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結婚してから
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そうしてしばらく経った頃合いに、総治郎と結婚するという話は、実は父の勘違いであることが判明した。
それを知った母が父に詰め寄るのを、直生は襖の影からこっそり見つめていた。
「あなた、どうするんですか?私、もういろんなところに息子が結婚するって言ってしまいましたよ?」
「面目ない、京子…」
「いえ、私のことはいいんですよ。私の体面なんか別にいいんです。直生が可哀想じゃありませんか。あの子、今までお料理やらお裁縫やらいろいろ学んできて、花嫁修行がんばってきたっていうのに…」
母の言葉を聞いて、直生は胸がチクリと傷んだ。
実際に直生は、この家の経済状況を理由に、過去に婚約破棄されたことがあるのだ。
あのときの悲しさときたら、その日から3日ぐらい、ろくに食事も喉を通らなかったほどだった。
──ひょっとして、今回もダメなんだろうか
今後に不安を感じながら、直生は両親の話を聞いていた。
両親はなんとしてでも婚約を成立させようと話してはいたが、いったいどうするのかと、それが気にかかった。
結果、両親がどういう話し合いをしたのかは知らないが、総治郎との結婚が決まった。
式の会場や日取り、その日に着る衣装なども割と簡単に決まった。
実のところ、衣装や式の会場のことなど、直生はあまり気に留めていなかった。
ようやく結婚できたことがありがたかったのと、結婚式の話し合いの際に見た総治郎の凛々しい姿に、胸がドキドキしていたからだ。
総治郎はかなり懐深く、結婚式にかかる費用はすべて自分が負担すると言ってくれたし、その日もスリーピースのスーツをしっかりと着込んでいた。
──この人が、わたしの旦那さんになるんだ…
そう思うと、緊張して上手く言葉を発することができず、話し合いはほとんど父が進行する形となった。
そうして迎えた結婚式。
はじめに会ったときとは打って変わって、袴と羽織で和装した総治郎はますます魅力的に見えて、直生は直視できなかった。
スピーチを真剣に聞くフリをしながら、直生はときどき総治郎の姿を視野に入れた。
同時に、羽織りと袴に包まれた総治郎の裸の体を想像した。
──この人、夜はどんな風にわたしを抱くんだろう?ああ、やだ、いけない。今はスピーチを聞かないと!
これから迎えることになる新婚初夜を密かに想像しながら、直生は結婚式が終わるのを待った。
結婚式を終えると、直生はすぐに総治郎の家に移り住むことになり、大体の荷物はすでに両親が運び出してくれた。
もっとも、直生の私物なんてわずかな衣類くらいのものだし、両親は必要なものがあれば送ってやると言ってくれた。
それこそ、生活に必要なものは総治郎がすでに揃えてくれていたから、両親に何か頼むこともほとんどなかった。
「はじめまして、奥さま。旦那さまからお話伺いました。中野と申します」
家に着くなり、家事代行の女性に挨拶された。
「はじめまして」
「旦那さま、今日は帰りが遅いので、私が先に部屋に案内させていただきますね」
「ありがとうございます」
着いた家はなかなか大きく、立地条件も良い。
室内もなかなか広いが、何より気に入ったのはやはり、総治郎が直生の自室として用意してくれた部屋だった。
それを知った母が父に詰め寄るのを、直生は襖の影からこっそり見つめていた。
「あなた、どうするんですか?私、もういろんなところに息子が結婚するって言ってしまいましたよ?」
「面目ない、京子…」
「いえ、私のことはいいんですよ。私の体面なんか別にいいんです。直生が可哀想じゃありませんか。あの子、今までお料理やらお裁縫やらいろいろ学んできて、花嫁修行がんばってきたっていうのに…」
母の言葉を聞いて、直生は胸がチクリと傷んだ。
実際に直生は、この家の経済状況を理由に、過去に婚約破棄されたことがあるのだ。
あのときの悲しさときたら、その日から3日ぐらい、ろくに食事も喉を通らなかったほどだった。
──ひょっとして、今回もダメなんだろうか
今後に不安を感じながら、直生は両親の話を聞いていた。
両親はなんとしてでも婚約を成立させようと話してはいたが、いったいどうするのかと、それが気にかかった。
結果、両親がどういう話し合いをしたのかは知らないが、総治郎との結婚が決まった。
式の会場や日取り、その日に着る衣装なども割と簡単に決まった。
実のところ、衣装や式の会場のことなど、直生はあまり気に留めていなかった。
ようやく結婚できたことがありがたかったのと、結婚式の話し合いの際に見た総治郎の凛々しい姿に、胸がドキドキしていたからだ。
総治郎はかなり懐深く、結婚式にかかる費用はすべて自分が負担すると言ってくれたし、その日もスリーピースのスーツをしっかりと着込んでいた。
──この人が、わたしの旦那さんになるんだ…
そう思うと、緊張して上手く言葉を発することができず、話し合いはほとんど父が進行する形となった。
そうして迎えた結婚式。
はじめに会ったときとは打って変わって、袴と羽織で和装した総治郎はますます魅力的に見えて、直生は直視できなかった。
スピーチを真剣に聞くフリをしながら、直生はときどき総治郎の姿を視野に入れた。
同時に、羽織りと袴に包まれた総治郎の裸の体を想像した。
──この人、夜はどんな風にわたしを抱くんだろう?ああ、やだ、いけない。今はスピーチを聞かないと!
これから迎えることになる新婚初夜を密かに想像しながら、直生は結婚式が終わるのを待った。
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もっとも、直生の私物なんてわずかな衣類くらいのものだし、両親は必要なものがあれば送ってやると言ってくれた。
それこそ、生活に必要なものは総治郎がすでに揃えてくれていたから、両親に何か頼むこともほとんどなかった。
「はじめまして、奥さま。旦那さまからお話伺いました。中野と申します」
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「はじめまして」
「旦那さま、今日は帰りが遅いので、私が先に部屋に案内させていただきますね」
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