君が好き。

ぶらくり。

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君が好き。

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『神宮寺さーん…それはなかなか無理っすよ』
「文句言うな笑 若手社員のエース!佐藤 蓮!頑張れよ!」
『マジっすかー…』
「とりあえず昼休憩の時間だし、午後からだな」



俺に次々と容赦なく課題を与えてくるのは、元々教育係をしてくれていた神宮寺さん。

めちゃくちゃモテるらしいけど、かっこいいし納得。
一緒に社食に向かってる間も女性の皆さんにめっちや見られてるし笑



ほんとお腹すきましたよぉ…とブツブツ言いながら神宮寺さんの後ろについていたら、
「あ、優。今日はお弁当じゃねーの?一緒に食う?」

「神くん!そうなの、今日は寝坊しちゃって。じゃあ一緒させてもらおっかな」
「寝坊って。夜遅くにまで何してんだよ笑」
「何もしてません!あ、佐藤くん」
『あ、ってなんすか!もー…』


安達 優さん。神宮寺さんの同期で27歳。
……俺の好きな人。


初めて会った時からもうやられた。
絶対に彼女にしたいと思った。
仕事してる顔も。笑った顔も。高い位置で1つに束ねた揺れる髪の毛も。
すべてに惹かれた。

神宮寺さんに彼氏がいないかリサーチして、
何?お前 優の事好きなの?ってからかわれたけど、ま、頑張れよって言ってもらえて。
でもこれがなかなか難しい。

『優さんとお昼一緒なのラッキーっす!よっしゃ!』
「もーまたそういうこと言う!おばさんをからかわないで下さい!」
『いや、全然からかってないです。僕、優さんのこと好きですから』
えぇ~俺 邪魔?って笑いながら神宮寺さん。
……まぁ、、邪魔っす。


3人で座って食べる。
『優さん。いい加減僕にもお弁当作ってくれません?』
「嫌。もっと若くて可愛い子に作ってもらいなって。みんな喜んで作ってくれるでしょ?」
『そうかもですけど、優さんに作ってもらわないと意味ないんすよ!』
「そうかもですけどって…もうついていけませーん!」
『もーーー。神宮寺さんもほら、僕のいいとこ優さんに…』

その時"佐藤くん!"と大きな声で呼ばれて声のする方を振り向けば、課長。
『ちょっと行ってきます!優さん!マジで!』
と念押しして席を立つ。



「…優、佐藤のこと気になってんだろ?」
「うーーーーー…言えない。言いたくない。口に出したら終わる…」 
「なんだよそれ笑 佐藤けっこう本気だと思うけど?」
「だって22だよ?私27。嫌だよ。弄ばれて捨てられるのは。たぶん…立ち直れないもん…」
「優かわいっ笑」
「…うるさい」

「でも素直になる時はなんないと取られるよ?佐藤。優はそれでいいわけ?」







あぁーどうしたら振り向いてくれるんだろ…
どうやったらこの想い伝わるのか…
なんて考えてたら神宮寺さんに言われた仕事が全然終わらなくて残業確定。

「お?どした佐藤。残業?珍しいな」
『神宮寺さんのせいっすよー笑 ……なんて他の事考えてたりしてたんで自分のせいっす。明日土曜だし気にせずちょっと残ってやって帰ります』
「そか。ある程度で切り上げろよ?」

お疲れ!と言って颯爽と帰っていく。
あぁー…彼女さんとデートかな…デキる男だな…
なんてぼんやり思って。
本当うらやまし―…
なんか俺ダメだな。


とりあえず仕事するか。と気合いを入れ直し取りかかる。
気合いを入れたところに女子二人が近づいてきて、
佐藤さーん♡今から飲みに行きませんか♡って。

見たら分かるっしょ。仕事してんだろ。と思いつつ適当に断る。
ほんと優さん以外興味ない。
何で伝わらないんだろー…
あぁー…優さんに会いたくなる…



よしっ。終わり!と腕時計を見ると21:30。
思ってたより早く終わったなと両手を横に広げてうーんと伸びをする。

「佐藤くん…?」
え?俺の幻聴?声がする方を探せば入り口に立つ大好きな人。

『お疲れ様です!優さんも残業ですか?』
「そ。ちょっと色々考えてたら仕事終わらなかった笑」
俺と理由が一緒じゃん。嬉し。
そんな小さな事で喜ぶ俺ってけっこう重症かも。

「さっき女の子に誘われてたでしょ。行かなかったの?」
『行きませんよ。仕事しないとダメだったし』
「ふーん…」
『それに優さんとしか行く気になりませんから』
「…もうまた…」
『僕、優さんが好きです。伝わってませんか?けっこう頑張ってると思うんすけどねー…まだまだっすね?』

『あ、今からご飯行きません?優さんも何も食べてないですよね?ね?ダメっすか?ね?』
「…ふふ笑 必死」
『なんですかぁ笑 だってまだ1回もご飯行ってくれた事ないじゃないですか!…やっぱダメかぁ…』

「いいよ。どこ行く?佐藤くん。」

『え。え。え?マジっすか!やった!よっしゃ!!!』





会社近くの焼き鳥屋でとりあえずビール頼んで
『「おつかれさまー!」』と乾杯。

『初デートなのに焼き鳥って…悔しいっす』
「いや、デートじゃないから笑」
『優さん。僕の何が足りないですか?教えて下さい』

「私オシャレなとこより焼き鳥屋さんの方が好きよ?」
『あぁー…そういうところもさらに好きです。って僕の質問スルーしないでもらえます?笑』

「…答えなきゃダメ?」
『はい。お願いします』
そう言うと残りのビールを一気に流し込む優さん。

目線はテーブルに伏せたまま、
「…佐藤くんは全然足りてないとこなんてないよ。うん。私自身の問題。…覚悟の問題…です…」
『え。ちょっ、ちょっと待ってください。それってどういう意味ですか。いや、待って。覚悟ってなんすか』
「とにかく!そういうこと!です…」
『いやいやいや、優さん?僕ほんとに好きですから。全然軽い気持ちとかではないです。優さんを他の人に取られるとかマジで無理ですから』
「…佐藤くん。うん。もう恥ずかしいから…ありがとう。ちゃんと伝わってるよ」

本当はもっと問い詰めたかったけど、
俺と付き合ってってもっと押したかったけど、
もう勢いで抱きしめたかったけど、
優さんにきちんと伝わってる事に少し安心して、今日はこれ以上はやめた。


そのあと30分くらい飲んで食べてしゃべってたら、
あれ?蓮?と聞き覚えのある懐かしい声。
『…おぉ!みなみ?すごい偶然だな!』
「ほんとにー。元気してた?相変わらずかっこいいのが悔しいんですけど」
『なんだよそれ笑 みなみ変わらないな笑』


優side
二人の空気感にあぁ…元カノなんだなぁ。と容易く気付いてしまって。
佐藤くんが楽しそうにしゃべる姿を眺めてたら、なんか悲しくなってきて悔しくって、神くんの前では言わずに耐えたのに結局好きなんだなぁと簡単に再認識させられる始末。

見てられなくなって、
「…佐藤くん。ちょっとお手洗い行ってくるね。えっと…みなみさん?良かったらここどうぞ?」
なんて思ってもないことを口にして席を立つ。


あーー…どうしよ。
帰りたい。けど二人にさせたくない。
なんなの私。
あー…でもやっぱり…よしっ。
気合いを入れて席に戻ることにした。




『あ。優さん遅いっすよ。さっきはすみません。みなみはもう帰りましたので!』
「…みなみ…さん…」
『え?』
「元カノさん…だよね?」
『あっ。分かりますか?大学の時ですけど。2年くらい一緒にいたと思います』
「そっか」

え。優さんめちゃくちゃテンション下がってる?
怒ってんのか?
優さんの知らない人なのに、自分勝手にみなみとしゃべって優さんおいてけぼりにしてしまって、そりゃ失礼だよな。
あぁやらかしたな、俺。

『優さん。すみません。良くなかったですよね。せっく優さんとご飯食べにこれたのにみなみと話してしまって…』
「ううん。違う違う!さっ、佐藤くん帰ろ!」
『えぇ!帰るんすか!? もうちょい飲みましょうよ!』
「…無理。今日は解散。ごめんね」
そう言ってたバッグを持って立ち上がる優さんを、お会計を慌てて済ませて追いかけた。


送ります!と声をかけても 大丈夫。と言ってすたすたこちらを振り返ることなく歩いて行く。
追い付いて手首を引っ張り引きとめる。
『優さん。どうしたんで…』
「やだ、見ないで」
『え?泣いてるじゃないっすか。ほ、ほんとにごめんなさい。僕がちゃんとできないから…』
「違うって…佐藤くっ…んは…悪くないよ。こっちこそっ…ごめっ…」
『優さんは謝ることなんてないです!僕がちゃんとダメなとこ直すんで思ってること言って下さい』

「……………」
『優さん?』
「言っても…いいの…?」
『…はい。受け止めます。でもお手柔らかにお願いします笑』
掴んでた手首から手を離して両手をぎゅっと握る。

ふぅっと息を吐いて一気にしゃべり出す。
「みなみ…みなみって何よ。呼び捨て?もう別れたのにまだ呼び捨て?それにかっこいいって言われて嬉しそうな顔しないでよ。私だって思ってるよ。佐藤くんかっこいいっていつも思ってる!」
『えっ?え?優さん?』
「2年付き合ってたとか想像したくないっ。その話する時の佐藤くん彼氏の顔してた!やだ」

『……ちょっ、』
「何よ。思ってること言っていいって佐藤くんが言ったんだよ」
『ちょっ、え、』
「ほんとは佐藤くんのこと私だってとられたくないし、私にだけ好きの気持ち向けてほしいと思ってる。……もう…やだぁ…」
そう言ってその瞳からまたぼろぼろと涙をこぼす。

『優さん?待って。僕のこと好きってなりますよね?』
「…好きだよ」

マジか。みなみマジサンキュー。

『僕めちゃくちゃ嬉しいんすけど!』
握っていた両手をぐいっと引き寄せて優さんを抱きしめる。
頭の上にあごを乗せて、一つふぅっと息を吐く。

『…俺の彼女になってもらえますか?』
「…無理ぃ……」
思わず抱きしめてる彼女を引きはがして顔を見る。
『えっえっ。何で!? そういう流れだろ!?』
「だって佐藤くん若いから5歳も上の私になんてすぐ飽きるもん」
『いや、飽きるもん。ってかわい』
「私たぶん佐藤くんのことすごく好きになると思うから、フラれたら立ち直れないぃ…」

え。何これ。可愛すぎる。

『優さん。飽きません。俺、優さん以外全く興味ないし、もうずっと優さんだけです。信じて下さい。俺のこと他の人にとられたら嫌なんでしょ?』
「それは嫌ぁ…。信じちゃいそうになるぅ…」
『時間かけて証明するから。な?俺の彼女になって?』

「…………………」
『はい。は?』
「…はい。」
そのまま俺の腰に手をまわして抱きついてきた。




「あ。ここ外じゃん…もうっ」
そう言って俺から離れて行こうとするから、
『誰も見てないって笑 ほら、手繋いで帰ろ。俺ん家に』
「佐藤くんの家に行くの?」
『いや、この状況で離れられる気しないよね?』

『……優…もだろ?』

「うふふ。うん!」


大好きな君は俺の彼女になりました。
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