の国 日本人。
仕方ないと思う。
それにしても、好青年。
グッジョブ!!
子供たちと抱き合う村人達を見て心からホッとした。本当に間に合って良かった。
さすがは隊長だ。
でも…。
とりあえず、ジル様と呼ぶかな。
そう言ったら凄い勢いでやめて欲しいと縋り付かれた。
『矢作様。お願いです。今まで通りにお呼びください!!』
『じゃあ、そっちも矢作様呼びは無しで。
本当にジルは凄いな。でも、ここからは俺の出番だな。
でも…
ちょっとお尻と相談したからでいいかな?』
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それから3日間、俺と草薙は椅子に座れなかったのは、別の話。
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