頼れる年下御曹司からの溺愛~シングルマザーの私は独占欲の強い一途な彼に息子ごと愛されてます~

夏目萌

文字の大きさ
61 / 65
14

3

しおりを挟む
 竜之介くんがお風呂から上がりソファーに並んで座った私たちは、ハーブティーを飲みながらどちらが先に口を開くか様子を窺っていた。

 何から話せばいいのか、なかなか口を開けなかった私たちだけど、先に口を開いたのは竜之介くんの方だった。

「――亜子さん、ごめん。俺、かなり子供だガキった。嫉妬して、勝手に不機嫌になって、そんな自分にも許せなくて、一緒に居ると余計に嫌な態度取りそうだったし、凜にまで嫌な態度取りそうだったから……暫く、頭を冷やしてた……本当にごめん」
「竜之介くん……ううん、いいの。私も悪かったの。逆の立場だったら私だって嫌な気持ちになったと思うし、彼の申し出を断ってタクシーで保育園まで行けば良かったんだもん。本当にごめんね」
「亜子さん……もう、いいんだ。仲直り、しよ?」
「うん……」

 喧嘩した……訳ではなかったけれど、微妙な雰囲気になってしまったのは確かで、それが無くなっただけでも嬉しいのに、『仲直りしようと』と私の身体を抱き締めてくれた竜之介くんの言動が嬉しくて、思わず泣きそうになった。

「――それはそうと、男に絡まれたっていうのは放っておけないよ」
「危機感が無くて、ごめん」
「亜子さんが悪い訳じゃ無いけど、やっぱり心配だな……。その男たちは亜子さんが働いてる所、知っちゃった訳でしょ?」
「うん……」
「……花宮と亜子さんが仲良くしてるのを見るのは正直嫉妬するし、面白くは無いけど……亜子さんに何かあってからじゃ大変だから、今日みたいに俺がどうしても行けない時は、アイツと一緒に保育園まで行ってもいいよ」
「え?」
「本当は、俺が信頼している奴に任せたいっていうのが正直なところだけど、一樹の件もあるから……俺よりも亜子さんが信頼出来ると思う人に頼むのが一番だと思うし……それに、花宮アイツは馴れ馴れしいけど、嫌な奴じゃ無さそうだし、頼りにはなるから……」
「竜之介くん……ありがとう。でもね、これからは仕事中一人で外に出ないようにするし、今日みたいに竜之介くんが来られない時はやっぱりタクシーで行くよ。だから、心配しないで?」

 守られている方が安心だけど、これ以上誰かに甘えてばかりでは駄目だし、いくら良いと言われても竜之介くんに嫌な思いをさせたくなかった私は良太くんには頼らない事を告げた。

「亜子さん……」
「竜之介くん……一緒に、寝ても良い?  今日は、一緒が良い……」

 帰宅してからすぐに竜之介くんが出て行ってしまい、帰って来なかったらどうしようと不安だった。

 一人はすごく、寂しかった。

 凜には申し訳無いけど、今だけはどうしても竜之介くんの温もりを感じていたくて、私は一緒に寝たいと口にした。

 そんな私の申し出に竜之介くんは、

「俺も、同じ気持ちだった。今日は二人で、一緒に寝よう」

 嬉しそうに笑顔を浮かべ、同じ気持ちだと伝えてくれた。

 翌朝、凜は目を覚ますや否や私には目もくれずに竜之介くんの元へ走っていく。

「おにーちゃん!」
「凜、昨日はごめんな。今日は帰ってきたら沢山遊ぼうな」
「うん!」

 凜は本当に竜之介くんの事が大好きだし、竜之介くんも凜を大切に思ってくれている。

 昨日の事があって、凜には竜之介くんが必要なんだと再確認したし、私自身も竜之介くんが居ないと淋しくて仕方が無いし、不安で堪らなかった。

 竜之介くんとの交際も続けられて、彼の縁談も無くなった今、私は竜之介くんとこれからもずっと一緒に居続けられるよう、確かな関係になりたいという思いがより一層強くなる。

 昨夜寝る前にその話をしたかったのに、色々あったせいかベッドに入ってギュッと抱きしめ合い、彼の温もりを感じた瞬間睡魔に襲われた私はいつの間にか眠ってしまっていた。

「亜子さん、どうかした?」
「え?  あ、ううん。なんて言うか、凜は本当に竜之介くんの事が好きなんだなって思って」
「うん!  おにーちゃんすき!」
「嬉しいな。俺も凜が好きだよ。勿論、亜子さんの事もね?」
「ふふ。私も同じだよ」

 こんなに互いを想い合い、好き合っているのだから、迷う事なんて何も無い。

 竜之介くんとなら、絶対に上手くいく。

 今度のお休みの日、三人でどこかへ出掛けて、そこで、竜之介くんに今の自分の想いを、素直なを気持ちを伝えようと決めた私は、自然と笑顔が溢れていく。

「ほら凜、早くご飯食べて準備しないと、保育園遅れちゃうよ?」
「うん!」
「俺が凜にご飯食べさせるから、亜子さんは自分の準備しちゃって大丈夫だよ」
「え?  そんなの悪いよ……」
「いいって。昨日凜と全然話す時間取れなかったから少しでも長く話したいしさ」
「……そっか。それじゃあ、お言葉に甘えてお願いするね」

 竜之介くんの厚意に甘えた私は凜を任せると、自分の準備と出掛けるまでに出来る限りの家事を進めていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る

ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。 義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。 そこではじめてを経験する。 まゆは三十六年間、男性経験がなかった。 実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。 深海まゆ、一夜を共にした女性だった。 それからまゆの身が危険にさらされる。 「まゆ、お前は俺が守る」 偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。 祐志はまゆを守り切れるのか。 そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。 借金の取り立てをする工藤組若頭。 「俺の女になれ」 工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。 そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。 そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。 果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。

15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒
恋愛
雨の日の交差点。 車に轢かれそうになったスーツ姿の男性を、とっさに庇った大学生のひより。 そのまま病院へ運ばれ、しばらくの入院生活に。 目を覚ました彼女のもとに毎日現れたのは、助けたあの男性――そして、大手企業の御曹司・一ノ瀬玲央だった。 「俺にできることがあるなら、なんでもする」 花や差し入れを持って通い詰める彼に、戸惑いながらも心が惹かれていくひより。 けれど、退院の日に告げられたのは、彼のひとことだった。 「君、大学生だったんだ。……困ったな」 15歳という年の差、立場の違い、過去の恋。 簡単に踏み出せない距離があるのに、気づけばお互いを想う気持ちは止められなくなっていた―― 「それでも俺は、君が欲しい」 助けたはずの御曹司から、溺れるほどに甘やかされる毎日が始まる。 これは、15歳差から始まる、不器用でまっすぐな恋の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

処理中です...