貴方の思い描く、異世界とは違う物語が存在します。格好の良い勇者も魔王もいない世界の物語を綴った本棚にお越しください。

南悠

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断片の中に生きる

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「綺麗な夜景だ。」
城壁でひとり佇む男がいた。

「君と共にこの街で暮らしたかったよ。・・・・だが、君のいないこの世界に未練は無いさ。
明日は、此処を旅立つ事が決まったよ。
この風景を、しっかりと目に焼き付けて君のもとへ旅立つつもりだ。」

男は、暫く王都の灯りを見続けた後に、意を決したかの如く、城壁を駈け降りた。


勇者一行は、先日の魔王四天王との戦いに勝利をしたが、二人の仲間を失った。
勇者は、聖女を抱き締めながら、果てることの無い涙を流していた。

二人の棺を護りながら勇者達は、王都に帰還した。
葬式で忙しい日々が続き、残った僅かばかりの時間の中で、かって二人で来た場所をひとりで巡った。

時間は、冷酷に時を刻み、再び王の命令で旅立った勇者達は、王からの失った戦力の補強を拒み、残った仲間達だけで戦場に向かった。
仲間は、だれ一人として、勇者の行動に異議を唱えること無く、ただ前を向き、歩を進める。
ただ、勇者の決意は肌で感じており、友として殉ずる覚悟を決めていた。
その為、彼らも又、親しき人々に別れを告げて、此処に来ていた。

日々は、静かに進むが、歩を進める毎に魔物の攻撃が激しくなっていく。

ふたりの仲間を欠いた分だけ、一人ひとりの負担が強まって行くが、最早勇者一行にとっては、差異でも無かった。

最前線での魔王親衛軍との戦いで、シーフが倒れた。
魔王城での戦いで、剣士とタンクが囮として敵を引き受けている。

ひとり魔王の前に立ち、勇者は戦いを始まった。

勝敗は、此処で記す事は控えたい。
ただ、勇者達が精一杯生きた事だけは、後世の話として断片的に残っていたらしい。


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