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思わぬ出会い
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再配信はデマだったと知ると、久実子はまたしてもあのときに抱いた怒りが込み上げてきた。
こんな酷い噂を流したのは誰なのか。
TwitterをはじめとするSNSはもちろん、いろんなところで犯人探しが始まり、さまざまなな憶測が飛び交った。
しかし、インターネット上で広く流布したデマの出どころを、特定するのは不可能に等しい。
当然、現在に至るまで、このデマを流したのは誰かはわかっていない。
それでも、悪いことばかりではなかった。
これをきっかけに、ダクストはまた話題になり、いわゆる「出戻り」「再燃」をする人が増えた。
久実子もそのひとりで、ある日、思い立ってダクストのイラストを描いTwitterにあげたところ、それが約5000リツイートされて、そこからフォロワーも増えた。
このグループに入るように言われたのは、まさにそんなときだった。
遡ること3ヶ月前。
誘ってくれたのはマキナだった。
Twitterの「よろしければ、一度会ってくれませんか」というダイレクトメッセージをもらったのかきっかけだった。
彼女は編集者をしていて、担当していた雑誌でダクストを取り上げたことがあり、それをきっかけにダクストをプレイし始めたそうだ。
そんなマキナと出会えたことを、久実子は心底幸運に感じていた。
このマキナを通じて、新しい友人もできたから。
いまここにいるハイリ、うってぃ、きゃさりんがそうだ。
ハイリは、Twitterフォロワー約9000人のコスプレイヤー。
ウツミはYouTuberをしていて、チャンネル登録者数は約8万人ほど。
きゃさりんは、要エリカの漫画家デビュー当時からのファンで、当時はまだ存在していた要エリカのファンクラブ第一号のファンだったという。
いつだったか、未だに持っているというファンクラブの会員証を見せてくれた。
そこには確かに、「会員番号 001」と書いてあった。
この場にいる全員が全員、いわゆる「界隈の有名人」というやつで、久実子はその仲間入りを果たしたのだ。
これほど喜ばしいことはない。
今までは遠巻きに見ていたような人たちと知り合えて、今はこうしてともに食事までしている。
なんたる光栄だろう!
久実子は、ほーっとマキナを見つめた。
「ねえ、クーミン。ホントに大丈夫?オレ、鎮痛剤持ってるけど、飲む?」
だらだらとした動作でカレーライスを食べていたハイリが、話しかけてきた。
彼女の口の端には、カレールーで茶色く変色したご飯粒がついている。
どうやら、撮影とSNSへの投稿は終わったらしい。
すっかり冷めてしまったカレーライスは、あまり美味しくなさそうだ。
食べているハイリの表情からも、それが見て取れた。
「あ、大丈夫です!はい…」
久実子は飛んできた虫を払い除けるように、顔の前でブンブン手を振った。
実を言うと久実子は、このハイリが苦手だった。
いや、正確には、ハイリ以外も苦手なのだけど。
こんな酷い噂を流したのは誰なのか。
TwitterをはじめとするSNSはもちろん、いろんなところで犯人探しが始まり、さまざまなな憶測が飛び交った。
しかし、インターネット上で広く流布したデマの出どころを、特定するのは不可能に等しい。
当然、現在に至るまで、このデマを流したのは誰かはわかっていない。
それでも、悪いことばかりではなかった。
これをきっかけに、ダクストはまた話題になり、いわゆる「出戻り」「再燃」をする人が増えた。
久実子もそのひとりで、ある日、思い立ってダクストのイラストを描いTwitterにあげたところ、それが約5000リツイートされて、そこからフォロワーも増えた。
このグループに入るように言われたのは、まさにそんなときだった。
遡ること3ヶ月前。
誘ってくれたのはマキナだった。
Twitterの「よろしければ、一度会ってくれませんか」というダイレクトメッセージをもらったのかきっかけだった。
彼女は編集者をしていて、担当していた雑誌でダクストを取り上げたことがあり、それをきっかけにダクストをプレイし始めたそうだ。
そんなマキナと出会えたことを、久実子は心底幸運に感じていた。
このマキナを通じて、新しい友人もできたから。
いまここにいるハイリ、うってぃ、きゃさりんがそうだ。
ハイリは、Twitterフォロワー約9000人のコスプレイヤー。
ウツミはYouTuberをしていて、チャンネル登録者数は約8万人ほど。
きゃさりんは、要エリカの漫画家デビュー当時からのファンで、当時はまだ存在していた要エリカのファンクラブ第一号のファンだったという。
いつだったか、未だに持っているというファンクラブの会員証を見せてくれた。
そこには確かに、「会員番号 001」と書いてあった。
この場にいる全員が全員、いわゆる「界隈の有名人」というやつで、久実子はその仲間入りを果たしたのだ。
これほど喜ばしいことはない。
今までは遠巻きに見ていたような人たちと知り合えて、今はこうしてともに食事までしている。
なんたる光栄だろう!
久実子は、ほーっとマキナを見つめた。
「ねえ、クーミン。ホントに大丈夫?オレ、鎮痛剤持ってるけど、飲む?」
だらだらとした動作でカレーライスを食べていたハイリが、話しかけてきた。
彼女の口の端には、カレールーで茶色く変色したご飯粒がついている。
どうやら、撮影とSNSへの投稿は終わったらしい。
すっかり冷めてしまったカレーライスは、あまり美味しくなさそうだ。
食べているハイリの表情からも、それが見て取れた。
「あ、大丈夫です!はい…」
久実子は飛んできた虫を払い除けるように、顔の前でブンブン手を振った。
実を言うと久実子は、このハイリが苦手だった。
いや、正確には、ハイリ以外も苦手なのだけど。
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