二次元だって、裏切ります

若目

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ハイリはいわゆる「ボクっ子」「ボク少女」を気取っているのか、いや、彼女の場合は「オレっ子」「オレ少女」と言った方が的確なのだろうか。

一人称はいつも「オレ」で、本人曰く「自分は中性」なのだという。
よく「声が低くてカッコいい!と言われる」と自慢しているが、久実子には耳障りでガサツなカンジがして好きではない。
あれはいつのことだっただろうか。

「気づいたときには中性だったんだよなー。中学のときはスカートとか履かなかったし!LGBT?とかにも理解あんだよね、オレ」

などと口走っていたこともあり、それはどこか「男っぽい自分」に酔っている節がある気がした。

彼女の顔だって好きじゃない。
いつも赤や紺なんかの派手な色のカラーコンタクトをしていて、見たこともないような濃いアイメイクを施している。
たぶん、これはコスプレイヤーしかしないようなメイクだ。

もっとも、そこだけ見れば充分カッコいいと言えるのだけど、彼女の顔つきは決してかっこいいものではない。
鼻は丸くて平べったくて、唇はタラコみたいに分厚いし、こめかみや額にはニキビがいくつも吹き出していた。

彼女の顔を初めて生で見たとき、久実子はいつも見ているコスプレ写真との違いに唖然としたものだ。

SNSにアップするコスプレ写真なんて、たいていは修正が効いているものと知ってはいたが、想像以上だったのだ。
あまりの残念具合に、がっかりしたというよりちょっと笑ってしまいそうになった。

ハイリは、ファッションセンスもいただけない。
モスグリーンに染めた髪は、普段からまともに手入れしていないのか、いつもパサついている。

これはパンクロック・ファッションというのだろうか。
レザーやスタッズがやたらとついた黒や紫の服ばかり好んで着ていて、蜘蛛やスカルのシルバーアクセサリーの主張が激しく、いつでもジャラジャラとうっとおしい。
これらすべてを「男性的」と勘違いしているところも、ハイリが苦手な理由のひとつだった。





そのハイリの真逆みたいな存在が、うってぃだった。
うってぃは一重まぶたの細目に薄い唇の、地味で薄い顔立ちをしている。
いつでもノーメイクにすっぴん髪で、アンダーリムの赤いメガネをかけている。

彼女は今日はフリルブラウスを着て、リボンやレースがたくさんついたハイウエストのスカートを履いている。

服自体は華やかでかわいらしいが、タイツや靴の色は服とはいっさい合っていないし、顔つきの地味さ加減と服の華やかさがなんともミスマッチだ。
うってぃはファッションセンスが、どこもかしこもチグハグなのだ。

彼女はハイリとは違って声は異様に高く、かなり早口でまくしたてる。
久実子は、何度か彼女の制作した動画を見たことがある。

彼女の考察動画自体は面白かったし、動画で聞く高い声と、早口でまくし立てるような話し方は、配信するときのキャラ作りだと思っていた。
しかし、現実にもうってぃはこんなキャラクターだったのかと思うと、今となっては少し引いてしまう。

そんなわけで、久実子はこの2人が少し苦手だった。
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