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デマ拡散
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このゲームがまた再配信されるというデマが、TwitterをはじめとするさまざまなSNSで拡散したのだった。
このデマが流れたとき、久実子は暗がりに独り立っていた自分の人生に、光がさした気がした。
こんな気分は久しぶりだと、本気で実感できた。
また、あの楽しく輝いていた日々に戻れる。
そう思っていたのだ。
久実子がダークサイド・ストーリー、通称ダクストに出会ったのは5年前。
きっかけは、Twitterだった。
自分がフォローしている人が、このゲームの感想をツイートしていたからだ。
ほかにも、いろんな人がこのゲームについて言及していたし、話題になっているみたいだからと、スマートフォンでアプリストアを開いてインストールしてみた。
このとき、アプリゲームはほかにもやっていたのだけど、最近はストーリーやイベントのマンネリ化が進んでいたし、大した進展もグッズ展開もなかったから、退屈を感じていたところだ。
ゲームの存在を知った後、さっそくアカウントを作って、登録。
ストーリーを読み進めたり、作中のミニゲームなんかも地道にこなしていくうち、すっかりこのゲームの虜になってしまった。
それこそ、このゲームのログイン画面を目にしたときから、すでに心惹かれていた。
どこか暗くて物騒で、それでいてどこかロマンチックな絵が画面いっぱいに広がっていた。
気がつけば、毎日のようにこのゲームをプレイして、ストーリーが更新されるのが楽しみになるほどに。
Twitterやpixiv、YouTubeなんかで日々語られる考察を、すべて読み込んでいくほどに。
配信されていた間は、イラストもたくさん描いたし、それにたくさんの反応をもらえたことも嬉しかった。
あのときは、本当に幸せだったのだ。
すべてが輝いて見えるほどに。
しかし、突然の配信停止。
そのお知らせを読んだとき、久実子はショックで寝込んでしまった。
その翌日、なんとか出勤はできたものの、なかなか仕事が手につかず、普段ではありえないミスを連発して、上司に怒鳴られて散々だった。
──ダクストだけが心の支えだったのに、大好きだったのに!
──それなのに、ダクストをあんな酷い形で終わらせるなんて!!
久実子は怒りと悲しみから、頭がおかしくなりそうだった。
いや、実際におかしくなっていた。
ダクストを運営しているゲーム会社や原作者の要エリカに怒りの電話をかけたり、抗議や再配信の要求の手紙を毎日のように書いて送った。
それは、半年間続いた。
半年も過ぎれば、メンタルは落ち着いた。
しかし、そのときの怒りや悲しみ、虚しさ、悔しさは、ずっと心に残り続けた。
その後は違うジャンルに鞍替えしたが、ふとした拍子にこの出来事を思い出して泣きたくなってしまうこともあった。
それぐらいにショックだった。
だから尚更、再配信されると聞いたときは、地獄から天国に舞い戻っていくような心地だった。
もっとも、あっという間に地獄に叩き落とされたのだけど。
このデマが流れたとき、久実子は暗がりに独り立っていた自分の人生に、光がさした気がした。
こんな気分は久しぶりだと、本気で実感できた。
また、あの楽しく輝いていた日々に戻れる。
そう思っていたのだ。
久実子がダークサイド・ストーリー、通称ダクストに出会ったのは5年前。
きっかけは、Twitterだった。
自分がフォローしている人が、このゲームの感想をツイートしていたからだ。
ほかにも、いろんな人がこのゲームについて言及していたし、話題になっているみたいだからと、スマートフォンでアプリストアを開いてインストールしてみた。
このとき、アプリゲームはほかにもやっていたのだけど、最近はストーリーやイベントのマンネリ化が進んでいたし、大した進展もグッズ展開もなかったから、退屈を感じていたところだ。
ゲームの存在を知った後、さっそくアカウントを作って、登録。
ストーリーを読み進めたり、作中のミニゲームなんかも地道にこなしていくうち、すっかりこのゲームの虜になってしまった。
それこそ、このゲームのログイン画面を目にしたときから、すでに心惹かれていた。
どこか暗くて物騒で、それでいてどこかロマンチックな絵が画面いっぱいに広がっていた。
気がつけば、毎日のようにこのゲームをプレイして、ストーリーが更新されるのが楽しみになるほどに。
Twitterやpixiv、YouTubeなんかで日々語られる考察を、すべて読み込んでいくほどに。
配信されていた間は、イラストもたくさん描いたし、それにたくさんの反応をもらえたことも嬉しかった。
あのときは、本当に幸せだったのだ。
すべてが輝いて見えるほどに。
しかし、突然の配信停止。
そのお知らせを読んだとき、久実子はショックで寝込んでしまった。
その翌日、なんとか出勤はできたものの、なかなか仕事が手につかず、普段ではありえないミスを連発して、上司に怒鳴られて散々だった。
──ダクストだけが心の支えだったのに、大好きだったのに!
──それなのに、ダクストをあんな酷い形で終わらせるなんて!!
久実子は怒りと悲しみから、頭がおかしくなりそうだった。
いや、実際におかしくなっていた。
ダクストを運営しているゲーム会社や原作者の要エリカに怒りの電話をかけたり、抗議や再配信の要求の手紙を毎日のように書いて送った。
それは、半年間続いた。
半年も過ぎれば、メンタルは落ち着いた。
しかし、そのときの怒りや悲しみ、虚しさ、悔しさは、ずっと心に残り続けた。
その後は違うジャンルに鞍替えしたが、ふとした拍子にこの出来事を思い出して泣きたくなってしまうこともあった。
それぐらいにショックだった。
だから尚更、再配信されると聞いたときは、地獄から天国に舞い戻っていくような心地だった。
もっとも、あっという間に地獄に叩き落とされたのだけど。
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