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第2章 矢作、村を出る?!
事態の収拾は、誰の手の中に?!
しおりを挟む***とある一室で***
薄暗い室内は、整然とした様子だ。
防音対策の施された部屋には、数人の男達がいた。
1人机の前に座る男は、とてもイライラとした様子で机を何回も指で叩いていた。そのコツコツとした音にすら本人の苛立ちは募っているようだ。フードに隠れた表情は見えないがそれでも不機嫌であるのは間違いない。
イライラはやがて爆発を迎える。
そう、遂には彼の前に立つ男に向かって怒鳴り出したのだ。
『何をやってるんだ!!お前達に渡したのは確かに毒薬だったはずだ。
それなのに、何故全員目覚めないだけの状態なんだ!!!
まさか、毒薬を盗ん…』『そんな事やってねぇーよ。俺たちは殺しの請負が本職だ。本来ならわざわざ、毒薬なんてめんどくせぇ事するかよ!!』
聞いている男の表情は、イライラなどは生易しいものではない。既に確実な殺気だ。
目の前の男が雇い主であり更には後ろ盾があるから、僅かに我慢が出来ているが、その状況を目の前の男は分かっていない。
既に一触即発の事態だ。
ダン!!
机を叩きながら恨み節は止まらない。
『クソっ。こんなはずじゃなかったんだ。
今頃、既に奴らは逮捕されているはずだったのに。』
男の限界はリミットを超えたが、殺意を実行に移すには後ろ盾が邪魔をした。
『とにかく、俺たちの仕事は終わった。
報酬は前払いだから、これで関係は終わりだ。いいな、これ以上関わるな。』
そう言い終えると男の姿は消えた。
先程より、苛立ちをみせていたフードを被っていた男はそれを見た瞬間、何もなかった様に落ち着いた様子で立ち上がった。
そして静かな声で一言だけ言った。
『消せ。』
その瞬間、彼の後ろに存在感なく立ち尽くしていた2人の護衛は消えた。
それからおもむろにフードをとった男は、静かに笑った。男の首から下がっている装飾品らしきものが鈍く光を放っていた。
*** 草薙視点 ***
はぁ。ため息がまた1つ。
草薙は自分の肩を叩きながら、ここ数日の目まぐるしい変化を思い出していた。
閑古鳥
→
大盛況
→
大問題出来
→
デモ隊出没
→
現在
『我々は【のど飴連盟】です。それは勿論、眠りから目覚めた方々もいます!!』
『我々は【ドナン村】の住人です。私は、野盗と飢えから救って頂いた奇跡の村【ドナン村】の村長です!!』
『私は【ゴート】の町長です。ドナン村から買い取った薬草のおかげで流行病から救われた街です!!』
『我々は…』以下同文。
ふぅ。
駆けつけた謎の団体たちは、あっという間にデモ隊を蹴散らして先輩へ突撃した。
暑すぎて、ドン引きする先輩をよそにそれでも感謝大会の終わりは見えない。
こんな状況でも先輩の顔は晴れない。
あぁ、けどやっぱ凄いな。そう言えば日本でもこんな事があったなぁ。
手違いでクレームが相次いで、それを全て先輩1人の責任問題にされかけた時。下請けの社長さん達が駆けつけて誤解を解いてくれた。
嵐の様な抗議に部長や取締役たちまで総出で宥める場面は、今でも思い出す度に胸の奥がスッキリ!!する。
しかし、あの時の青木課長の風見鶏振りは凄かった。攻める方からあっという間に先輩を庇って良いとこドリしてたっけ。
まあ、信頼は実績からしか生まれない。
先輩はそれを地で行く人だ。
あっという間にチリヂリになったデモ隊は元々、烏合の衆だったらしい。地元の人たちの振りをしていたと。(ジルさんが雇われたゴロツキだと言っていたっけ。)
それでも、先輩の顔はまだ悩みの中にあるようだ。
『皆さん、今回はこの様に駆けつけて下さり本当に感謝しかないです。しかし、私の早急なやり方がこの被害を生んだ事は、それだけは変わることの無い事実です。
ラッセルさんにも申し訳のない気持ちでいっぱいですが、それでもここで止まる訳には行きません。
薬草は本来、人を助けるモノ。そして商売は信頼と実績です。人々の幸福の中にしか本当の商売の成功はない。私はそう考えています。
ラッセルさん。改めてもう一度私を信じてくれませんか?
それと、ジルさん、村長。私は復讐は望みませんよ。ただ、このままではダメです。
二度とこのようなことの無い様にしたいので力を貸して下さい。』
怒涛の日々からの先輩の決意。
俺も同じ気持ちだ。
絶対負けたくない。こんな酷い事がまかり通る世の中は地獄だ。
その時、焦げた匂いがしたかと思ったら
ドスン!!!
瀕死の男が目の前に倒れてる。
ええーー??
何で??
『高尾、あれをくれ!!』驚いて固まる人達の中で、先輩はサッと動いた。
高尾が出した【神花】の雫をひと垂らし唇に零す。意識のない人間だから飲み込めないだろうとみんなが予測したその時。
ええーーーー!!!!
キ、キ、キッス??
先輩が唇をこじ開けて押し込む。
。。ん。うん。
そうだよね、救命行為だよね。。
結構な男前だからとかが理由だったら、、怖いけど。
それより【神花】はすごい。
あっという間にボロボロだった男の傷は癒えてゆきゆっくりを目を開いた。
あっ。
心配そうに覗き込む先輩と目が合った。
かなり至近距離で。
ほーら、仰け反ったよ。お互いに。
『高尾、ありがとう。さあ、そろそろ姿を表してもいい頃じゃないか?』
先輩が誰もいない空間に話しかけた。
霊感?!
ええーー、あれは何??
何もなかった空間からぼんやりと姿が洗われた。
全員の目が1点に釘付けだ。
その先には
焦げた子猫が震えていた。
*** ジル視点 ***
『キセ。そちらの証拠品は集まったのか?』
暗闇の中、呟けば東の辺境の村にいるはずのキセの返答が返ってくる。
『ご存知の癖に、私にそれを尋ねるのですか?それよりも昼間の出来事に関して…』
そこまで言いかけてキセの言葉が止まった。
ククク。
キセも気づいたか。触れてはいけない事柄のひとつだと。
『ゴホン。』
咳払いは何も無いはずの空間から響いた。
『ジルよ。お主も人が悪いの。我がおる事を承知でキセを揶揄うとは。
キセよ、【アレ】については王とて触れる事は許さぬ。よいな』
(矢作に任せるしか、我とて手段がないのだから。予想外の出来事ばかりだ。魄とて後始末で手一杯で当てには出来ぬし。)
。。。
心の呟きは、微かな声として出ていると気付かぬ嚮導様の様子は、ジルに自体の深刻さを思いしらせていた。
ここが限界だな。
情報は生き物だ。開示すべき時を逃せば全く意味をなさない。
『嚮導様。彼奴の後ろ盾にかの国があります。それが今回の騒動と草薙様の召喚に関係しているかと。証拠は我が父が掴んだ様子。後で開示致します。』
キセの顔に驚愕と焦りの色が浮かんだ。
それは理解出来る。
あの【ガーア宗教国】が絡んでいるのだ。
しかも諜報部隊すら掴まぬ【ガーア宗教国】がその黒幕たる証拠品の入手まで〚仁〛の家で掴んだとなれば焦りもする。
複雑な感情を過ぎらせながらも、嚮導様の次の言葉を待つ様子に既に隊長としてキセの実力を垣間見た。
『それは把握済だ。それよりも何か別の力が働いた形跡があるのだ。ジルよ。その正体こそ矢作と我々の敵であろう。その調査任せられるか?』
やはりご存知だったか。
私は深く頭を下げ『承りました。』と答えながらも事の重大さに改めて思いを巡らせた。
月明かりに照らされた室内は物音ひとつしない。
激動の一日の終わりにしては、静かだ。
嚮導様が去られた後、キセとの情報の擦り合わせもし、この先の協力体制も整えた。
我が父への伝言も飛ばした。
のど飴事件で見せた矢作様の横顔が頭から離れない。見た事のない無の表情。
これ以上ない失態だ。
だが、言い訳はしない。
しないが、今回の【矢作様への手出し】
決して許しはしない。
音のない部屋で窓の外を見つめるジルはそのまま夜明けまで動くことはなかった。
窓の外を見つめるその横顔は穏やかに…見えた。
ただ1つ、燃えるような瞳だけを除いて。
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