備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第2章 矢作、村を出る?!

やる時はやる?!***草薙視点***

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『完成したぁー。』草薙の気の抜けた声。

『おうよ。お前さんすげーよ。』コルバにしては、褒め言葉は珍しい。

『ホント、そうですね。』グーナンにしては言葉少なの返事。

3人それぞれの感嘆混じりの感想を聞くものはここにはいない。

心地よい疲労感に浸っていたら、外がやけに騒がしい。
無論、この村に着いた時から、常に緊急事態発生中だったけど。

大揺れの馬車のせいで、身動き1つとれなくても周りは見えていた。
日本では、見た事もない痩せこけた子供達は土の上にただ横たわっていた。
どんよりとした目と合った時、思わず目線を逸らしてしまった。

ただ、怖かった。
隣の先輩も同じ気持ちだったみたいだ。


それでも俺より早く立ち直った先輩の動きは、素早かった。こういう時、先輩はホント凄い。

全くロスなく動き、緻密な計画を寸分の互いもなく完遂してゆく。

俺の目標とする、神木矢作先輩の本気の姿はやっぱ、かっこいい。
俺もやるべき事をやらなきゃな。

異世界転移に俺TUEEEを夢見てる場合じゃない。
得意分野で踏ん張るしかない。

そして、先輩より1日遅れて完治した俺は先輩の作った辞書片手にコルバさんの所へ押しかけたんだ。

『キヒテ、タイセツなこと。タノミ、でふ』

キョトンとする2人に俺は自分の書いた設計図を見せた。

『サスペンスション』
『ショックアブソーバー』
『スプリング』

それは、揺れを抑える構造。

言葉に自信の無い俺は、設計図ならと思いついた。

工学部出身。
今の会社に入るために使っただけの、今や素人だけど。

この世界よりは、科学技術の進んだ日本。

どうだ?
食いついてくれたか?

この世界の言葉も、技術力も何も知らない俺が馬車を改造するにはコルバさん達鍛冶師の協力が必然。

『♪・€€\♪」5』
『」÷=25554』

さっぱり分からない。

ん?

コルバさんが、辞書を掴んだぞ?

「コレ作る」か、書いたよ、日本語。

マジか。
異世界人特典ないのに、この習得の速さは??

ちょっと負けてられないよ。

『そう作る』
こちとら、リトライ鬼に何晩も徹夜させられたんだ。


そして、何回も挫けそうになる度にあの揺れる馬車を思い出して踏ん張った。
絶対、次は揺れない馬車にする!!

俺だって、、。

みんなに馬車を披露しようと、小屋から広場に向かう途中に更に悲鳴が幾つも聞こえて、これは只事では無いとコルバさん達が走り出す。

だいぶ遅れて、俺も到着して固まった。
ジルさんに姫抱きにされて運ばれる先輩。

青白い顔色は、また無理して過労で倒れたのだと分かった。
村長さん達は、騒いでいるが俺には分かる。


社蓄🟰常に過労中

そう、先輩は【社蓄】だと言い切れる。

その先輩が、あの惨状を見て動いたんだ。
動けなくなるまで、突っ走るに決まってる。


『先輩、たいしょうぶ。かろろだから。
いつも無理ふる。それいつも同じ。』

心配するコルバさんに伝えた。
カタコトでも、通じ合える仲になったのだ。

頷いたコルバさんが、ジルさんの後を追いかける。俺の言葉を伝えるため。

そして馬車をお披露目するため。


目が覚めた先輩が、これで少し元気になってくれるといいな。そう思いながら、自分もフラリと身体が、揺れた。

不味いな、俺も過労か。
ま、先輩の教え子だから俺も【社蓄】だし。

俺は少しふらつく足取りで、寝床へと向かった。起きた時の先輩の一言を楽しみに。


***  矢作視点 ***

目が覚めて、またやったと、気づいた。
会議が、重なる年度末は良く会社のソファにぶっ倒れてたな。

『大丈夫ですか?』
不安そうな顔のジル。珍しい。

いつも飄々として雰囲気で柔らかく相手を躱すのに、こんな顔させちゃったか。

『大丈夫だ。単なる疲労だよ。』

そう答えて起き上がろうとしたら
『ダメです。まだ寝ていて下さい!!』と村長の大きな声。

ドアからかけ出す様子に、かなり心配かけたと気付かされる。
反省しきりの俺に、薬師だと言う者が脈をとりにきた。

小さな村には、医師はいない。
薬師がいるだけ、マシな方だ。

『もう大丈夫です。でもしっかり食べて下さい。食事を疎かにしてはいけません。』

どこかで聞いたセリフに、素直に頷くと薬師は笑顔になってドアから出ていった。

入れ替わりに、ルフが食べ物を持ってきてくれた。しっかり食べて治さなきゃ。

『矢作さん、貴方のお陰でこの村は今、滅亡の危機を脱しました。野草も沢山集まりラッセル殿が買い付けております。
でも、貴方には本当は反省して欲しいです。私達の寿命が縮まってしまいますよ。』
弱々しくほはえむジルに対抗する術なし。

『わ、分かった。善処します。』
『ゼンシユ?』

『いいよ。それより草薙はどうしてる?』
ここに駆け込んで来ない所をみると、奴も同じかもしれない。
あれだけ、真剣な様子だったのだ。今頃…

『徹夜が続いたそうで、お休み頂いています。』

やっぱりな。
でも、倒れないだけ奴の方がマシか。

『それより草薙さんとコルバ達で凄いモノを作ってくれたんです。この世界の常識を覆すモノです!!』
いつもは落ち着きのある村長はどこいった?

でも、村長も興奮するその品物を見てみたいと、外へ出る事にした。
まぁ、僅かな時間だが(村長やジルに許されたのが…後は寝床に強制送還だ。)

!!!

お、驚いた。

俺の切望するモノが付いた【新馬車】!!

揺れない馬車を草薙がコルバさん達と協力し作り上げたそうだ。

しかもたった3日で。

奇跡だ…村長が呟く。

愛おしそうに馬車に触っていたら『あ、先輩!!』

向こうから、草薙がかけてくる。



『草薙ーー!!!ありがとなーー!』


お前、やる時きゃやる奴だったな。
と、思わず笑顔が溢れてきたら、、

『先輩、ガンメン!!』

『ばーか。俺はどこいっても笑顔がチャームポイントなんだ。』

『いえ、顔面きょうい』

『顔面恐怖症、か?』
と聞くと。

満面の笑みで頷いた。

そんな草薙の頭をはたきながら、

『うるせーよ。しかしお前もやるときゃやるな。凄く助かった。』と言えば、怖いものを見た顔してこっちを見た。


俺は笑顔満面になりながら、もう一度、草薙の頭をしっかりとはたいておいた。










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