備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第3章 目的地は、敵地?!

この世界は…

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『ですから、この世界はまだ未定のままの状態で神様が消えてしまわれたのです。』

1人はベットの上に座って、半分目が閉じている所を見ると多分、寝ているな。
かたや、テーブルに自作のノートを広げてメモを取りながら目が開きすぎて血走っているのは、傍から見れば引くレベルだ。
矢作殿は、本当に面白い男だな。

ワシの目から見た異世界人は、全くの両極端と言えよう。

『ーー神様に仕えていた5匹の神獣が、今も神の訪れを待ってこの世界を守っているー

伝承によると簡単に言えばそのような内容になります。
ただ、我々只人の間では様々な意見が対立していて見解は分かれています。』

『ヤト様。神獣は私が出会った以外にどのような姿をされているのでしょうか?また神獣にはどの様な力があるのでしょうか。
もしかして』
『矢作さん。その先は私がお答えします。

そう言って久しぶりに口を開いたのはジルだ。

『実は5匹と言う説明は言い伝えでしかありません。正確には三匹しか確認されていないのです。』

『うむ。よろしい。仁家の坊主も少しは勉強をするようになったのだな。

だが、それは十分ではない。実は既に4匹目が確認されている。それが確認されてのは【聖国】でのみだ。
この事実は、他国との情報の共有もなく、無論我が国ですら把握してない。まぁ、ワシの伝手がなければこの情報すら、表には出なかっただろう。』

ジルの顔に驚きの表情が浮かぶ。
まあ、分からんでもない。諜報部隊などと関わっておったのだ。知らぬ事はないと思っておったのだろう。

世界は広いのだ。
ワシとて、寿命の限り知識を広めんとしておるが中々に難しい。

『3匹は出会った事があるので分かります。』と矢作殿が答えればジルが、またもやドキッとした顔をした。

『知らなかったのか?キョウに教わったのだ。しかしあと2匹については全く知らなかった。5匹なんて。。
しかもこの世界に神様が不在とは。もしかしたら、その影響が魔獣化がすすんだ理由なのか?』

ふむ。やはり理解の早さは並の人間ではないな。全く違う世界から来たのに、こんなにも熱心に理解に努めておる。

それに比べて…我が弟子は、既に夢の中とは。。。

これからが思いやられるわい。

矢作殿と話をしていると、何か新たな発見に繋がる気がするな。

『それはまだ確定的なものではありません。原因を探るどころではなくなったのです。
魔獣の出現によひ、我々の普段使っていた主要街道が危険度が上がったために調査は難航しているのが現状に為す術なく。
さて、矢作殿。我々只人にも神様はこの世界で生き延びる手段を授けてくれました。
何かわかりますかな?』

矢作殿は1つ頷くと答えた。
『恐らくスキルとか、装身と呼ばれるものではないかと。それにオーラとか??』

やはり、理解が十分でないか。だからこそ、我が弟子は危機的状況なのじゃがな。

『実はその3つは全く違う力。それが重要なファクトリーです。

まずはスキル。
これは誰もが潜在的に持つ力。そして後からでも身につける事の可能なものも多い。
戦いに向くものだけではない。
正に暮らすためのもの、生き延びるためのものだ。

しかし、装身は違います。
これは生まれつき。しかも家門毎の遺伝のみで引き継がれます。
その力は壮絶なものが多い代わりに、その身を滅ぼす者も多いのが実情です。

ですから【奇跡であり、呪いである】
そう言われています。

オーラはまた、違いますが混乱されるといけないのでここでは省きます。

さて、ここまでは分かりましたかな。』


矢作殿は下を向いたまま考え込む表情で固まっている。恐らく彼のかんがえていたのとは、違うと気づいたのだろう。
まあ、異世界人である彼にはそれらは羨む力に見えたかもしれぬな。

『ヤト様の言われる事、何となく分かります。ここにいるジルも村長も時に重責に、もがいている様に感じました。
あの…』

おや、珍しいのお。
言い淀むとは。彼を初めて見た時からキッパリした正確と群を抜いた思い切りの良さを確信したおったのだが、今、言い淀む彼の姿はそうは見えぬな。

ふむ。

『矢作殿。何でも聞いてください。この【音室】は特別性なので、王とてこの場の事は預かり知らぬものです。耳も目もない場所ですから。』

そう答えた途端横入りする者が口を出す。
(まぁ予想通りだがな。彼女にしては、中々に我慢した方じゃろう。)

『そうよ!!そして王家もその装身には振り回されているわ。私がその代表よ!』

勢いよく割り込んで入ってきたのは王女に
矢作殿はキョトンとしておるな。
まあ、見た目子供の姿だからな。

王女とは分かるまい。
何と。。それ見たさに割り込んだか。。
こんな風に面白がるとな、王女様も大概にせぬとな(自分の容姿に驚く人々を面白がるのは悪い癖じゃな。)

『ふふふ。大丈夫よ、おじ様。
あのね、矢作殿。
私の名前はユトよ。この国の第2王女なの。それにね、これでも貴方より年上よ。
私の装身はね。私が歳を取る事を許さないのよ。』

くくく。
珍しく矢作殿が挙動不審になっておるな。
おや、草薙も目を覚ましたか。
ユト様が気になって目が覚めたか。
彼女の歌声を聞いたからの。

『先輩、王女の歌声はそりゃ美しい天使の声でしたよ。
でも、それこそが装身なのだそうです。』

起き上がった途端、割り込んだのは居眠りを誤魔化す為だな。
しかし、草薙の発言は正確には事実と違う。ふむ、早計なのが草薙の欠点じゃな。
彼女の歌声は装身を操る為に懸命な努力により身につけたスキルだ。
だが、それでも彼女の装身は難しく、コントロールは不十分のままだ。
だからこその【音室】なのじゃ。

『王女殿下、お目にかかれ光栄です。私はこの通り礼節を弁えぬ者です。どうか御無礼は異世界人であるとお目こぼしをお願い致します。
。。
そして失礼を承知で申し上げるなら、御身の装身と歌声は別々では?』

なんと!!
ユトのびっくりした顔なぞ、いつぶりか。
ワシも些か驚いたわい。

『矢作殿の言う通りです。中々に優れた目を持っておられる。
彼女の装身は明かす事は出来ませんが、歌声こそがスキルなのです。血のにじむ努力で彼女が手に入れたスキルが【歌声】です。

この様に必要なら後から身につけられる。
それがスキルの特徴です。』

『あの、我々でもスキルは身につけられますか?』期待を込めた目で矢作殿がワシを見たが、ワシは首を横に振るしかない。

『それは可能です…が、少しばかり難しい事も多いです。
その理由は、【異世界人が持つ能力は、この世界では名のないもの】と言うことが原因です。スキルでも装身でもない、貴方のお持ちの能力。それは正に神の御業そのものですな。』

『備蓄スキル。。が、ですか?』

『それがそのものズバリなのか、ワシにも分かりかねますな。本来は別の力である可能性が高い。ですからそこから波形したのでは。とも、考えられるますしな。』

彼を【鑑定】【分析】しようとすれば、反発力が働いて弾かれる。
僅かに覗けたものの、そこまでだ。

恐らく嚮導様の何らかのお力だと思うが。

だからこそ。

『しかし、矢作殿は良い所に目をつけられましたな。
それこそが、我が弟子の存在を揺るがす原因でもあるのではないかと。

矢作殿の安定しない力は、力の本質を知らね故ではと。
だとすれば、それはいつ暴走するかもしれぬ。そして、その暴走こそが草薙の転移に関わっております

まあ、それはワシの予測の範疇ですがな。』

『そ、それはどうすれば!!』
矢作殿が珍しくワシに肉薄して大声を出した。それほど切迫したいるのか。
その顔は、この間、草薙の状況を聞いて飛び込んできた時と同じ顔色をしておる。

『迂闊には言えぬが、1つ方法があります。』

『そ、それは…』

『五匹目の神獣様。その方は恐らく【聖国】におられます。その方を…』

ガタン。

そこまで言いかけた所で突然、矢作殿が椅子を跳ね除けて立ち上がった。

何が?!

驚くワシを見もせず、矢作殿の目は既に出口の方を向けたまま『ありがとうございます。このご恩は…』と言いながら、外へ出ようとしておるのを慌てて腕を掴んで止めた。

落ち着いて見えた矢作殿の悩みの深さを見た気がしたがこれはダメだ。


『矢作殿。それではダメですじゃ。
其方は、新たなスキルを身につけてから向かわねば。あの地は今や敵地に近いしの。』

慌てて普段の口調になったの。
しかし、矢作殿の顔に浮かんだ焦りの色により一層苛立ちが混じる。

『それは我が弟子も同じ。分かっておるな。』振り返れば草薙も頷いていた。

『それと、出立までに詰め込めるだけ知識を学んでいくのもお忘れなく。特に我が弟子には更にギッチリと。』

『ヤト様はどこまで…』
これまで静かに聞いていた仁家の坊主が漏らした言葉を聞かぬ振りをしながら、少し笑うとお茶を勧めた。

久しぶりにやり甲斐のある仕事に心躍らせながら。。
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