貴方の思い描く、異世界とは違う物語が存在します。格好の良い勇者も魔王もいない世界の物語を綴った本棚にお越しください。

南悠

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進む時間の中で

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男が召喚された。
大理石に刻まれた魔方陣。
王を中央に屈強な騎士が立ち並ぶ。

王からは
「王国は、魔王軍に圧され危機に有る。勇者よ、そなたの力を貸してくれ」
無表情で、淡々と高揚ない、言葉がつらなる。

何故か、この大広間は怪しげな雰囲気に包まれており、本当に危機感が感じられない。

男は戸惑いを隠せないが、様子を見る積もりで
「微力ながら、協力致します。」と答えた。
本心は、怪しげなら何時でも逃げれる心持ちで身構えていた。

大広間に連れられて、ご馳走満載のパーティーが始まった。
無表情な貴族達の群れと同じく無表情な使用人達。だが、料理の味は悪くない。いや、極上と言っても過言では無いだろう。
男は鱈腹食べては、案内された寝室で優雅な眠りに就いた。
翌日から、騎士団との剣術と魔法の訓練。
程よい運動の後の、豪華な食事と睡眠。
日々が続く程に、男の疑惑を考えなくなり、毎日を楽しく過ごして行った。



遠い地で、執事に問いかける男がいた。
「今回の晩餐会の主食は、決まったのか?」
執事は、男の問い掛けに
「只今、適度の運動と美食の餌、そして十分な睡眠を取らせております。もう暫く、お待ち頂けますか。」とニンマリと笑いかけ答えた。

静かにその時に向けて、時間は無表情で進んでいく。


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