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第5話
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パーピーの森へ降りようとすると下からギャアギャアとやかましい音が近づいて来た。
「パーピーだ。気をつけろ」
シアンの声が飛ぶ。
「白龍。剣を」
綺羅が声をかけると六角柱が黄金に光って綺羅の手元に黄金の剣が現れる。
だが、襲って来たパーピー達を見て綺羅は動けなくなってしまった。
「う・・・・・・」
鳥のような体に女性の顔をしている。ただ、その顔はガリガリで青白い。
『綺羅危ない』
『剣を振って』
赤龍が体当たりしてパーピーを退ける。
「・・・・・・。ありがとう」
お礼を言うが声が震えてしまう。
おぞましい姿だ。
灰色の羽に鋭い錐のような爪。人面という部分を除いても美しいとは言えない。
さらに、やかましい鳴き声。
だが、ギャアギャアと泣き喚く声は、綺羅の耳に飢餓の苦しみを訴えているように思えた。
綺羅は意を決意して黄金の剣を振るう。
「在るべき場所に戻って」
願いを込めて剣を振るった。
黄金の光が放たれ、綺羅の周囲にいたパーピー達が消えた。
「やった」
ホッと一息を吐く。しかし、綺羅の下では他のパーピー達がまだギャアギャア騒いでいる。
「青龍、赤龍、行くよ」
『行こう行こう』
『助けてあげよう』
綺羅は青龍に乗り、赤龍と共に森の中へ突っ込んで行った。
その途端、パーピー達が襲って来た。
「痛い。痛い。ちょっと待って」
パーピーに突っつかれる。
綺羅は剣を手放さないようにしっかり握りしめる。
「みんな元に戻って」
パーピー達に突っつかれ、引っかかれながら綺羅は無我夢中で剣を振るった。
森の中に居るパーピー達、みんなが元に戻れるように願いながら。
黄金の光が森を包み込む。
あまりの眩しさに綺羅は目を閉じた。
ふわっと自分の身体が浮くのを感じて目を開けると、パーピーの森が眼下に見えた。
「あれ?」
綺羅は時間が戻ったのかと思った。
しかし、先程までのギャアギャア喚くような鳴き声は聞こえない。
森の緑も先程までは暗い深緑色だったのが、青々しているように見える。
「パーピー達が居なくなって森が浄化されたのだろう」
しれっと姿を現したシアンが解説する。
綺羅は溜息を吐く。
毎度毎度のことなのでもう慣れたが、呆れずにいられない。
綺羅を護るという契約をしたから一緒にいるのではないのか。
それなのに、シアンは闘う時になると居なくなってしまうのだ。
「それより、パーピーにされた人達は元に戻れたの?」
「あぁ。遭難者の中に家族が居る者は隠れ家に帰しておいたぞ」
「そう。じゃあ、ケンタウルスの山に行きましょう」
「おい」
「何?お礼は言わないわよ」
「そうじゃない。パーピーに引っかかれただろう。手当をしないと毒が身体に回るぞ」
「あぁ、じゃあお願い」
綺羅は顔をシアンに寄せて目を閉じた。
ペチッ。
「痛い。何するのよ」
おでこを叩かれたのである。
「これで、毒は抜けたぞ」
シアンは口の端だけで笑う。
「シアンが笑った・・・・・・?」
綺羅は、なんだか恐ろしいものを見たような気がした。
青龍に乗ったままの綺羅とシアンはケンタウルスの山を目指した。
ケンタウルスの山は、昨日の雪に覆われていた。
「ケンタウルス達はどこに居るのかしら」
遭難者達は人間の匂いがするとケンタウルス達はどこかに隠れてしまうため、どこに棲んでいるのかわからないという。
「シアン。私の匂いを消せる?」
「誰に聞いている」
シアンは鼻で笑う。
「じゃあ、お願い」
綺羅は自分の匂いが原因でケンタウルス達が隠れているのだと思ったのである。
だが、シアンは何もしない。
「シアン。早く」
「もうやった」
ジロリとシアンが睨む。
「・・・・・・。あ、そう」
言ってくれないとわからないのに、という思いを綺羅は飲み込んだ。
だが、龍達には伝わったらしい。
『言ってくれないとわからないね』
『言わないとわからないよね』
「ありがとう。青龍と赤龍」
綺羅は2匹の龍を撫でる。
龍達はキャッキャッと喜ぶ。
ところが、待てど暮らせどケンタウルス達は現れない。気配すらしない。
「どこに居るのかしら」
「奴らは夜行性だ。もう少し待つしかない」
夕方になって気温が下がる。綺羅はぶるっと身体を震わせた。
「人間は不便だな」
シアンは独りごちる。
綺羅は何も言わずにシアンを睨む。だが、その直後に綺羅の身体が温まって来た。
「シアン何かしたの」
「お姫さんが凍死したら困るからな」
「素直に優しくないのね」
「・・・・・・。お互い様だ」
シアンがボソっと呟いたのが聞こえたが、綺羅は聞こえない振りをした。
「ケンタウルス達を呼ぶ方法はないかしら」
いつまでもここで待っているわけにはいかない。
「ケンタウルスは酒と女が好きだったな」
シアンが呟くように答え、綺羅はビクッと肩を振るわせた。
「まさか、私を・・・・・・」
前回の囮作戦を思い出して綺羅は不安に駆られる。
そんな綺羅をシアンは小馬鹿にしたように、鼻で笑う。
「ケンタウルスは女が好きなんだ。乳臭いガキに興味はない」
「失礼ね。騎士服で見えないだけで私は大人の女よ」
シアンは常に無表情だ。だが、こういう時だけ表情豊かになるのが綺羅の怒りを増幅させる。
「前にも言ったが、すぐにムキになるのが子供の証拠だ。さぁ、酒でも用意しておびき寄せるぞ」
「・・・・・・」
悔しいがシアンの言うとおりである。
それに、囮に使われると思った自分が恥ずかしい。
綺羅は黙って唇を噛むしかない。
シアンは酒樽をいくつも出現させ匂いが広がるようにフタを外す。
たちまち酒の匂いが周囲に広がり、酒に弱い綺羅は匂いだけで酔っぱらってしまいそうだ。
「お姫さんには刺激が強すぎるな」
シアンが言うと綺羅の鼻は、酒の匂いを感じなくなった。
「何をしたの?」
黙って術をかけられたことに腹を立てる綺羅にシアンは、無表情で綺羅を見つめる。
「・・・・・・。何?」
綺羅は沈黙が怖くて口を開いた。
「酔っ払ったままケンタウルスを相手にできるのか。奴らはパーピーのようにはいかないぞ」
シアンの指摘に綺羅は反論できない。
「・・・・・・。ごめんなさい」
ケンタウルスを見たこともなければ性格すら知らない綺羅は、素直に謝るしかなかった。
パーピー族のことも本でしか見たことがなかった。
彼女達を目の前にして、そのおぞましい姿に正直怯《ひる》んだのである。
「謝っている暇があればすぐに剣を振れるようにしておけ」
シアンは酒樽に視線を向けたまま指示をする。綺羅は素直に従った。
白龍を呼び出すと黄金の剣に変化させ、ケンタウルスを待つ。
しばらくすると蹄の音が聞こえて来た。
綺羅は知らなかった。ケンタウルスには、さまざまな種類がいることを。
「嘘・・・・・・」
上半身が人で下半身が馬というのも、間近で見るとかなりグロテスクなものだ。しかし、酒樽に群がるケンタウルスの中には下半身が牛やロバ、獅子に豚までいる。
各々が斧や槍、弓などの武器を背負っていた。
「酒だ。酒がある」
「おぉ。また、誰かの親が来たのか」
「人間の匂いはしなかったぞ」
「だったら、この酒はなんだ。罠か」
「まぁ、いい。呑め。呑め」
ケンタウルス達は酒を飲み始めた。
綺羅はケンタウルス達のおぞましい姿に吐き気がしてくるのを感じた。
だが、彼らは妖魔に姿を変えられた被害者だ。
綺羅が意を決し、剣を振ろうとした途端に綺羅は急に寒さと獣の匂いを感じる。
「何?」
困惑する綺羅。
酒を飲むケンタウルス達も急にそわそわし始めた。
「人間だ。人間の匂いがする」
「女だ。女の匂いだ」
それまで酒を飲んでいたケンタウルス達が綺羅を探し始めた。
蹄の音がし始め、ケンタウルス達が武器を手に山を走り始める。
焦った綺羅は思わず立ち上がり、ケンタウルス達の前に姿を現してしまった。
「女だ。それも金の女がいる」
綺羅と一番初めに目があったケンタウルスが叫ぶ。
すると他のケンタウルス達も集まった。
「本当だ。でも、妖魔じゃないのか」
「人間の匂いがするぞ。妖魔じゃない」
ケンタウルス達が武器を手に綺羅に近寄って来る。
綺羅は目を逸らしたくなるのを堪えた。
「みんなが待ってるわ。貴方達を帰す」
綺羅の言葉にケンタウルス達の表情が変わった。
「ふざけるな。誰が帰るか」
「そうだ。こんな姿を見せるわけにいかない」
「お前、何者だ」
ケンタウルス達が怒りの感情を露わにした。
「大丈夫。元の姿に戻すから」
綺羅が今度こそ黄金の剣を振ろうとすると、ヒュンっと矢が飛んで来た。
『危ない』
『大丈夫?綺羅』
青龍と赤龍が耳元の六角柱から出て来て矢を尻尾で払い、ケンタウルス達から綺羅を護るように立ちはだかる。
「うわぁ。龍だ」
「龍だ」
「龍使いか」
ケンタウルス達はそろそろと後退る。
「俺は人間に戻っても帰る気はない」
弓を構えたケンタウルスが言った。
「どうして?」
綺羅は不思議そうに、弓を放ったケンタウルスを見る。
「こんな姿を見られたのだ。だから戻れない」
他のケンタウルス達も「そうだ」と頷く。
「どうして?妖魔のせいで姿を変えられたのでしょう。貴方達は悪くないのに」
「龍使い様に関係ない。帰れ。二度と来るな」
怒気を孕む口調で、弓を放ったケンタウルスは綺羅に背けて走り出すと、他のケンタウルスも続く。
「あ、待って」
綺羅は剣を振るうべきか迷う。
そこへバリトンの声が響いた。
「何をしている。剣を振れ」
綺羅はシアンに背を押され、黄金の剣を振るった。
「みんなが待ってるわ。在るべき場所へ戻って」
ケンタウルスの山が、黄金の光に包まれた。
「これで良かったのかしら」
ケンタウルス達の気配が消えたが、綺羅の心には不安が募る。
「・・・・・・。余計なことしてくれるよね。ホント」
綺羅はシアンの方を振り返ると、見知らぬ妖魔が立っていた。
「パーピーだ。気をつけろ」
シアンの声が飛ぶ。
「白龍。剣を」
綺羅が声をかけると六角柱が黄金に光って綺羅の手元に黄金の剣が現れる。
だが、襲って来たパーピー達を見て綺羅は動けなくなってしまった。
「う・・・・・・」
鳥のような体に女性の顔をしている。ただ、その顔はガリガリで青白い。
『綺羅危ない』
『剣を振って』
赤龍が体当たりしてパーピーを退ける。
「・・・・・・。ありがとう」
お礼を言うが声が震えてしまう。
おぞましい姿だ。
灰色の羽に鋭い錐のような爪。人面という部分を除いても美しいとは言えない。
さらに、やかましい鳴き声。
だが、ギャアギャアと泣き喚く声は、綺羅の耳に飢餓の苦しみを訴えているように思えた。
綺羅は意を決意して黄金の剣を振るう。
「在るべき場所に戻って」
願いを込めて剣を振るった。
黄金の光が放たれ、綺羅の周囲にいたパーピー達が消えた。
「やった」
ホッと一息を吐く。しかし、綺羅の下では他のパーピー達がまだギャアギャア騒いでいる。
「青龍、赤龍、行くよ」
『行こう行こう』
『助けてあげよう』
綺羅は青龍に乗り、赤龍と共に森の中へ突っ込んで行った。
その途端、パーピー達が襲って来た。
「痛い。痛い。ちょっと待って」
パーピーに突っつかれる。
綺羅は剣を手放さないようにしっかり握りしめる。
「みんな元に戻って」
パーピー達に突っつかれ、引っかかれながら綺羅は無我夢中で剣を振るった。
森の中に居るパーピー達、みんなが元に戻れるように願いながら。
黄金の光が森を包み込む。
あまりの眩しさに綺羅は目を閉じた。
ふわっと自分の身体が浮くのを感じて目を開けると、パーピーの森が眼下に見えた。
「あれ?」
綺羅は時間が戻ったのかと思った。
しかし、先程までのギャアギャア喚くような鳴き声は聞こえない。
森の緑も先程までは暗い深緑色だったのが、青々しているように見える。
「パーピー達が居なくなって森が浄化されたのだろう」
しれっと姿を現したシアンが解説する。
綺羅は溜息を吐く。
毎度毎度のことなのでもう慣れたが、呆れずにいられない。
綺羅を護るという契約をしたから一緒にいるのではないのか。
それなのに、シアンは闘う時になると居なくなってしまうのだ。
「それより、パーピーにされた人達は元に戻れたの?」
「あぁ。遭難者の中に家族が居る者は隠れ家に帰しておいたぞ」
「そう。じゃあ、ケンタウルスの山に行きましょう」
「おい」
「何?お礼は言わないわよ」
「そうじゃない。パーピーに引っかかれただろう。手当をしないと毒が身体に回るぞ」
「あぁ、じゃあお願い」
綺羅は顔をシアンに寄せて目を閉じた。
ペチッ。
「痛い。何するのよ」
おでこを叩かれたのである。
「これで、毒は抜けたぞ」
シアンは口の端だけで笑う。
「シアンが笑った・・・・・・?」
綺羅は、なんだか恐ろしいものを見たような気がした。
青龍に乗ったままの綺羅とシアンはケンタウルスの山を目指した。
ケンタウルスの山は、昨日の雪に覆われていた。
「ケンタウルス達はどこに居るのかしら」
遭難者達は人間の匂いがするとケンタウルス達はどこかに隠れてしまうため、どこに棲んでいるのかわからないという。
「シアン。私の匂いを消せる?」
「誰に聞いている」
シアンは鼻で笑う。
「じゃあ、お願い」
綺羅は自分の匂いが原因でケンタウルス達が隠れているのだと思ったのである。
だが、シアンは何もしない。
「シアン。早く」
「もうやった」
ジロリとシアンが睨む。
「・・・・・・。あ、そう」
言ってくれないとわからないのに、という思いを綺羅は飲み込んだ。
だが、龍達には伝わったらしい。
『言ってくれないとわからないね』
『言わないとわからないよね』
「ありがとう。青龍と赤龍」
綺羅は2匹の龍を撫でる。
龍達はキャッキャッと喜ぶ。
ところが、待てど暮らせどケンタウルス達は現れない。気配すらしない。
「どこに居るのかしら」
「奴らは夜行性だ。もう少し待つしかない」
夕方になって気温が下がる。綺羅はぶるっと身体を震わせた。
「人間は不便だな」
シアンは独りごちる。
綺羅は何も言わずにシアンを睨む。だが、その直後に綺羅の身体が温まって来た。
「シアン何かしたの」
「お姫さんが凍死したら困るからな」
「素直に優しくないのね」
「・・・・・・。お互い様だ」
シアンがボソっと呟いたのが聞こえたが、綺羅は聞こえない振りをした。
「ケンタウルス達を呼ぶ方法はないかしら」
いつまでもここで待っているわけにはいかない。
「ケンタウルスは酒と女が好きだったな」
シアンが呟くように答え、綺羅はビクッと肩を振るわせた。
「まさか、私を・・・・・・」
前回の囮作戦を思い出して綺羅は不安に駆られる。
そんな綺羅をシアンは小馬鹿にしたように、鼻で笑う。
「ケンタウルスは女が好きなんだ。乳臭いガキに興味はない」
「失礼ね。騎士服で見えないだけで私は大人の女よ」
シアンは常に無表情だ。だが、こういう時だけ表情豊かになるのが綺羅の怒りを増幅させる。
「前にも言ったが、すぐにムキになるのが子供の証拠だ。さぁ、酒でも用意しておびき寄せるぞ」
「・・・・・・」
悔しいがシアンの言うとおりである。
それに、囮に使われると思った自分が恥ずかしい。
綺羅は黙って唇を噛むしかない。
シアンは酒樽をいくつも出現させ匂いが広がるようにフタを外す。
たちまち酒の匂いが周囲に広がり、酒に弱い綺羅は匂いだけで酔っぱらってしまいそうだ。
「お姫さんには刺激が強すぎるな」
シアンが言うと綺羅の鼻は、酒の匂いを感じなくなった。
「何をしたの?」
黙って術をかけられたことに腹を立てる綺羅にシアンは、無表情で綺羅を見つめる。
「・・・・・・。何?」
綺羅は沈黙が怖くて口を開いた。
「酔っ払ったままケンタウルスを相手にできるのか。奴らはパーピーのようにはいかないぞ」
シアンの指摘に綺羅は反論できない。
「・・・・・・。ごめんなさい」
ケンタウルスを見たこともなければ性格すら知らない綺羅は、素直に謝るしかなかった。
パーピー族のことも本でしか見たことがなかった。
彼女達を目の前にして、そのおぞましい姿に正直怯《ひる》んだのである。
「謝っている暇があればすぐに剣を振れるようにしておけ」
シアンは酒樽に視線を向けたまま指示をする。綺羅は素直に従った。
白龍を呼び出すと黄金の剣に変化させ、ケンタウルスを待つ。
しばらくすると蹄の音が聞こえて来た。
綺羅は知らなかった。ケンタウルスには、さまざまな種類がいることを。
「嘘・・・・・・」
上半身が人で下半身が馬というのも、間近で見るとかなりグロテスクなものだ。しかし、酒樽に群がるケンタウルスの中には下半身が牛やロバ、獅子に豚までいる。
各々が斧や槍、弓などの武器を背負っていた。
「酒だ。酒がある」
「おぉ。また、誰かの親が来たのか」
「人間の匂いはしなかったぞ」
「だったら、この酒はなんだ。罠か」
「まぁ、いい。呑め。呑め」
ケンタウルス達は酒を飲み始めた。
綺羅はケンタウルス達のおぞましい姿に吐き気がしてくるのを感じた。
だが、彼らは妖魔に姿を変えられた被害者だ。
綺羅が意を決し、剣を振ろうとした途端に綺羅は急に寒さと獣の匂いを感じる。
「何?」
困惑する綺羅。
酒を飲むケンタウルス達も急にそわそわし始めた。
「人間だ。人間の匂いがする」
「女だ。女の匂いだ」
それまで酒を飲んでいたケンタウルス達が綺羅を探し始めた。
蹄の音がし始め、ケンタウルス達が武器を手に山を走り始める。
焦った綺羅は思わず立ち上がり、ケンタウルス達の前に姿を現してしまった。
「女だ。それも金の女がいる」
綺羅と一番初めに目があったケンタウルスが叫ぶ。
すると他のケンタウルス達も集まった。
「本当だ。でも、妖魔じゃないのか」
「人間の匂いがするぞ。妖魔じゃない」
ケンタウルス達が武器を手に綺羅に近寄って来る。
綺羅は目を逸らしたくなるのを堪えた。
「みんなが待ってるわ。貴方達を帰す」
綺羅の言葉にケンタウルス達の表情が変わった。
「ふざけるな。誰が帰るか」
「そうだ。こんな姿を見せるわけにいかない」
「お前、何者だ」
ケンタウルス達が怒りの感情を露わにした。
「大丈夫。元の姿に戻すから」
綺羅が今度こそ黄金の剣を振ろうとすると、ヒュンっと矢が飛んで来た。
『危ない』
『大丈夫?綺羅』
青龍と赤龍が耳元の六角柱から出て来て矢を尻尾で払い、ケンタウルス達から綺羅を護るように立ちはだかる。
「うわぁ。龍だ」
「龍だ」
「龍使いか」
ケンタウルス達はそろそろと後退る。
「俺は人間に戻っても帰る気はない」
弓を構えたケンタウルスが言った。
「どうして?」
綺羅は不思議そうに、弓を放ったケンタウルスを見る。
「こんな姿を見られたのだ。だから戻れない」
他のケンタウルス達も「そうだ」と頷く。
「どうして?妖魔のせいで姿を変えられたのでしょう。貴方達は悪くないのに」
「龍使い様に関係ない。帰れ。二度と来るな」
怒気を孕む口調で、弓を放ったケンタウルスは綺羅に背けて走り出すと、他のケンタウルスも続く。
「あ、待って」
綺羅は剣を振るうべきか迷う。
そこへバリトンの声が響いた。
「何をしている。剣を振れ」
綺羅はシアンに背を押され、黄金の剣を振るった。
「みんなが待ってるわ。在るべき場所へ戻って」
ケンタウルスの山が、黄金の光に包まれた。
「これで良かったのかしら」
ケンタウルス達の気配が消えたが、綺羅の心には不安が募る。
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