貴方の思い描く、異世界とは違う物語が存在します。格好の良い勇者も魔王もいない世界の物語を綴った本棚にお越しください。

南悠

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勇者の帰還

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「エー!本当に帰れるんですか?」

「大丈夫ですよ。魔王城から [ 帰還 ] の魔法書が見つかりました。全ての皆さんを日本とやらに無事帰せそうです。時間軸に尽きましては、魔法書の解読待ちですが、そう時間は掛から無いでしょう。」

「やった!皆で日本に帰れるんだ。」


魔王軍の執拗な攻撃で危機にあった王国。打開策として召喚された勇者30名は、5年の年月を経て、魔王を倒し王都凱旋の最中に知らされた朗報は、皆を歓喜させるに充分だった。


翌日から、彼らは勇者では無く、旅行者となり、帰還の期日を待ち望んだ。

あるグループは、仲間と連れだって王都観光。

女性たちは、宝石店や衣服店を見て回り。

ある者は、珍しい物を探して買い物ツアー。

皆それぞれの休暇を満喫している。


「武器や防具類は持ち帰れないだろう。お金は持ち帰っても使えないし、やはり持ち帰って便利なのは鉱物の類いかな。」

「そうだね。ポーションなどの薬品類は、どう!有ると便利じゃない。」

「そうだそうだよ。Aのスキル [ マジックボックス ] に入れればOKだよ。収納大で時間経過無しだからな。冒険中には、だいぶお世話になったし。」


帰還当日、勇者たちは買い漁った品々を [ マジックボックス ] に積めて、何時もの旅立ちで待ち望んでいる。誰の顔も緊張感が漲り、ゆとりは感じられない。


王宮の広間には、帰還の魔方陣が書かれて多くの術者が、魔力を込めている。

全て準備が万端整って、今や遅しと勇者たちを待っている。


勇者たちは、王様を筆頭に王妃・王子王女の王族、そして、宰相を始め王国の重鎮貴族たちと握手をしている。

騎士団長や騎士たちと別れを惜しんでいる者たちもいる。

冒険者の仲間と泣きながら語り合う者も。


召し使いが帰還の時間が着た事を皆に告げる。


魔方陣が光り出す。勇者たちは続々と手を振り、魔方陣の光の中に歩いて行く。

ひとり。また一人と勇者の姿は霞み始めて消えて行った。

全ての勇者が帰って行った。


日本の学校の教室。

一人ひとりと、生徒が現れた。

「帰って着たんだ!自分たちの教室に帰れたんだ!・・・!!」

生徒たちは、召喚前の教室に、誰ひとり欠けること無く帰ってきた。


異世界で5年もの年月が経っているはずなのに、召喚前の。5年前の姿で全員が立っている。

全員の目には嬉し涙が溢れている。

抱き立って喜び合う者もいる。

ポケットのスマホを見て、受信アンテナが有る事を喜ぶ者もいる。

早速、スマホで電話をして満面の笑みを浮かべる者もいる。


全ての皆さんが喜んでいる?


・・・!ひとりだけ、喜び半分、落胆半分の生徒がいた。

[ マジックボックス ] のA君だ。


「魔力が無くて、[ マジックボックス ] が開かない。全てのお土産が取り出さないよ。」

悲痛の叫びが、皆に伝播し、複雑な笑い声が教室にコダマした。


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