貴方の思い描く、異世界とは違う物語が存在します。格好の良い勇者も魔王もいない世界の物語を綴った本棚にお越しください。

南悠

文字の大きさ
118 / 316

小さな嘘

しおりを挟む
小さな嘘が発端だった。

ある若い男が、酒場でジャツキ片手に自慢していた。
「俺は、あの勇者の子孫だ。これは勇者の使用した剣、俺が譲り受けた家宝なんだ。」

かって魔王が、世界を蹂躙いていた時代に召喚された勇者は、忽ちの内に魔王軍を蹴散らし、魔王を倒した。そんな伝説の勇者が存在した。

若い男は、辺境の貧しい農家の生まれだった。
ただ、勇者と偶々、姓が同じだった事から小さな嘘を付き、酒場で奢って貰いながら、嘘のエピソードを最もらしく語ってその日をくらしていた。
剣とて、納屋に有ったボロい剣を持ち、最もらしく語り尽くしていた。

男は冒険者を生業として、その日を暮らしている。
レベル7で、スキルも乏しく、ステータスも普通に過ぎないランクDの剣士。
親しい仲間も無く、1人でゴブリンを倒して暮らし、酒が入ると誰彼と構わず小さな嘘で酒をたかる日々。それもこの日が最後となった。

何時もの様にギルドで依頼を受け取り、森へ向かう。何故かその日は一匹もゴブリンに出会えず、諦めて帰ろうとした時に、朝黒い大きなオーガが目の前に立ちはだかる。
「お前か、勇者の子孫は。しかし、妙だな。お前からは一向に覇気が感じられない。本当に勇者の係累なのか?・・・まぁ良いか。勇者の子孫を倒す事で俺の株も上がる事だ。勇者を恨むんだな。ワッハハハ。」

男は、震えが止まらないが、一端の剣士では有る、剣を抜き構えてはみたが、足が動かない。

オーガは震えを見て、バカにする様に、
「勇者の子孫よ。お前のレベルじゃ、俺に一太刀も出来まい。しかし、俺は優しいんだ。お前が死ぬ前に一太刀だけ受けてやる。冥土の土産話にするが良いさ。ガッハハハ。」

「・・・。」

「早く来いよ。待ってやるぜ!」

男は逃げる事も叶わない。覚悟を決めてオーガに向かい渾身の一太刀を浴びせたが、ガチーン。オーガの固い皮膚に跳ね返され、男の剣は折れた。
仕方なく、背をっていたボロい剣を構えてみたが、錆び付いた剣は、より一層の悲壮感を漂わせるだけだった。


オーガは、笑いながら「覚悟は良いな。」と吠える。ドシリドシリと間を詰めるオーガ。逃げる事も出来ずに後退りする男。

そこに「助太刀をする。」との掛け声。
振り向くオーガに浴びせる魔法と剣。
冒険者グループがオーガに攻撃を加えた。

偶然の出会いに男は、女神様に感謝した。

突然の攻撃で後退りするオーガ。
追い討ちを掛ける男たち。
魔法がオーガに降り注ぎ、鋭い矢が急所を狙う。
剣がオーガの首すじをかすり、血が吹き出す。
オーガは、大振りの手で冒険者達を倒そうとするが、咄嗟にかわして太刀を浴びせる。
そしてオーガは倒れた。

「大丈夫か?」冒険者達は男に駆け寄った。
男は「ありがとうごさいました。」と震える手足と声で答えた。

話し合いの結果、オーガの一部は男に大半は冒険者達へ譲り渡す。

男は命拾いと伴に急激なレベルアップに襲われた。スキルもステータスもレベルアップに依り、上昇する。
男のその後は、上級冒険者として活躍したと伝えられている。
本当に勇者の子孫かの問いには、歴史書は触れていなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...