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初デート
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週末の地下鉄S駅前で、小山は光史朗を待っていた。
「お待たせ、こや…直也くん!」
未だに名前呼びに慣れていないせいで、光史朗は危うく苗字で小山を呼びそうになった。
今日の光史朗のウィッグは、ナチュラルブラウンに輝くセミロングのウェービーヘア。
その上で薔薇の花飾りがついたヘアクリップをつけている。
服装はセーラーカラーにバルーンスリーブが特徴的なミモレ丈のダークブラウンのワンピース、薔薇の花とリボンがプリントされたオーバーニーソックス、靴はスクエアトゥのストラップパンプスを履いている。
目にはつけまつげにタレ目を強調したアイライン、ピンクと薄いブラウンのアイシャドウ。
頬には薄いピンクのラメ入りチーク、唇にもラメ入りリップを引いている。
「ねえ、ホントによかったの?このカッコで。やっぱり引く?」
光史朗は周囲をキョロキョロ見渡しなが、小山に尋ねてきた。
「いいっていいって、かわいいかわいい!ほら、行こうよ!!」
もじもじとおぼつかない様子の光史朗に対して、小山は上機嫌だった。
「ほら、手を出して!」
小山が手を差し伸べてくる。
「う、うん…」
言われたとおりに光史朗が手を伸ばすと、指を絡めて繋げられて、そのまま歩を進めた。
──ロリィタ服を着て、誰かと手を繋いで歩くなんて、初めてだ……
こんなこと、友達とではなかなかやらない。
初めてのことに、光史朗の心臓はドキドキと高鳴った。
カフェ「フェアリーランド」には、駅から徒歩5分ほど。
この5分の間、光史朗は人目を気にしてばかりで、足取りも結構に重かった。
「見ろよアレ」
「片方デカいな」
「2人とも男じゃない?」
「えー、マジで?」
周囲の人々のヒソヒソ話し合う声が、嫌でも光史朗の耳に入ってくる。
「ほら、着いたよ!このお店!!」
苦痛以外の何者でもない時間がやっと終わって、ようやく目的地に着いた。
「ああ、よかった。あ、あのね、よかったら、できるだけ目立たない席に座らせてくれない?」
「どうして?」
「ぼくみたいにデカいヤツがロリィタ服着てると、やっぱり目立つんだよ。それで、指をさしたり、アレコレ言ってくるんだよ。最悪なのが、盗撮してくる人。ホント勘弁して欲しい…さっきも指さされて、いろいろ言われたしさ」
先ほど周囲の人たちの言葉を思い出して、光史朗は苦い気持ちになった。
盗撮こそされていなかったようだが、大柄な男の身でロリィタ服を着て街を歩くと異常なほどに目立つから、必ずこんな目に遭う。
これには、幾度となく遭遇しても、やっぱり慣れない。
ましてや、今回は小山と手を繋いで歩いているから、ますます目立ってしまうのだろう。
こんな状況でも、小山は手を離すことはなく、ずっと手を繋いだままだった。
──直也くん、嫌じゃないのかな?
「え、さっき?なんか言ってた人いた?」
小山がキョトンとした顔をして、首を傾げてくる。
「うん、いたよ」
「ぜんぜん気がつかなかったな。ほら、お店入ろうよ」
おそらく、小山は人目をあまり気にしないタイプなのだろう。
光史朗は、そんな小山が心底羨ましいと思った。
「お待たせ、こや…直也くん!」
未だに名前呼びに慣れていないせいで、光史朗は危うく苗字で小山を呼びそうになった。
今日の光史朗のウィッグは、ナチュラルブラウンに輝くセミロングのウェービーヘア。
その上で薔薇の花飾りがついたヘアクリップをつけている。
服装はセーラーカラーにバルーンスリーブが特徴的なミモレ丈のダークブラウンのワンピース、薔薇の花とリボンがプリントされたオーバーニーソックス、靴はスクエアトゥのストラップパンプスを履いている。
目にはつけまつげにタレ目を強調したアイライン、ピンクと薄いブラウンのアイシャドウ。
頬には薄いピンクのラメ入りチーク、唇にもラメ入りリップを引いている。
「ねえ、ホントによかったの?このカッコで。やっぱり引く?」
光史朗は周囲をキョロキョロ見渡しなが、小山に尋ねてきた。
「いいっていいって、かわいいかわいい!ほら、行こうよ!!」
もじもじとおぼつかない様子の光史朗に対して、小山は上機嫌だった。
「ほら、手を出して!」
小山が手を差し伸べてくる。
「う、うん…」
言われたとおりに光史朗が手を伸ばすと、指を絡めて繋げられて、そのまま歩を進めた。
──ロリィタ服を着て、誰かと手を繋いで歩くなんて、初めてだ……
こんなこと、友達とではなかなかやらない。
初めてのことに、光史朗の心臓はドキドキと高鳴った。
カフェ「フェアリーランド」には、駅から徒歩5分ほど。
この5分の間、光史朗は人目を気にしてばかりで、足取りも結構に重かった。
「見ろよアレ」
「片方デカいな」
「2人とも男じゃない?」
「えー、マジで?」
周囲の人々のヒソヒソ話し合う声が、嫌でも光史朗の耳に入ってくる。
「ほら、着いたよ!このお店!!」
苦痛以外の何者でもない時間がやっと終わって、ようやく目的地に着いた。
「ああ、よかった。あ、あのね、よかったら、できるだけ目立たない席に座らせてくれない?」
「どうして?」
「ぼくみたいにデカいヤツがロリィタ服着てると、やっぱり目立つんだよ。それで、指をさしたり、アレコレ言ってくるんだよ。最悪なのが、盗撮してくる人。ホント勘弁して欲しい…さっきも指さされて、いろいろ言われたしさ」
先ほど周囲の人たちの言葉を思い出して、光史朗は苦い気持ちになった。
盗撮こそされていなかったようだが、大柄な男の身でロリィタ服を着て街を歩くと異常なほどに目立つから、必ずこんな目に遭う。
これには、幾度となく遭遇しても、やっぱり慣れない。
ましてや、今回は小山と手を繋いで歩いているから、ますます目立ってしまうのだろう。
こんな状況でも、小山は手を離すことはなく、ずっと手を繋いだままだった。
──直也くん、嫌じゃないのかな?
「え、さっき?なんか言ってた人いた?」
小山がキョトンとした顔をして、首を傾げてくる。
「うん、いたよ」
「ぜんぜん気がつかなかったな。ほら、お店入ろうよ」
おそらく、小山は人目をあまり気にしないタイプなのだろう。
光史朗は、そんな小山が心底羨ましいと思った。
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