貴方の思い描く、異世界とは違う物語が存在します。格好の良い勇者も魔王もいない世界の物語を綴った本棚にお越しください。

南悠

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寂しげな口笛

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彼は、何時も多くを語る事は無かった。
談笑している仲間の話を静かに聴きながら、少し離れた位置で、微笑みながら聞きいっていた。
だから、ふと気が付いた時は、いつの間にか席を外しており、外で静かに寂しげに口笛を吹きながら、星空を眺めていた。

だが、彼は強く、そして優しかった。
先陣で魔物に挑み、電光石火の如くに聖剣で切り付けて倒し、常に仲間の安全を気に掛けていた。

戦いは、佳境に入ると強靭な魔王軍が襲い掛かって来たが、そんな魔王軍を打ち破り、四天王を倒して魔城に乗り込んで行く姿は、凛々しく頼りがいの有るリーダーとして見詰めていた。

そんな彼が、魔王を倒す為に単身で広間に乗り込んで行く姿が、僕の見た最後の姿だった。

遅れながら、僕達が広間に乗り込んで行くと、其処には斬り付けられ、息絶えた魔王の姿と聖剣が残されているが、彼の姿が見当たらない。

僕達は、彼の痕跡を探し回ったが、彼の姿はおろか、生死を判断する事も叶わなかった。

彼を除いた仲間だけで王に報告をして、僕らの仕事は終わりを告げた。
各々のが、褒賞を受けて、新たな領地もしくは故郷と別れて行く。

僕もひとりで新しい生活を始める事となった。

年月が経て、寒風が窓の外を吹き過ぎていく。
風の音が、あの時の彼の口笛に聴こえる時が有り、僕は咄嗟に窓に駆け寄り、外を眺めるが、ただ寒い雪が舞うのみ。

遥か遠きより語られた、勇者の物語である。



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